【ビル管過去問】令和5年度 問題95|建築構造力学|荷重・地震力・片持ち梁・支点の種類を解説

出典:建築物衛生管理技術者試験令和5年度(2023年)|建築物の構造概論第95問

問題

建築物の荷重と構造力学に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

(1) 教室の床の構造計算をする場合の積載荷重は、一般に事務室より大きく設定されている。

(2) 地震力は、地震により建築物が振動することで生じる慣性力である。

(3) 片持ち梁(ばり)に分布荷重が作用する場合、その先端にはせん断力は生じない。

(4) 支点には、固定端、回転端(ピン)、移動端(ローラ)の3種類がある。

(5) 風圧力は、時間とともに変化する動的な荷重である。

ビル管過去問|建築構造力学|荷重・地震力・片持ち梁・支点の種類を解説

この問題は、建築構造力学の基本である荷重の種類、地震力の考え方、梁に生じる内力、支点の分類を整理している問題です。正答は(1)です。教室の床の積載荷重は、一般に事務室より大きいとはいえず、むしろ事務室の方が大きく設定されるのが通常です。他の選択肢は、地震力を慣性力として捉える点、片持ち梁の先端でせん断力がゼロになる考え方、支点の基本分類、風圧力を動的な荷重として扱う点のいずれも基本事項として適切です。構造の問題では、日常感覚ではなく、何にどの程度の荷重を見込むか、どこに反力や内力が生じるかを図や原理で考えることが大切です。

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(1) 教室の床の構造計算をする場合の積載荷重は、一般に事務室より大きく設定されている。

不適切です。その理由は、床の構造計算で用いる積載荷重は、その部屋の用途に応じて定められますが、一般に事務室は机、書類、収納家具、複合機などの重量を継続的に見込む必要があるため、教室よりも大きめに設定されることが多いからです。教室も人が多く集まる空間ではありますが、事務室は固定的な備品荷重が加わることを前提に考えるため、構造設計上は事務室の方が不利になる場合があります。この選択肢は、「人がたくさん入る教室の方が重そうだ」という日常感覚を利用したひっかけです。試験では、用途ごとの積載荷重は感覚ではなく、用途区分に基づいて判断することが重要です。

(2) 地震力は、地震により建築物が振動することで生じる慣性力である。

適切です。その理由は、地震そのものが建物を横から直接押すというより、地盤の揺れに対して建物が遅れて動こうとすることで、質量に応じた慣性力が建物内部に生じるからです。これはニュートンの運動法則で説明でき、建物の各階にある重さが大きいほど、また加速度が大きいほど、地震時の力も大きくなります。つまり、地震力は「建物が持つ重さ」と「揺れの加速度」の組合せで発生する力と理解するとよいです。構造設計では、この慣性力が柱や梁、壁にどのように伝わるかを考えて安全性を確保します。

(3) 片持ち梁(ばり)に分布荷重が作用する場合、その先端にはせん断力は生じない。

適切です。その理由は、片持ち梁に分布荷重がかかると、固定端に向かうほどせん断力と曲げモーメントが大きくなりますが、自由端である先端にはその先に部材が存在しないため、先端断面で負担するせん断力はゼロになるからです。片持ち梁は、一端が固定され、もう一端が自由になっている梁です。このため、荷重による影響は固定端側に集まりやすく、最大曲げモーメントも固定端に生じます。構造力学では、自由端では曲げモーメントもせん断力もゼロから始まり、固定端に向かって増加すると覚えると整理しやすいです。

(4) 支点には、固定端、回転端(ピン)、移動端(ローラ)の3種類がある。

適切です。その理由は、構造力学の基本的な支点の分類として、この3つを押さえるのが標準だからです。固定端は、回転も移動も拘束する支点で、反力だけでなく曲げモーメントも伝えます。回転端、つまりピン支点は、部材の回転は許しますが移動は拘束するため、反力は生じても曲げモーメントは基本的に伝えません。移動端、つまりローラ支点は、ある方向の移動を許しつつ、鉛直方向など必要な方向の反力を受け持ちます。これらの違いを理解しておくと、どこに反力が発生し、どのように構造物が変形するかを判断しやすくなります。

(5) 風圧力は、時間とともに変化する動的な荷重である。

適切です。その理由は、風は一定ではなく、風速や風向が時々刻々と変化するため、建物に作用する風圧力も時間とともに変動するからです。特に高層建築物や細長い建物では、風による揺れや振動が居住性や安全性に大きく影響するため、単なる静的荷重ではなく、動的な荷重として扱う考え方が重要になります。もちろん、設計上は簡略化して静的な等価荷重として評価する場合もありますが、風そのものの性質としては変動荷重であり、動的な荷重に分類されます。試験では、荷重の性質と設計上の扱いを混同しないことが大切です。

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この問題で覚えるポイント

建築物に作用する荷重には、固定荷重、積載荷重、風荷重、地震荷重などがあり、それぞれ性質が異なります。固定荷重は建物自身の重さでほぼ一定ですが、積載荷重は用途によって異なり、室の使われ方に応じて設定されます。したがって、教室、事務室、廊下、倉庫では同じ床でも見込む荷重が異なります。 地震力は外から押される力としてではなく、地盤の揺れに対して建物が慣性によって抵抗することで生じる力として理解することが重要です。質量が大きいほど地震時の力も大きくなるため、上部構造の軽量化が耐震設計上有利になることがあります。 梁の力学では、せん断力と曲げモーメントの分布を基本パターンとして覚えることが大切です。片持ち梁では自由端でせん断力と曲げモーメントがゼロとなり、固定端で最大になります。単純梁では支点条件が異なるため、内力の生じ方も変わります。問題文に「片持ち」「単純梁」「両端固定」などの語が出たら、支点条件をまず確認する習慣をつけると正誤判断しやすくなります。 支点の種類は、固定端が回転も移動も拘束する、ピン支点が回転を許して移動を拘束する、ローラ支点が一方向の移動を許す、という違いを整理して覚えることが重要です。どの支点がどの反力やモーメントを負担するかは、構造力学の基本問題で繰り返し問われます。 風荷重は、風速変動により時間的に変動する動的な荷重です。地震荷重も同様に動的性質を持ちます。試験では、固定荷重のような静的に近い荷重と、風や地震のような変動性を持つ荷重を区別できることが大切です。

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ひっかけポイント

この問題のひっかけは、「日常感覚ではそう思いやすいが、設計基準では逆になる」という点にあります。教室は人が多いので重そうだと感じますが、構造計算では用途別に積載荷重が定められており、事務室の方が不利になることがあります。試験では、見た目や印象で判断すると誤りやすいです。 また、地震力や風圧力は、建物に加わる外力として一括りに覚えていると、力の発生メカニズムを問われたときに迷いやすくなります。地震力は慣性力であり、風圧力は風の流れによる圧力変動です。同じ外力でも成り立ちが異なるため、言葉の定義まで押さえる必要があります。 さらに、梁の問題では「どこに力が最大になるか」だけを曖昧に覚えていると危険です。片持ち梁の自由端では内力がゼロになるという基本を図で理解していないと、「荷重がかかっているのだから先端にもせん断力があるはずだ」と考えてしまいがちです。これは、部材内の断面力と、荷重そのものを混同することで起きる典型的な誤答です。 支点についても、名称だけを暗記していると、固定端とピン支点の違い、ローラ支点がどこまで拘束するかが曖昧になりやすいです。今後も同じような問題に対応するには、「回転を許すか」「移動を許すか」という観点で整理することが大切です。

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