出典:建築物衛生管理技術者試験令和5年度(2023年)|建築物の環境衛生第27問
問題
ヒトのがんに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) ヒトのがんの3分の2以上は、食事や喫煙等の生活習慣が原因とされる。
(2) がんは我が国の死因のトップであり、高齢化に伴い死亡者数が増え続けている。
(3) プロモータはDNAに最初に傷を付け、変異を起こさせる物質である。
(4) ウイルスが発がんの原因となることがある。
(5) ホルムアルデヒドには発がん性が認められる。
ビル管過去問|発がん要因|生活習慣・プロモーション・化学物質(ホルムアルデヒド)を解説
この問題は、ヒトのがんの原因や発がんの仕組みについての基礎知識を問う問題です。特に重要なのは、発がんの過程で働くイニシエータとプロモータの違いを正しく理解しているかどうかです。正しい選択肢は、生活習慣が発がんに深く関与すること、がんが日本の主要な死因であること、ウイルスが発がんに関与すること、ホルムアルデヒドに発がん性が認められていることを述べたものです。不適当なのは、プロモータの働きを誤って説明したものです。プロモータはDNAに直接傷をつけて変異を起こす物質ではなく、すでに変異を受けた細胞の増殖を促進する物質です。
(1) ヒトのがんの3分の2以上は、食事や喫煙等の生活習慣が原因とされる。
適切です。がんの発生には遺伝的要因も関係しますが、多くのがんは生活習慣や環境要因と深く関係しています。代表的なものとして、喫煙、過度の飲酒、食生活の偏り、肥満、運動不足などがあります。特に喫煙は肺がんだけでなく、口腔がん、咽頭がん、食道がん、膀胱がんなど多くのがんのリスクを高めることが知られています。試験では、がんの原因を「体質だけ」と考えず、生活習慣や環境要因が大きいという視点を持つことが大切です。
(2) がんは我が国の死因のトップであり、高齢化に伴い死亡者数が増え続けている。
適切です。日本では、がんは長年にわたり死因の上位を占めており、現在も主要な死因です。高齢になるほどがんにかかるリスクは高くなるため、人口の高齢化が進むと、がんによる死亡者数も増えやすくなります。ここで押さえたいのは、がんは単に患者数が多い病気というだけでなく、年齢構成の変化とも密接に関係するという点です。公衆衛生や環境衛生の分野では、こうした社会的背景も含めて理解しておくことが重要です。
(3) プロモータはDNAに最初に傷を付け、変異を起こさせる物質である。
不適切です。これはプロモータの説明として誤っています。発がんの過程では、まずDNAに傷をつけて遺伝子変異を生じさせる物質があり、これをイニシエータといいます。一方、プロモータはそのような最初の遺伝子変化を起こすのではなく、すでに変異を受けた細胞が増殖しやすい環境をつくり、発がんを促進する役割を持ちます。つまり、イニシエータが「きっかけを作るもの」であり、プロモータは「進行を後押しするもの」です。この違いは試験で非常によく問われるため、確実に区別できるようにしておきたいところです。
(4) ウイルスが発がんの原因となることがある。
適切です。がんは化学物質や放射線だけでなく、ウイルス感染が関与する場合もあります。たとえば、ヒトパピローマウイルスは子宮頸がん、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスは肝がん、EBウイルスは一部の悪性リンパ腫などとの関連が知られています。つまり、発がん要因は単一ではなく、化学的要因、物理的要因、生物学的要因のいずれも関係しうるということです。この視点を持っておくと、関連問題にも対応しやすくなります。
(5) ホルムアルデヒドには発がん性が認められる。
適切です。ホルムアルデヒドは、建材や接着剤などにも関係する化学物質であり、目や鼻、のどへの刺激作用だけでなく、発がん性も指摘されています。建築物衛生の分野では、室内空気汚染物質として重要であり、シックハウス対策とも関わる物質です。受験対策としては、ホルムアルデヒドを単なる刺激性物質として覚えるだけでなく、発がん性が認められている物質でもあると整理しておくと、知識がつながりやすくなります。
この問題で覚えるポイント
発がんは一段階で起こるものではなく、複数の過程を経て進行すると考えられています。まず重要なのは、イニシエータとプロモータの違いです。イニシエータはDNAに傷を与えて遺伝子変異を起こす因子であり、発がんの出発点に関与します。これに対してプロモータは、すでに変異を受けた細胞の増殖を促進し、発がんを進みやすくする因子です。イニシエータは「変異を起こすもの」、プロモータは「増殖を促すもの」と整理すると正誤判断しやすくなります。 発がん要因には、喫煙や食生活などの生活習慣、化学物質、放射線、ウイルスなどがあります。つまり、がんは遺伝だけで決まるのではなく, 環境や生活の影響を強く受ける病気です。特に喫煙は代表的な発がん要因として頻出です。また、ウイルスによる発がんも重要で、生物学的要因として整理しておく必要があります。 ホルムアルデヒドは、建築物衛生分野では室内空気汚染物質として重要です。刺激症状だけでなく、発がん性が認められている点まで押さえておくことが大切です。試験では、ある物質について「刺激性がある」「アレルギーに関係する」「発がん性がある」など、複数の性質のどこまで問うかが変わるため、一つの物質を多面的に覚えることが得点につながります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、プロモータとイニシエータの役割をわざと入れ替えている点にあります。受験者は「発がんに関係する物質」という大きなくくりだけで覚えていると、どちらも同じような働きをするように見えてしまいます。しかし、実際にはDNAに最初の傷を与えるのはイニシエータであり、プロモータはその後の増殖を促す役割です。ここを曖昧に覚えていると、もっともらしい文章に見えて誤答しやすくなります。 また、「がんの原因」と聞くと、喫煙や化学物質だけを思い浮かべてしまい、ウイルスのような生物学的要因を見落とすことがあります。日常感覚では結び付きにくい内容ほど試験では狙われやすいため、化学的要因、物理的要因、生物学的要因という分類で整理しておくことが有効です。 さらに、ホルムアルデヒドについても、「刺激臭がある物質」という印象だけで止まっていると、発がん性まで含めて問われたときに判断を誤りやすくなります。一部だけ正しい知識を持っていると、全文としての正誤判定を誤ることがあるので、物質の性質は一面的ではなく複数の特徴をセットで覚えることが大切です。
