出典:建築物衛生管理技術者試験令和5年度(2023年)|建築物衛生行政概論第18問
問題
環境省が公表している令和元年度以降の大気汚染の常時監視結果において、大気環境基準の達成率が最も低いものは次のうちどれか。
(1) 光化学オキシダント
(2) 浮遊粒子状物質
(3) 一酸化炭素
(4) 二酸化窒素
(5) 微小粒子状物質
ビル管過去問|大気環境基準|達成率が低い物質(光化学オキシダント)と大気汚染を解説
この問題は、環境基準そのものを細かく暗記しているかよりも、近年の大気汚染物質の達成状況の特徴を押さえているかが問われています。結論として、令和元年度以降の常時監視結果で環境基準達成率が最も低いのは光化学オキシダントです。環境省の公表資料でも、光化学オキシダントは一般局で0.2%や0.1%、自排局で0%という極めて低い達成率が続いており、他の主要項目より明らかに達成状況が悪いことが示されています。逆に、浮遊粒子状物質、一酸化炭素、二酸化窒素、微小粒子状物質は高い達成率を示す年度が多く、この差を押さえておくことが正答への近道です。
(1) 光化学オキシダント
適切です。その理由は、環境省が公表している令和元年度以降の大気汚染状況において、光化学オキシダントの環境基準達成率が一貫して極めて低いからです。令和元年度の資料では、環境基準達成率は一般局で0.2%、自排局で0%とされ、令和4年度でも一般局0.1%、自排局0%でした。光化学オキシダントは、工場や自動車から直接大量に出るというより、窒素酸化物や揮発性有機化合物などが太陽光を受けて大気中で反応して生成するため、対策しても改善が難しい面があります。このため、主要大気汚染物質の中でも達成率が最も低い項目として繰り返し問われやすいです。
(2) 浮遊粒子状物質
不適切です。その理由は、浮遊粒子状物質は光化学オキシダントほど達成率が低くないからです。環境省の常時監視では、浮遊粒子状物質は近年おおむね高い達成率を示しており、「最も低いもの」を選ぶ問題では該当しません。名称だけを見ると粒子状物質は悪そうに感じますが、実際の達成状況は光化学オキシダントよりかなり良好です。試験では、汚染物質のイメージではなく、公表データに基づく相対比較が大切です。
(3) 一酸化炭素
不適切です。その理由は、一酸化炭素は近年の常時監視において環境基準の達成状況が非常に良好だからです。一酸化炭素はかつて自動車排出ガスとの関係で重要な汚染物質でしたが、現在は排出対策の進展により、光化学オキシダントのような極端に低い達成率にはなっていません。この問題では「大気汚染物質として有名かどうか」ではなく、「令和元年度以降に最も達成率が低いかどうか」で判断する必要があります。
(4) 二酸化窒素
不適切です。その理由は、二酸化窒素も近年は高い達成率を維持しているためです。環境省資料では、二酸化窒素は環境基準の評価方法が光化学オキシダントとは異なり、1日平均値の年間98%値で評価されますが、達成状況そのものは良好です。二酸化窒素は自動車交通との関係で覚えやすい物質ですが、だからといって達成率が最も低いわけではありません。評価方法と達成状況は分けて理解することが大切です。
(5) 微小粒子状物質
不適切です。その理由は、微小粒子状物質は注意が必要な物質ではあるものの、近年の環境基準達成率は大きく改善しているからです。環境省の令和5年度資料では、PM2.5の環境基準達成率は一般局、自排局とも100%でした。このため、健康影響への関心が高い物質であっても、「達成率が最も低いもの」には当たりません。受験では、社会的関心の高さと環境基準達成率の低さを同一視しないことが重要です。
この問題で覚えるポイント
大気汚染の常時監視で最も達成率が低い主要項目として、まず光化学オキシダントを押さえることが重要です。環境基準は1時間値が0.06ppm以下であることとされており、しかも評価は1時間値の年間最高値を基準とするため、達成判定が厳しくなりやすいです。これに対して、二酸化窒素は1日平均値の年間98%値、浮遊粒子状物質や一酸化炭素は1日平均値の年間2%除外値など、物質ごとに評価方法が異なります。PM2.5は1年平均値15μg/㎥以下かつ1日平均値35μg/㎥以下です。つまり、同じ「大気環境基準」でも、基準値だけでなく評価方法まで含めて整理しておくと、正誤判断が安定します。特に試験では、光化学オキシダントは達成率が低い、PM2.5は近年改善傾向、一酸化炭素や二酸化窒素は比較的達成状況が良い、という全体像を持っていると解きやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「健康影響が強く印象に残る物質」と「実際に達成率が最も低い物質」を混同させる点にあります。たとえばPM2.5はニュースなどで頻繁に取り上げられるため、感覚的に最も悪いと思い込みやすいです。しかし、公表データでは光化学オキシダントのほうが達成率ははるかに低いです。さらに、二酸化窒素や一酸化炭素も大気汚染物質として有名なので、名前の知名度だけで選ぶと誤りやすいです。試験作成者は、受験者の「なんとなく危なそう」という日常感覚を利用して誤答に誘導します。今後も、知名度や印象ではなく、どの物質がどの評価方法で、どの程度達成されているのかという事実ベースで整理しておくことが大切です。
