出典:建築物衛生管理技術者試験令和5年度(2023年)|建築物衛生行政概論第6問
問題
建築物衛生法に基づき備え付けておかなければならない帳簿書類とその保存等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 特定建築物の所有者等は、環境衛生上必要な事項を記載した帳簿書類を備えておかなければならない。
(2) 平面図や断面図は、当該建物が解体されるまでの期間保存しなければならない。
(3) 実施した空気環境の測定結果は、5年間保存しなければならない。
(4) 実施した遊離残留塩素の検査記録は、5年間保存しなければならない。
(5) 受水槽を更新した際の給水の系統図は、5年間保存しなければならない。
ビル管過去問|建築物衛生法|帳簿書類の保存期間(空気環境・水質・図面)の基準問題を解説
この問題は、建築物衛生法に基づいて保存すべき帳簿書類の種類と、保存期間の違いを問う問題です。解くときの核心は、維持管理の実施記録は5年間保存が原則である一方、図面類は建物の維持管理の基礎資料として長期保存、実務上は永久保存として扱う点を正確に区別できるかどうかにあります。したがって、不適当なのは、給水の系統図を5年間保存とした記述です。給排水設備の系統図は図面類に当たり、5年ではなく継続して保存すべきものです。建築物衛生法施行規則では、環境衛生上必要な事項を記載した帳簿書類の備付けが求められ、維持管理に関する帳簿書類のうち一定のものは5年間保存とされています。東京都健康安全研究センターの整理でも、空気環境測定記録や残留塩素の測定記録は5年間保存、図面類は永久保存とされています。
(1) 特定建築物の所有者等は、環境衛生上必要な事項を記載した帳簿書類を備えておかなければならない。
適切です。その理由は、建築物衛生法第10条および施行規則第20条の趣旨として、特定建築物の所有者等には、維持管理に関して必要な帳簿書類を備え付ける義務があるからです。これは単なる事務処理のためではなく、空気環境、給水、排水、清掃、ねずみ等の防除などが適切に実施されているかを後から確認できるようにするためです。帳簿書類が整っていれば、点検漏れや管理不備を防ぎやすくなり、異常が起きたときにも原因を追跡しやすくなります。試験では「誰が備えるのか」という主体が問われることがありますが、ここは「特定建築物の所有者等」で押さえておくことが大切です。
(2) 平面図や断面図は、当該建物が解体されるまでの期間保存しなければならない。
適切です。その理由は、平面図や断面図は建築図面として維持管理の基礎になる重要資料であり、建物が存続する限り必要になるからです。東京都健康安全研究センターでは、配置図、各階平面図、立面図、断面図などの図面類は永久保存と整理されています。実務的にも、設備更新、事故対応、改修工事、配管やダクトの確認などで図面は繰り返し参照されます。したがって、一定年数で廃棄する性質のものではありません。この選択肢の表現は「解体されるまでの期間保存」となっており、永久保存の実務的な意味合いと一致します。
(3) 実施した空気環境の測定結果は、5年間保存しなければならない。
適切です。その理由は、空気環境測定記録は維持管理に関する帳簿書類に該当し、5年間保存する対象だからです。特定建築物では、温度、湿度、気流、一酸化炭素、二酸化炭素、浮遊粉じんなどの空気環境の状況を定期的に把握し、基準適合を確認しなければなりません。その結果記録を保存しておくことで、過去との比較や異常傾向の把握ができるようになります。試験では、測定の実施義務と保存期間をセットで問うことが多いため、「空気環境測定記録は5年保存」と結び付けて覚えると強いです。
(4) 実施した遊離残留塩素の検査記録は、5年間保存しなければならない。
適切です。その理由は、残留塩素の測定記録も給水設備の維持管理に関する帳簿書類であり、5年間保存の対象とされるからです。残留塩素は、給水の衛生状態を確認する上で重要な管理項目です。記録を残しておくことで、消毒が適切に行われていたか、水質事故の予防ができていたかを確認できます。空気環境測定記録と同じく、日常的な維持管理の実施記録に属するため、保存期間は5年です。ここは「水質に関する記録だから図面類とは違う」という分類で整理すると迷いにくくなります。
(5) 受水槽を更新した際の給水の系統図は、5年間保存しなければならない。
不適切です。その理由は、給水の系統図は設備図面に当たり、単なる5年保存の帳簿記録ではないからです。東京都健康安全研究センターでは、給排水設備の縦系統図や平面系統図は図面類として整理され、永久保存とされています。受水槽を更新した場合には、最新の設備状況が分かるよう図面を修正し、継続して保存しておく必要があります。もし5年で廃棄してしまうと、将来の点検、改修、漏水対応、衛生事故対応の際に設備の全体像が把握できず、適正な維持管理に支障が生じます。この選択肢は、維持管理記録の「5年間保存」というルールを、図面類にもそのまま当てはめている点が誤りです。
この問題で覚えるポイント
建築物衛生法の帳簿書類は、まず「維持管理の実施記録」と「図面類」とで分けて整理することが大切です。維持管理の実施記録には、空気環境測定記録、飲料水の水質検査結果、残留塩素の測定記録、清掃記録、ねずみ等の防除記録などが含まれ、基本的に5年間保存します。これに対して、配置図、平面図、断面図、空調設備の系統図、給排水設備の系統図などの図面類は、建物や設備の現況を示す基礎資料であり、更新があれば修正しながら継続保存します。実務上は永久保存と押さえておくと得点しやすいです。つまり、試験では「測定結果や点検記録は5年」「図面は長期保存」という対比で覚えるのが最も有効です。さらに、図面は古いまま保存するのではなく、増改築や設備変更があれば修正や追記が必要になる点も重要です。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「保存期間5年」という数字が頻出するため、受験者がすべての書類を一律に5年保存だと思い込みやすいところにあります。実施記録の多くが5年保存であることは事実ですが、図面類は性質がまったく異なります。記録は過去の実施事実を示す資料であるのに対し、図面は現在の建物や設備の構成を把握するための基礎資料です。この違いを意識せず、「帳簿書類だから全部5年」と雑に覚えてしまうと誤答しやすくなります。また、「受水槽を更新した際の給水の系統図」という表現も巧妙で、更新の記録のように見せながら、実際には図面類を指しています。試験では、このように「記録」と「図面」を混同させる出し方がよくあるため、書類の名称を見た瞬間に、実施記録なのか図面類なのかを判定する習慣をつけることが大切です。
