【ビル管過去問】令和6年度 問題177|衛生害虫対策と薬剤抵抗性の問題を解説

出典:建築物衛生管理技術者試験令和6年度(2024年)|ねずみ、昆虫等の防除第177問

問題

衛生動物と疾病対策に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

(1) 国内で殺虫剤抵抗性が確認されている衛生害虫は、イエバエ、蚊、ゴキブリなど多岐にわたる。

(2) トコジラミは、疥癬(かいせん)の流行に関係している。

(3) 国内では、複数の種類の蚊がウエストナイルウイルスの媒介蚊となる可能性がある。

(4) アシナガバチによる刺症は、アナフィラキシーショックの原因となることがある。

(5) マダニ類は、日本紅斑熱の媒介動物である。

 

 

 

 

ビル管過去問|衛生害虫対策と薬剤抵抗性の問題を解説

この問題は、衛生害虫そのものの性質だけでなく、感染症との関係、媒介の有無、刺咬被害、さらに殺虫剤抵抗性まで横断的に問う問題です。正答は、トコジラミと疥癬を結び付けた記述です。疥癬はヒゼンダニによる寄生症であり、トコジラミとは原因動物が異なります。一方で、蚊の媒介感染症、ハチ刺傷によるアナフィラキシー、マダニと日本紅斑熱の関係は、衛生害虫分野で頻出の重要知識です。国内では蚊やゴキブリなどで殺虫剤抵抗性が問題になっており、薬剤だけに依存しない防除の考え方もあわせて押さえることが大切です。

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(1) 国内で殺虫剤抵抗性が確認されている衛生害虫は、イエバエ、蚊、ゴキブリなど多岐にわたる。

適切です。その理由は、衛生害虫では長年にわたり薬剤が使用されてきたため、同じ系統の殺虫剤に繰り返しさらされることで抵抗性が形成されるからです。特に蚊では、ビル地下の汚水槽などに発生するチカイエカで有機リン系殺虫剤への抵抗性発達が問題とされており、国内外でイエカ属やヤブカ属の抵抗性にも注意が必要とされています。また、厚生労働省関連資料には抵抗性チャバネゴキブリの感受性データも示されており、ゴキブリでも抵抗性問題が現実的な課題です。試験では、殺虫剤は万能ではなく、環境整備や発生源対策と組み合わせることが前提だと理解しておくと判断しやすくなります。

(2) トコジラミは、疥癬(かいせん)の流行に関係している。

不適切です。その理由は、トコジラミと疥癬はまったく別の問題だからです。トコジラミは吸血性の衛生害虫で、主として刺咬被害や不快被害を起こしますが、疥癬の原因ではありません。疥癬はヒゼンダニが皮膚に寄生して起こる疾患です。衛生動物の分類でも、トコジラミは吸血被害に関わる動物として、疥癬はヒゼンダニによる寄生として区別されています。つまり、この選択肢は「皮膚症状を起こす害虫」という共通イメージを利用して、別の外部寄生虫を混同させる典型的なひっかけです。ここは確実に切り分けて覚えてください。

(3) 国内では、複数の種類の蚊がウエストナイルウイルスの媒介蚊となる可能性がある。

適切です。その理由は、ウエストナイルウイルスは特定の1種だけでなく、複数の蚊が媒介し得る感染症として考えられているからです。厚生労働省のウエストナイル熱媒介蚊対策ガイドラインでも、国内で問題となる蚊の監視や防除が示されており、ビル等に発生するチカイエカも含めた蚊対策の重要性が述べられています。さらに、蚊媒介感染症対応の資料でも、ウエストナイルウイルスは野鳥によって持ち込まれ流行する可能性があるとされています。試験対策としては、日本脳炎はコガタアカイエカ、デング熱は主にヒトスジシマカというような代表例を押さえつつ、ウエストナイル熱は複数の蚊が関わり得るという少し広い理解を持つことが大切です。

(4) アシナガバチによる刺症は、アナフィラキシーショックの原因となることがある。

適切です。その理由は、ハチ刺傷では毒そのものの局所反応だけでなく、アレルギー反応として全身性のアナフィラキシーショックが起こることがあるからです。厚生労働省関係資料では、ハチに刺された際、とくに再刺傷時にアナフィラキシーショックを起こし死亡に至る危険があることが示されています。実際に、アシナガバチ刺傷によるアナフィラキシーショックで死亡した労働災害事例も公表されています。建築物管理の現場でも、屋外周辺作業や植栽管理、外構清掃などではハチ対策が重要です。衛生害虫対策は感染症だけでなく、刺症による急性の健康被害まで含めて考える必要があります。

(5) マダニ類は、日本紅斑熱の媒介動物である。

適切です。その理由は、日本紅斑熱はリケッチア感染症であり、マダニが媒介することが厚生労働省資料でも明示されているからです。ダニ媒介感染症の資料では、日本紅斑熱がマダニにより媒介される代表的疾患として示されています。試験では、ダニ関連の感染症として、日本紅斑熱、SFTS、ライム病、ダニ媒介性脳炎などが並べて問われることがあります。いずれもマダニが関わるものとして整理しておくと、知識がつながりやすくなります。

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この問題で覚えるポイント

衛生害虫と健康被害は、感染症媒介、吸血、刺症、寄生、アレルゲン、不快害のように被害の型で整理すると覚えやすいです。疥癬はヒゼンダニによる寄生症であり、トコジラミは吸血害虫です。この違いは頻出です。 蚊は感染症媒介で最重要の衛生害虫です。日本脳炎、デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症、ウエストナイル熱などが関連し、感染症ごとに主な媒介蚊が異なります。ウエストナイル熱は複数の蚊が媒介し得る点を押さえておくと応用が利きます。 マダニは日本紅斑熱、SFTS、ライム病、ダニ媒介性脳炎などの媒介動物です。屋外活動歴や草むらへの立ち入り歴と結びつけて出題されやすいので、感染症名だけでなく媒介動物まで一体で覚えることが重要です。 ハチ類では、スズメバチだけでなくアシナガバチでも重篤なアレルギー反応が起こり得ます。刺された回数、既往、全身症状の有無が重要で、現場管理上は再刺傷リスクにも注意が必要です。 薬剤抵抗性は、衛生害虫対策で極めて重要です。同じ薬剤を使い続けると抵抗性が発達し、防除効果が落ちます。したがって、防除は薬剤散布だけでなく、発生源除去、清掃、侵入防止、潜伏場所対策を組み合わせることが原則です。

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ひっかけポイント

この問題の最大のひっかけは、「皮膚に症状を起こすもの同士」を同じグループだと思わせる点です。トコジラミは刺されてかゆみを起こしますし、疥癬も皮膚症状を起こします。そのため、表面的な症状だけで読むと関係があるように見えてしまいます。しかし、トコジラミは吸血、疥癬はヒゼンダニの寄生であり、原因も機序も異なります。ここを区別できるかが勝負です。 また、「国内では」という文言にも注意が必要です。受験者は海外の感染症だと思うと誤りに見えやすいですが、ウエストナイルウイルスは国内流行の可能性を想定して媒介蚊対策ガイドラインが作成されています。国内未流行と、国内で媒介可能性がないことは別です。 さらに、ハチ刺傷ではスズメバチだけを危険視しがちですが、アシナガバチでもアナフィラキシーは起こり得ます。知名度の高い種だけを危険と考える日常感覚が、試験では誤答につながります。 最後に、薬剤抵抗性の問題では、「薬剤が効く害虫」と「薬剤抵抗性が確認されている害虫」を混同しやすいです。薬剤の適用があることと、抵抗性問題がないことは別です。試験では、この違いを冷静に見抜くことが大切です。

 

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