出典:建築物衛生管理技術者試験 令和6年度(2024年)|空気環境の調整 第60問
問題
建築物の空気調和設計における熱負荷の大小関係として、最も適当なものは次のうちどれか。
(1) 装置負荷 < 熱源負荷 < 室内負荷
(2) 室内負荷 < 装置負荷 < 熱源負荷
(3) 熱源負荷 < 装置負荷 < 室内負荷
(4) 室内負荷 < 熱源負荷 < 装置負荷
(5) 装置負荷 < 室内負荷 < 熱源負荷
ビル管過去問|空気調和設備の熱負荷(冷房負荷暖房負荷の構成)を解説
この問題は、空気調和設備の設計で使われる「室内負荷」「装置負荷」「熱源負荷」の関係を問う基本問題です。熱負荷は建物の中で発生した熱だけを見ればよいわけではなく、外気処理やダクト配管機器で生じる付加分まで順に見込んでいく必要があります。そのため、一般に室内負荷が最も小さく、次に装置負荷、最後に熱源負荷が最も大きくなります。正しい選択肢は「室内負荷 < 装置負荷 < 熱源負荷」です。
(1) 装置負荷 < 熱源負荷 < 室内負荷
不適切です。この並びは、室内負荷を最も大きいものとして扱っている点が誤りです。室内負荷とは、室内に侵入する日射熱、人体発熱、照明や機器の発熱、外壁や窓からの熱の出入りなど、室そのものに関係する負荷を表します。しかし実際の空調設備設計では、室内で必要な処理量だけでは足りません。換気のための外気負荷や、ダクト配管空調機内部で増減する熱も考慮するため、装置負荷は室内負荷より大きくなるのが一般的です。さらに熱源負荷は、冷凍機やボイラーなど熱源側で負担する量であり、搬送動力や機器損失なども含めて見込むため、通常は装置負荷より大きくなります。したがって、この大小関係は成立しません。
(2) 室内負荷 < 装置負荷 < 熱源負荷
適切です。室内負荷は、室内環境を所定条件に保つために室内で処理すべき基本的な熱量です。これに対して装置負荷は、室内負荷に加えて外気処理負荷や送風による影響など、空調装置が実際に受け持つべき負荷を含んだものです。そのため、通常は室内負荷より大きくなります。さらに熱源負荷は、装置負荷に加えて冷温水搬送中の損失、熱交換器や機器効率による余裕分などを考慮した、熱源設備が処理する負荷です。したがって、熱源負荷は装置負荷よりさらに大きくなるのが一般的です。この順序関係を正しく理解しているかが、この問題のポイントです。
(3) 熱源負荷 < 装置負荷 < 室内負荷
不適切です。これは熱源負荷を最も小さいものとしている点が誤りです。熱源負荷は、冷凍機やボイラーなど熱をつくる側、あるいは除去する側で必要となる負荷であり、空調システム全体の上流で負担する量です。そこには装置で必要な処理量だけでなく、搬送や機器運転に伴う損失も関係してきます。つまり、系統を室内側から熱源側へたどるほど、見込むべき負荷は一般に大きくなります。したがって、熱源負荷が最小になることは通常ありません。この選択肢は、用語の意味を逆向きに理解してしまった場合に選びやすい誤答です。
(4) 室内負荷 < 熱源負荷 < 装置負荷
不適切です。最初の「室内負荷 < 熱源負荷」までは一見もっともらしく見えますが、「熱源負荷 < 装置負荷」が誤りです。熱源負荷は装置負荷より小さくなるのではなく、むしろ装置負荷をまかなうためにさらに余分な要素を含めて設定されるのが一般的です。たとえば、冷水や温水をつくって搬送する過程では、配管損失や機器効率の影響を無視できません。そのため、熱源設備に必要な能力は、装置が必要とする能力以上になる方向で考えます。この選択肢は、熱源と装置の位置関係を知っていても、どちらがより大きい負荷を負担するかを曖昧に覚えていると引っかかりやすいです。
(5) 装置負荷 < 室内負荷 < 熱源負荷
不適切です。これは装置負荷が室内負荷より小さいとしている点が誤りです。装置負荷は、室内負荷をもとにして、それを実際に処理する空調機や換気系統の条件を加味した負荷です。したがって、室内負荷より小さくなる考え方は基本的に成り立ちません。室内負荷はあくまで室内側の基準となる負荷であり、装置負荷はそれを実際の設備で処理するために拡張された負荷です。この関係を逆に覚えてしまうと、設備設計の流れそのものを取り違えることになります。
この問題で覚えるポイント
室内負荷は、室内の温湿度を保つために必要な基本の負荷です。人体、照明、機器、日射、壁窓からの熱の出入りなどが中心です。 装置負荷は、室内負荷に外気負荷や空調機で実際に処理するための条件を加えた負荷です。換気のための外気を扱う分、室内負荷より大きくなるのが基本です。 熱源負荷は、装置負荷を支える冷凍機、ボイラー、ヒートポンプなどの熱源設備が負担する負荷です。搬送損失や機器効率なども踏まえるため、通常は最も大きくなります。 試験では、室内負荷、装置負荷、熱源負荷の順に、室内側から設備全体へと対象範囲が広がると整理すると判断しやすいです。 冷房負荷でも暖房負荷でも、名称は似ていますが、どの範囲まで含むかで意味が異なります。単に「熱の量」ではなく、「どの設備段階での負荷か」を意識することが重要です。 正誤判断では、負荷の大小だけを暗記するよりも、「室内で発生した負荷に、装置側の処理分が加わり、さらに熱源側の負担が加わる」という流れで覚えると応用が利きます。
ひっかけポイント
「室内負荷」という言葉が最も身近なので、つい一番大きい負荷だと感じてしまうのが典型的な思考の罠です。しかし実務では、室内で生じた負荷をそのまま処理するだけでは済まず、外気や搬送、機器損失まで含めて設備容量を考えます。 「装置負荷」と「熱源負荷」はどちらも設備側の用語なので混同しやすいです。ここでは、空調機が受け持つのが装置負荷、そのさらに上流で熱源設備が受け持つのが熱源負荷、と系統順に整理すると間違えにくくなります。 一部だけ正しい並びに見せる選択肢が多いのもこの問題の特徴です。たとえば「室内負荷が最小」という部分だけ合っていても、その後の装置負荷と熱源負荷の順序が逆なら不正解になります。 日常感覚では「部屋の中が暑いのだから室内負荷が最大」と考えがちですが、試験では日常感覚よりも設備設計上の定義が優先されます。用語の印象ではなく、定義と含まれる範囲で判断することが大切です。
