【ビル管過去問】令和6年度 問題48|建築外壁の温度分布と熱伝導(定常熱伝導の基本)を解説

出典:建築物衛生管理技術者試験令和6年度(2024年)|空気環境の調整第48問

問題

下の図は、厚さの異なるA、B、C部材で構成された建築物外壁における定常状態の内部温度分布を示している。

この図に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

【ビル管】建築物衛生管理技術者試験2024年48問熱伝導率

(1) A、B、C部材のなかで、最も熱伝導率が小さい部材はB部材である。

(2) 熱伝達率は、屋外側の方が室内側より大きい。

(3) B部材が主体構造体であるとすれば、この図は外断熱構造を示している。

(4) A、B、Cの各部材を流れる単位面積当たりの熱流量に差異はない。

(5) 壁表面近傍で空気温度が急激に変化する部分を境界層という。

 

 

 

ビル管過去問|建築外壁の温度分布と熱伝導を解説

この問題は、外壁を通る定常熱伝導の基本を理解しているかを問う問題です。温度分布図では、どの部分で温度が大きく下がっているか、表面近傍でどのような温度変化が起きているか、各部材を通る熱の流れがどうなるかを読み取ることが重要です。正しい選択肢は、熱伝達率に関する記述、外断熱構造に関する記述、定常状態における熱流量に関する記述、境界層に関する記述です。不適当なのは、温度分布の読み取りと熱伝導率の関係を取り違えている記述です。

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(1) A、B、C部材のなかで、最も熱伝導率が小さい部材はB部材である。

不適切です。その理由は、定常状態で各部材を通る熱流量が同じである場合、熱伝導率が小さい部材ほど、同じ厚さ当たりの温度勾配が大きくなるからです。つまり、温度分布図では、温度がより急に下がっている部材ほど熱伝導率が小さいと判断します。この選択肢は、図に示された温度降下の大きさと熱伝導率の関係を正しく読めていません。熱伝導率は、熱の伝わりやすさを表す値であり、小さいほど熱は伝わりにくく、その分だけ部材内部で大きな温度差を必要とします。したがって、B部材が最も熱伝導率が小さいとはいえず、この記述が最も不適当です。

(2) 熱伝達率は、屋外側の方が室内側より大きい。

適切です。その理由は、一般に屋外側は風の影響を受けやすく、壁面近傍の空気がかき混ぜられやすいため、対流による熱の受け渡しが大きくなりやすいからです。熱伝達率が大きいほど、表面と周囲空気との間で熱が移動しやすくなります。実務でも、外表面熱伝達率は風速の影響を強く受け、室内側より大きく設定されることが多いです。温度分布図で表面近傍の温度変化を読むときには、部材内部の熱伝導だけでなく、表面での熱伝達もあわせて考える必要があります。

(3) B部材が主体構造体であるとすれば、この図は外断熱構造を示している。

適切です。その理由は、主体構造体の外側に断熱性能の高い層が配置されている場合、それは外断熱構造と判断できるからです。外断熱では、コンクリートや躯体などの主体構造体を断熱材が外側から包み込むような形になります。その結果、主体構造体の温度変動が小さくなり、結露防止や蓄熱性能の活用に有利になります。この選択肢は、温度分布図から各層の位置関係と断熱層の配置を読み取る問題です。構造体の外側に熱を通しにくい層があるなら、外断熱と考えるのが基本です。

(4) A、B、Cの各部材を流れる単位面積当たりの熱流量に差異はない。

適切です。その理由は、定常一次元熱伝導では、壁内に熱が蓄積されないため、各層を通過する熱流量は連続して同じになるからです。もし途中の層だけ熱流量が異なれば、その層のどこかに熱がたまったり失われたりすることになりますが、定常状態ではそのようなことは起こりません。したがって、多層壁であっても、単位面積当たりの熱流量は各部材で等しくなります。試験では、温度差は層ごとに異なるが、熱流量は同じという点がよく問われます。ここを混同しないことが大切です。

(5) 壁表面近傍で空気温度が急激に変化する部分を境界層という。

適切です。その理由は、固体表面のごく近くでは、空気の流れが表面の影響を受け、速度も温度も急激に変化する薄い層が形成されるからです。これを境界層といいます。壁表面と少し離れた空気では温度差があるため、この境界層を介して熱が受け渡されます。表面熱伝達を理解するうえで、境界層の存在は基本事項です。壁体内部では熱伝導、表面近傍の空気側では境界層を介した熱移動が起きていると整理すると、温度分布図の意味がつかみやすくなります。

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この問題で覚えるポイント

定常熱伝導では、多層壁の各層を流れる単位面積当たりの熱流量は等しくなります。温度差が層ごとに違っても、熱流量が途中で変わることはありません。 熱伝導率が小さい材料ほど熱を通しにくく、同じ熱流量を流すためには部材内で大きな温度勾配が必要になります。温度分布図では、温度の下がり方が急な層ほど熱伝導率が小さいと判断します。 熱抵抗は、部材の厚さを熱伝導率で割った値で考えます。厚いだけで断熱性が高いとは限らず、熱伝導率もあわせて見なければなりません。 壁の表面では、部材内部の熱伝導とは別に、空気との間で熱伝達が起こります。屋外側は風の影響を受けやすいため、一般に室内側より熱伝達率が大きくなります。 外断熱は、主体構造体の外側に断熱層を配置する構造です。内断熱との違いは、断熱材が構造体のどちら側にあるかです。外断熱は構造体温度を安定させやすく、内部結露の抑制にも有利です。 境界層は、壁表面近傍で空気温度や流速が急激に変化する薄い層です。表面熱伝達を考えるときの基本概念として重要です。

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ひっかけポイント

最も多い誤りは、温度降下が大きい層を見て、なんとなく「厚いから温度が下がった」と考えてしまうことです。実際には、定常熱伝導では熱流量が同じなので、温度勾配の大きさは熱伝導率の小ささと強く関係します。厚さだけで判断すると誤ります。 熱流量と温度差を混同させるのも典型的なひっかけです。層ごとに温度差は異なりますが、定常状態では熱流量は同じです。この基本を外すと、多層壁の問題は連続して間違えやすくなります。 外断熱と内断熱は、断熱材の位置関係を主体構造体との相対位置で判断します。断熱材らしい材料を見つけるだけでは不十分で、構造体の内側か外側かまで整理する必要があります。 屋外側と室内側の熱伝達率は、日常感覚だけで判断すると迷いやすいです。外は寒いから熱が逃げやすいのではなく、風によって表面の空気が入れ替わりやすいから熱伝達率が大きくなる、と理解しておくと応用が利きます。 境界層は流体力学の用語に見えるため、建築環境の問題で出ると別分野だと思ってしまいがちです。しかし、壁表面での熱移動を考えるうえで非常に重要な概念です。表面付近の急な温度変化は、材料内部ではなく空気側の境界層で起きていることを押さえておくと、図の読み取りが安定します。

 

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