出典:建築物衛生管理技術者試験令和6年度(2024年)|建築物の環境衛生第44問
問題
クリプトスポリジウム症に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) クリプトスポリジウム症の病原体は原虫である。
(2) クリプトスポリジウム症は、人獣共通感染症である。
(3) 地表水を水道の原水としている場合は汚染のリスクが高い。
(4) クリプトスポリジウム症の発症の潜伏期間は3〜10日である。
(5) 水道におけるクリプトスポリジウムの不活化には、一般にオゾンが用いられる。
ビル管過去問|クリプトスポリジウム症の感染経路と水系感染症を解説
この問題は、クリプトスポリジウム症の病原体の性質、感染経路、水道水におけるリスク管理について理解しているかを問う問題です。クリプトスポリジウムは原虫による感染症で、人獣共通感染症としても知られ、特に地表水を原水とする水道では注意が必要です。正しい知識として押さえるべきなのは、クリプトスポリジウムは塩素に強く、一般的な消毒だけでは十分に不活化しにくいという点です。したがって、最も不適当な選択肢は、水道における不活化に一般にオゾンが用いられるとする(5)です。
(1) クリプトスポリジウム症の病原体は原虫である。
適切です。クリプトスポリジウム症の原因となるクリプトスポリジウムは、細菌やウイルスではなく原虫に分類されます。原虫は単細胞の寄生生物であり、消化管内で増殖して下痢などの症状を引き起こします。ビル管試験では、病原体の分類を問う問題がよく出ますので、細菌性か、ウイルス性か、原虫性かを区別できるようにしておくことが大切です。クリプトスポリジウムは代表的な水系原虫感染症の一つとして覚えておくと整理しやすいです。
(2) クリプトスポリジウム症は、人獣共通感染症である。
適切です。クリプトスポリジウム症は、人から人だけでなく、動物から人へも感染する人獣共通感染症です。家畜や野生動物のふん便に含まれるオーシストが河川や貯水池を汚染し、その水が人の口に入ることで感染が成立します。このため、水道原水の衛生管理では、上流域の畜産や動物由来汚染も重要な視点になります。人獣共通感染症であるという点は、水質管理と公衆衛生を結びつけて理解するうえで重要です。
(3) 地表水を水道の原水としている場合は汚染のリスクが高い。
適切です。地表水とは、河川、湖沼、貯水池など地表に存在する水のことで、周辺環境の影響を受けやすいという特徴があります。クリプトスポリジウムは人や動物のふん便に由来して水中に混入するため、地表水を原水とする場合は汚染リスクが高くなります。これに対して、深い地下水は地層によるろ過作用を受けるため、一般には地表水より微生物汚染リスクが低いと考えられます。ただし、地下水でも安全が絶対に保証されるわけではありません。試験対策としては、地表水は外部汚染を受けやすく、クリプトスポリジウム対策が重要になりやすいと押さえておくとよいです。
(4) クリプトスポリジウム症の発症の潜伏期間は3〜10日である。
適切です。クリプトスポリジウム症の潜伏期間は一般に数日から10日前後とされ、3〜10日という表現は妥当です。感染すると、水様性下痢、腹痛、吐き気、発熱などを生じることがあります。健康な人では自然軽快することもありますが、免疫力の低下した人では重症化しやすいため注意が必要です。感染症の問題では、潜伏期間の数字が細かく問われることがありますが、このテーマでは厳密な日数暗記よりも、おおむね数日から1週間前後で発症する感染症であると理解しておくことが実践的です。
(5) 水道におけるクリプトスポリジウムの不活化には、一般にオゾンが用いられる。
不適切です。クリプトスポリジウム対策として重要なのは、一般的な塩素消毒が十分に効きにくいことを理解することです。そのため、水道では消毒だけに頼るのではなく、ろ過によってオーシストを除去することが基本となります。確かにオゾン処理には酸化作用がありますが、クリプトスポリジウム対策として一般に最も基本となる考え方は、適切なろ過による除去です。この選択肢は、不活化という言葉を使って、あたかも通常の消毒処理で広く対応しているように見せていますが、実務上も試験上も、クリプトスポリジウムはろ過で除去するという理解が中心です。したがって、この記述は最も不適当です。
この問題で覚えるポイント
クリプトスポリジウムの病原体は原虫です。細菌やウイルスではありません。
人獣共通感染症であり、人のふん便だけでなく、家畜や野生動物由来の汚染も感染源になります。
感染経路は主に経口感染で、汚染された水や食品を介して感染します。特に水系感染症として重要です。
地表水は河川や湖沼など外部環境の影響を受けやすいため、原水として使用する場合は汚染リスクが高くなります。
潜伏期間はおおむね数日から10日前後です。数字の暗記だけでなく、水様性下痢を中心とする消化器症状を起こす感染症として理解しておくことが大切です。
クリプトスポリジウムは塩素に強いため、通常の塩素消毒では十分な対策になりにくいです。
水道での基本対策は、消毒よりも、ろ過によるオーシストの除去です。
同じ水系感染症でも、細菌性のものは消毒が有効な場合がありますが、クリプトスポリジウムやジアルジアのような原虫は、ろ過重視で考える必要があります。
試験では、病原体の分類、感染経路、消毒の効きやすさ、原水の種類によるリスクの違いが正誤判断の軸になります。
ひっかけポイント
最も多い罠は、感染症対策イコール消毒という日常感覚に引っ張られることです。多くの受験者は、水道の微生物対策と聞くと、まず塩素やオゾンなどの消毒を思い浮かべます。しかし、クリプトスポリジウムはその発想だけでは正答できません。消毒が万能ではなく、ろ過が中心になるという点が重要です。
病原体の分類の混同もよくある罠です。下痢を起こす感染症というだけで細菌やウイルスと決めつけると誤ります。水系感染症では、原虫が出題されやすいことを意識しておく必要があります。
人獣共通感染症という表現も引っかけになりやすいです。人の衛生問題としてだけ考えると、動物由来の汚染リスクを見落としやすくなります。水源管理では、流域全体の環境を見る視点が必要です。
潜伏期間のような数値は、極端に外れた数字ではなく、もっともらしい範囲で出題されることが多いです。そのため、厳密な丸暗記よりも、数日で発症する感染症か、数週間以上かかる感染症かという大きな感覚で整理しておくと、ひっかかりにくくなります。
このテーマでは、一部だけ正しい文章にも注意が必要です。たとえば、オゾンには処理効果がある側面があっても、それだけで一般論として処理の中心と書かれていれば不適当になり得ます。試験では、言い切り表現が本当に妥当かを必ず点検する習慣が大切です。
