出典:建築物衛生管理技術者試験令和6年度(2024年)|建築物の環境衛生第42問
問題
レジオネラ症に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 病原体は、自然界の土壌や淡水中等に生息している。
(2) エアロゾル飛散により感染が生じる。
(3) 閉鎖的空間では感染のリスクが高い。
(4) ヒトからヒトへの感染が起こる。
(5) 喫煙者慢性呼吸器疾患患者などでは発症しやすい。
ビル管過去問|レジオネラ症の感染源感染経路発生要因を解説
この問題は、レジオネラ症の基本事項である「どこに菌がいるのか」「どう感染するのか」「どのような人が発症しやすいのか」を問う問題です。正しい選択肢を選ぶというより、誤っている記述を確実に見抜けるかがポイントです。レジオネラ属菌は土壌や淡水などの自然環境に生息し、設備内で増殖した菌を含むエアロゾルの吸入などで感染します。一方で、ヒトからヒトへの感染は通常起こらないため、正しい選択肢は(1)(2)(3)(5)であり、最も不適当なのは(4)です。
(1) 病原体は、自然界の土壌や淡水中等に生息している。
適切です。その理由は、レジオネラ属菌は環境細菌であり、土壌、河川、湖沼などの自然環境に広く存在しているためです。自然界では一般に菌数は多くありませんが、建築物内の給水給湯設備、冷却塔、循環式浴槽、加湿器など、条件がそろった人工環境では増殖しやすくなります。したがって、「自然界に存在する菌である」という理解は、感染源を考える出発点として非常に重要です。
(2) エアロゾル飛散により感染が生じる。
適切です。その理由は、レジオネラ症の代表的な感染経路が、レジオネラ属菌を含む微細な水滴、すなわちエアロゾルを吸い込むことだからです。冷却塔水、循環式浴槽、シャワー、加湿器などは、条件によってエアロゾルを発生させます。設備の衛生管理が不十分だと、そこで増殖した菌が空気中に飛散し、吸入によって感染につながります。ビル管の実務でも、単に「水が汚れているか」ではなく、「その水が霧状になって飛散するか」という視点が重要です。
(3) 閉鎖的空間では感染のリスクが高い。
適切です。その理由は、閉鎖的な空間そのものが原因というより、エアロゾルが滞留しやすく、曝露の機会が増えやすい環境では感染リスクが高まりやすいからです。レジオネラ症は空気感染や接触感染ではなく、菌を含むエアロゾルの吸入が問題になります。そのため、換気が不十分で、エアロゾルを発生する設備がある環境では、曝露条件がそろいやすくなります。ここでは「閉鎖的空間」という表現を、設備由来のエアロゾルにさらされやすい状況として理解すると判断しやすいです。なお、感染の本質は閉鎖空間そのものではなく、菌を含むエアロゾルへの曝露です。
(4) ヒトからヒトへの感染が起こる。
不適切です。その理由は、レジオネラ症は通常、ヒトからヒトへ感染しないからです。厚生労働省やCDCも、レジオネラ属菌は汚染された水から発生したエアロゾルの吸入などで感染し、一般に人から人へは広がらないと示しています。肺炎を起こす感染症と聞くと、インフルエンザや新型コロナのように人から人へうつるイメージを持ちやすいですが、レジオネラ症はそこが大きく異なります。この違いを押さえておくことが、試験でも実務でも重要です。
(5) 喫煙者慢性呼吸器疾患患者などでは発症しやすい。
適切です。その理由は、レジオネラ症は誰でも感染する可能性はあるものの、喫煙者、高齢者、慢性呼吸器疾患のある人、免疫機能が低下している人では重症化や発症のリスクが高くなるためです。喫煙によって気道の防御機能が低下している場合や、もともと肺に基礎疾患がある場合は、菌に対する抵抗力が弱くなりやすいからです。したがって、この選択肢はレジオネラ症の感受性宿主に関する正しい理解に基づいています。
この問題で覚えるポイント
レジオネラ属菌は、土壌、河川、湖沼などの自然環境に生息する環境細菌です。自然界にいる菌が、人工の水設備内で増殖して問題になります。 感染経路の基本は、菌を含むエアロゾルの吸入です。冷却塔、循環式浴槽、シャワー、加湿器など、霧やしぶきを発生させる設備は要注意です。誤嚥や汚染水の吸引で感染することもありますが、試験ではまずエアロゾル感染を軸に覚えるのが重要です。 ヒトからヒトへは感染しません。ここは頻出で、他の呼吸器感染症との最大の違いです。肺炎を起こす感染症だからといって、飛沫感染や接触感染と短絡しないことが大切です。 発症しやすいのは、高齢者、喫煙者、慢性呼吸器疾患患者、免疫機能が低下している人などです。「感染しやすい設備」と「発症しやすい人」の両方をセットで整理しておくと、応用問題に対応しやすくなります。 実務上は、菌を持ち込ませないよりも、「設備内で増殖させない」「エアロゾルとして飛散させない」ことが重要です。水温、停滞、ぬめりやバイオフィルム、清掃不良などが増殖要因として問われやすいです。
ひっかけポイント
最も典型的なひっかけは、「肺炎を起こす感染症だから人から人へうつるはずだ」と日常感覚で判断してしまうことです。レジオネラ症は呼吸器症状を示しても、感染の中心はあくまで設備由来のエアロゾルです。この思い込みを外せるかが勝負です。 「閉鎖的空間では感染リスクが高い」という表現も、閉鎖空間そのものが原因だと考えると迷いやすいです。原因は空間ではなく、そこで菌を含むエアロゾルに曝露しやすい状況です。言葉の表面ではなく、感染のメカニズムで判断することが大切です。 「自然界に生息する」という記述だけを見ると、安全そうに感じてしまうことがありますが、試験ではそこから一歩進んで、「人工設備内で増殖して問題になる」という流れまで理解しているかが問われます。自然界にいることと、建築物衛生上の危険がないことは別です。 喫煙者や慢性呼吸器疾患患者に関する記述は、感染しやすいのか、重症化しやすいのか、発症しやすいのかが曖昧にされやすいです。試験では細かい言い回しの違いより、リスク群として押さえているかが重要ですが、背景には呼吸機能や防御機能の低下があります。
