出典:建築物衛生管理技術者試験令和6年度(2024年)|建築物の環境衛生第36問
問題
振動に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 局所振動の場合、振動数が大きければ大きいほど健康影響は大きい。
(2) 局所振動により、レイノー現象といわれる指の末梢(しょう)循環障害が起こる。
(3) フォークリフトの運転の際の全身振動により、胃下垂が生じる。
(4) 局所振動による神経障害が進行すると筋肉が萎縮し、手指の伸展が困難となる。
(5) 道路交通などによる振動は、地面を伝搬し、建築物内で全身振動として知覚される。
ビル管過去問|振動の人体影響(局所振動全身振動)を解説
この問題は、振動が人体に与える影響について、局所振動と全身振動を区別して理解しているかを問う問題です。ポイントは、振動の影響は単純に「振動数が高いほど大きい」とは言えず、振動の種類、伝わる部位、振動数の範囲、暴露時間などを総合的に見て判断する点にあります。正しい選択肢は、局所振動によるレイノー現象を述べたもの、フォークリフト運転時の全身振動による胃下垂を述べたもの、局所振動による神経障害の進行を述べたもの、道路交通振動が建築物内で全身振動として知覚されることを述べたものです。不適当なのは、局所振動では振動数が大きいほど健康影響が大きいと一律に述べたものです。
(1) 局所振動の場合、振動数が大きければ大きいほど健康影響は大きい。
不適切です。局所振動の健康影響は、振動数だけで単純に決まるものではありません。振動の強さ、暴露時間、工具の種類、把持力、作業姿勢、寒冷環境の有無など、複数の要因が関係します。また、人体には振動に対して影響を受けやすい周波数帯があり、振動数が高ければ高いほど必ず影響が大きくなる、という直線的な関係ではありません。試験では、このような「一方向に単純化した言い切り表現」が誤りとして出されやすいです。
(2) 局所振動により、レイノー現象といわれる指の末梢(しょう)循環障害が起こる。
適切です。局所振動を長期間受けると、手指の血管が収縮しやすくなり、末梢循環障害を起こすことがあります。これがいわゆるレイノー現象で、振動障害の代表的な症状の一つです。寒冷時に指が白くなる、しびれる、痛むといった症状がみられ、チェーンソーや削岩機などの振動工具を扱う作業で問題となります。ビル管試験では、局所振動と末梢循環障害の結び付きは基本事項として押さえておきたい知識です。
(3) フォークリフトの運転の際の全身振動により、胃下垂が生じる。
適切です。フォークリフトのような車両の運転では、座位で体幹全体に振動が伝わるため、全身振動の影響が問題になります。全身振動では、腰痛や疲労感、不快感だけでなく、消化器系への影響が指摘されることがあり、その例として胃下垂が挙げられます。日常感覚では結び付きにくく感じるかもしれませんが、試験では「全身振動は筋骨格系だけでなく内臓にも影響し得る」と理解しているかが問われます。
(4) 局所振動による神経障害が進行すると筋肉が萎縮し、手指の伸展が困難となる。
適切です。局所振動障害では、血管障害だけでなく神経や筋への障害も生じます。初期にはしびれや感覚低下などがみられますが、進行すると筋力低下や筋萎縮が起こり、手指の細かな動きが難しくなることがあります。手指の伸展が困難になるという記述は、障害が進行した場合の機能低下を示しており、内容として妥当です。振動障害は単なる「白ろう現象」だけで終わらず、循環、神経、運動機能の各面に及ぶことを押さえておくと、類題に強くなります。
(5) 道路交通などによる振動は、地面を伝搬し、建築物内で全身振動として知覚される。
適切です。道路交通や鉄道などによる振動は、地盤や建物構造を通じて室内に伝わり、居住者や利用者に全身振動として感じられることがあります。これは手や腕の一部だけに伝わる局所振動ではなく、床、椅子、身体全体を通して知覚される全身振動です。建築物環境衛生の分野では、建物利用者の快適性や健康影響の観点から、こうした環境振動の理解も重要です。
この問題で覚えるポイント
振動は、手や腕など身体の一部に伝わる局所振動と、座面や床などを介して身体全体に伝わる全身振動に分けて考えます。 局所振動の代表的な健康影響には、末梢循環障害、末梢神経障害、筋関節障害があります。代表例がレイノー現象で、寒冷時に白指、しびれ、痛みなどが出やすくなります。 全身振動の代表的な影響には、不快感、疲労、腰痛、作業能率低下、消化器への影響などがあります。車両運転や機械操作では、座位で受ける振動が典型例です。 振動の影響は、振動数だけで決まるわけではありません。振動の大きさ、暴露時間、振動方向、作業条件、環境条件などを合わせて評価します。 試験では、「高いほど強い」「多いほど悪い」のような単純化した表現は要注意です。人体影響には、影響を受けやすい周波数帯や条件があるため、一律表現は誤りになりやすいです。 局所振動と全身振動を混同しないことが重要です。白ろう現象や手指のしびれは局所振動、車両運転時の腰痛や内臓への影響は全身振動、と整理して覚えると正誤判断しやすくなります。
ひっかけポイント
最も典型的なひっかけは、「振動数が大きいほど影響も大きい」という単純な比例関係に見せる表現です。受験者は、数値が大きいほど危険だろうという日常感覚で納得しやすいため、誤答しやすくなります。 局所振動と全身振動の症状を入れ替えるパターンにも注意が必要です。手指の循環障害やしびれは局所振動、腰痛や内臓影響は全身振動、と伝わる部位で切り分ける癖をつけると引っかかりにくくなります。 「一部だけ正しい」文章も頻出です。たとえば振動障害という大枠では正しそうでも、原因が局所振動なのか全身振動なのかがずれている場合があります。テーマ全体ではなく、主語と結果の組み合わせまで確認することが大切です。 レイノー現象のような専門用語は知っていても、何の障害かを曖昧に覚えていると失点しやすいです。白指現象、末梢循環障害、局所振動障害というつながりを一まとまりで覚えると安定します。 「胃下垂」のように日常的には意外に感じる選択肢は、誤りだと決めつけやすいです。違和感だけで判断せず、全身振動は筋骨格系以外にも影響し得る、という知識で判断することが重要です。
