出典:建築物衛生管理技術者試験令和6年度(2024年)|建築物の環境衛生第31問
問題
アスベストに起因する疾患として、正しいものの組合せは次のうちどれか。 ア じん肺 イ 過敏性肺炎 ウ 慢性閉塞性肺疾患 エ 肺がん オ 悪性中皮腫
(1) アとイとエ
(2) アとウとエ
(3) アとエとオ
(4) イとウとオ
(5) イとエとオ
ビル管過去問|アスベストによる健康被害(石綿肺中皮腫肺がん)を解説
この問題は、アスベストによって生じる代表的な健康被害を正確に判定できるかを問う問題です。アスベストは吸い込まれた繊維が肺や胸膜に長く残ることで、石綿肺、肺がん、悪性中皮腫などを引き起こします。一方で、過敏性肺炎や慢性閉塞性肺疾患は、アスベストに特有の疾患ではありません。したがって、正しい組合せは、じん肺、肺がん、悪性中皮腫を含む(3)です。
(1) アとイとエ
不適切です。じん肺と肺がんはアスベストに関連するため一見もっともらしく見えますが、過敏性肺炎が含まれているため誤りです。過敏性肺炎は、カビや細菌、動物由来たんぱく質などの有機粉じんを吸入し、それに対する免疫反応によって起こる病気です。アスベストのような無機繊維のばく露で典型的に生じる病気ではありません。そのため、この組合せは正しいとはいえません。
(2) アとウとエ
不適切です。じん肺と肺がんはアスベストに起因する疾患として正しいですが、慢性閉塞性肺疾患が含まれているため誤りです。慢性閉塞性肺疾患は、主に喫煙によって気道が狭くなり、呼吸機能が低下する病気です。職業性ばく露が症状を悪化させることはありますが、アスベスト特有の健康障害として扱うものではありません。選択肢の一部が正しいため迷いやすいですが、全体としては不適切です。
(3) アとエとオ
適切です。じん肺のうち、アスベスト粉じんの吸入によって生じるものは石綿肺と呼ばれます。これは肺の線維化が進行する病気で、長期間のばく露によって発症します。肺がんもアスベストばく露との関連が認められており、とくに喫煙が加わるとリスクがさらに高まります。悪性中皮腫は胸膜や腹膜に発生する悪性腫瘍で、アスベストとの関連が非常に強いことで知られています。この3つはいずれもアスベストに起因する代表的な疾患です。
(4) イとウとオ
不適切です。悪性中皮腫はアスベストに起因する代表的な疾患なので正しいですが、過敏性肺炎と慢性閉塞性肺疾患が誤っています。過敏性肺炎は免疫反応による炎症性疾患であり、慢性閉塞性肺疾患は主に喫煙などで起こる閉塞性換気障害です。どちらもアスベストによる典型的な健康被害ではありません。悪性中皮腫が強いキーワードなので正しそうに感じますが、他の疾患名を冷静に切り分ける必要があります。
(5) イとエとオ
不適切です。肺がんと悪性中皮腫はアスベストに関連するため正しいですが、過敏性肺炎が誤っています。アスベストによる障害は、肺の線維化や悪性腫瘍との結び付きで覚えることが重要です。過敏性肺炎は名前に「肺炎」とつくため肺の病気として並べると紛らわしいのですが、病因が異なります。したがって、この組合せも不適切です。
この問題で覚えるポイント
アスベストに起因する代表的な健康被害は、石綿肺、肺がん、悪性中皮腫です。 石綿肺は、アスベスト粉じんの長期吸入によって肺が線維化するじん肺です。じん肺の一種として理解すると整理しやすいです。 悪性中皮腫は、胸膜や腹膜に発生する悪性腫瘍で、アスベストとの関連が非常に強いです。 肺がんもアスベストばく露でリスクが上がります。喫煙との相乗作用がある点も重要です。 過敏性肺炎は、有機物に対するアレルギー性、免疫学的反応による疾患であり、アスベストとは結び付きません。 慢性閉塞性肺疾患は、主に喫煙が原因となる閉塞性換気障害であり、アスベスト特有の疾患ではありません。 試験では、アスベスト関連疾患として「線維化」と「腫瘍」を軸に覚えると正誤判断がしやすくなります。つまり、石綿肺、肺がん、悪性中皮腫が中心です。 似た肺疾患でも、原因がアレルギーなのか、喫煙なのか、無機粉じんなのかを区別することが得点につながります。
ひっかけポイント
この問題の典型的な罠は、「肺の病気ならアスベストと関係ありそうだ」と広く考えてしまうことです。試験作成者はそこを狙って、過敏性肺炎や慢性閉塞性肺疾患のような、実在する別系統の肺疾患を混ぜています。 「一部は正しい」組合せに惑わされやすい点も大きなひっかけです。じん肺、肺がん、悪性中皮腫のうち2つが入っている選択肢はもっともらしく見えますが、1つでも異質な疾患が混ざれば全体として誤りです。 とくに「過敏性肺炎」は名称に肺炎とあるため、粉じんや吸入物質全般で起こると誤解しやすいです。しかし実際には有機物に対する免疫反応が本質であり、アスベストとは機序が異なります。 「慢性閉塞性肺疾患」も、呼吸器疾患というだけで職業性ばく露と結び付けてしまう思考の罠があります。病名の印象ではなく、原因と発症機序で判断することが大切です。 今後も同じタイプの問題では、「その病気は何が原因で起こるのか」を起点に整理してください。病名の雰囲気ではなく、原因物質、障害部位、病態で切り分けることが再現性のある対策になります。
