出典:第二種衛生管理者2024年(令和6年度)10月公表問題|関係法令第4問
問題
労働時間の状況等が一定の要件に該当する労働者に対して、法令により実施することが義務付けられている医師による面接指導に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
ただし、労働者の中に、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務に従事する者、高度プロフェッショナル制度の対象者及び医師はいないものとする。
(1) 面接指導の対象となる労働者の要件は、原則として、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1か月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者であることとする。
(2) 事業者は、面接指導を実施するため、タイムカードによる記録等の客観的な方法その他の適切な方法により、労働者の労働時間の状況を把握し、その記録を作成して3年間保存するための必要な措置を講じなければならない。
(3) 事業者は、労働時間の状況等が一定の要件に該当する労働者から申出があったときは、3か月以内に、面接指導を行わなければならない。
(4) 面接指導を行う医師として事業者が指定することのできる医師は、当該事業場の産業医に限られる。
(5) 事業者は、面接指導の結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について、原則として、面接指導が行われた日から3か月以内に、医師の意見を聴かなければならない。
第二種衛生管理者|長時間労働者に対する医師の面接指導制度を解説
長時間労働者に対する医師の面接指導では、対象者の基準、労働時間の把握方法、実施時期、医師の範囲、医師からの意見聴取時期が問われます。正しい記述は(2)です。事業者は、面接指導を適切に行う前提として、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的な方法その他の適切な方法により、労働者の労働時間の状況を把握し、その記録を作成して3年間保存する必要があります。長時間労働による健康障害を防ぐ制度であるため、「何時間働いたか」を正確に把握することが出発点になります。

(1) 面接指導の対象となる労働者の要件は、原則として、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1か月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者であることとする。
不適切です。その理由は、原則的な面接指導の対象となる労働者の基準は、時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められ、本人から申出があった者だからです。この選択肢では「100時間を超え」とされている点が誤りです。100時間という数字は、研究開発業務従事者や高度プロフェッショナル制度の対象者など、別の制度で重要になることがありますが、この問題ではそれらの者はいないとされています。通常の労働者については、まず「月80時間超」と「疲労の蓄積」と「本人の申出」を押さえることが大切です。
(2) 事業者は、面接指導を実施するため、タイムカードによる記録等の客観的な方法その他の適切な方法により、労働者の労働時間の状況を把握し、その記録を作成して3年間保存するための必要な措置を講じなければならない。
適切です。事業者は、長時間労働者への面接指導を確実に実施できるよう、労働時間の状況を把握しなければなりません。把握方法としては、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録など、客観的な方法が基本です。やむを得ず自己申告による場合でも、実態と大きくずれないよう適切に管理する必要があります。また、把握した労働時間の状況について記録を作成し、3年間保存する必要があります。面接指導制度は、労働者本人の健康状態だけでなく、長時間労働の実態を事業者が継続的に把握することも重要な目的としています。
(3) 事業者は、労働時間の状況等が一定の要件に該当する労働者から申出があったときは、3か月以内に、面接指導を行わなければならない。
不適切です。その理由は、面接指導は、労働者から申出があった後、遅滞なく行う必要があるからです。「3か月以内」という期限では遅すぎます。長時間労働による疲労の蓄積は、脳・心臓疾患やメンタルヘルス不調などの健康障害につながるおそれがあります。そのため、面接指導は形式的に後回しにするものではなく、申出があれば速やかに実施する制度として理解しておく必要があります。
(4) 面接指導を行う医師として事業者が指定することのできる医師は、当該事業場の産業医に限られる。
不適切です。面接指導を行う医師は、当該事業場の産業医に限られるわけではありません。産業医が行うことが望ましい場面は多いですが、法令上「産業医だけ」と限定されているわけではない点に注意が必要です。医師による面接指導では、労働者の勤務状況、疲労の蓄積状況、心身の状態などを確認し、必要に応じて就業上の措置について意見を述べます。試験では、「産業医が関与する制度だから、産業医に限られる」と思い込ませる表現に注意しましょう。
(5) 事業者は、面接指導の結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について、原則として、面接指導が行われた日から3か月以内に、医師の意見を聴かなければならない。
不適切です。その理由は、医師の意見聴取は、面接指導が行われた後、遅滞なく行う必要があるからです。「3か月以内」ではありません。医師の意見は、労働時間の短縮、就業場所の変更、作業内容の変更、深夜業の回数の減少など、労働者の健康を守るための就業上の措置を判断するために重要です。面接指導を受けさせるだけで終わりではなく、その結果を踏まえて必要な措置につなげることが制度の目的です。
この問題で覚えるポイント
長時間労働者に対する医師の面接指導では、原則として、時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超え、疲労の蓄積が認められ、労働者本人から申出があった場合に、事業者は面接指導を行います。労働時間の状況は、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的な方法その他の適切な方法により把握し、その記録を作成して3年間保存します。面接指導の申出があった場合は、3か月以内ではなく、遅滞なく実施する点が重要です。面接指導を行う医師は産業医に限定されません。また、面接指導後の医師からの意見聴取も、3か月以内ではなく、遅滞なく行います。なお、面接指導の結果の記録は5年間保存するため、労働時間の状況の記録は3年間、面接指導結果の記録は5年間という保存期間の違いも正誤判断に直結します。
ひっかけポイント
このテーマでは、数値と期限のすり替えが最もよく狙われます。特に「80時間」と「100時間」、「遅滞なく」と「3か月以内」、「労働時間の状況の記録は3年間」と「面接指導結果の記録は5年間」の混同に注意が必要です。また、産業医が関係する制度であるため、面接指導を行う医師が産業医に限られると考えてしまうのも典型的な誤りです。文章の一部に正しい内容が含まれていても、数値や期限が少し変えられているだけで不適切になります。長時間労働者の面接指導では、対象基準、実施時期、記録保存、医師の範囲をセットで整理しておくと、同じパターンの問題にも対応しやすくなります。
