出典:第二種衛生管理者2024年(令和6年度)4月公表問題|労働生理第23問
問題
心臓及び血液循環に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 心臓は、自律神経の中枢で発生した刺激が刺激伝導系を介して心筋に伝わることにより、規則正しく収縮と拡張を繰り返す。
(2) 肺循環により左心房に戻ってきた血液は、左心室を経て大動脈に入る。
(3) 大動脈を流れる血液は動脈血であるが、肺動脈を流れる血液は静脈血である。
(4) 心臓の拍動による動脈圧の変動を末梢の動脈で触知したものを脈拍といい、一般に、手首の橈(とう)骨動脈で触知する。
(5) 動脈硬化とは、コレステロールの蓄積などにより、動脈壁が肥厚・硬化して弾力性を失った状態であり、進行すると血管の狭窄(さく)や閉塞を招き、臓器への酸素や栄養分の供給が妨げられる。
第二種衛生管理者|心臓と血液循環の仕組み|肺循環・脈拍・動脈硬化の基礎知識を解説
心臓と血液循環では、血液の流れる経路、動脈血と静脈血の違い、心臓が拍動する仕組みがよく問われます。答えは(1)です。心臓の規則的な拍動は、自律神経の中枢から直接発生した刺激によるものではなく、心臓自身の洞房結節で生じた電気的興奮が刺激伝導系を通って心筋に伝わることで起こります。自律神経は心拍数や拍動の強さを調節しますが、拍動そのものを始める主役ではありません。

(1) 心臓は、自律神経の中枢で発生した刺激が刺激伝導系を介して心筋に伝わることにより、規則正しく収縮と拡張を繰り返す。
不適切です。心臓の拍動を始める刺激は、自律神経の中枢で発生するのではなく、心臓内にある洞房結節で自動的に発生します。洞房結節は心臓のペースメーカーの役割を持ち、そこから発生した電気的興奮が房室結節、ヒス束、脚、プルキンエ線維へと伝わり、心房と心室が順序よく収縮します。自律神経はこの働きを調節する役割です。交感神経は心拍数や収縮力を高め、副交感神経は心拍数を低下させます。つまり、自律神経は心臓の拍動を調整しますが、拍動の刺激を最初に発生させるものではありません。この違いが正誤判断の中心です。
(2) 肺循環により左心房に戻ってきた血液は、左心室を経て大動脈に入る。
適切です。肺循環では、右心室から肺動脈を通って肺へ送られた血液が、肺胞で酸素を取り込み、二酸化炭素を放出して動脈血になります。その後、肺静脈を通って左心房へ戻ります。左心房に戻った血液は左心室へ送られ、左心室の強い収縮によって大動脈へ送り出されます。この大動脈から全身へ血液が運ばれる流れが体循環です。肺循環は右心室から肺を経て左心房へ戻る流れ、体循環は左心室から全身を経て右心房へ戻る流れとして整理すると理解しやすいです。
(3) 大動脈を流れる血液は動脈血であるが、肺動脈を流れる血液は静脈血である。
適切です。動脈血とは酸素を多く含む血液、静脈血とは二酸化炭素を多く含む血液をいいます。大動脈は左心室から全身へ酸素の多い血液を送る血管なので、流れている血液は動脈血です。一方、肺動脈は右心室から肺へ血液を送る血管ですが、ここを流れる血液はまだ肺で酸素を受け取る前の血液であるため静脈血です。血管名に「動脈」と付くかどうかではなく、酸素を多く含むかどうかで動脈血と静脈血を判断する点が重要です。
(4) 心臓の拍動による動脈圧の変動を末梢の動脈で触知したものを脈拍といい、一般に、手首の橈(とう)骨動脈で触知する。
適切です。脈拍は、心臓が血液を送り出すたびに生じる動脈圧の変化を、体表近くの動脈で触れて感じたものです。一般的には手首の親指側にある橈骨動脈で測定します。脈拍は心拍の状態を外から確認する基本的な指標であり、回数、リズム、強さなどを観察します。通常、安静時の成人では1分間におおむね60〜100回程度が目安とされます。衛生管理者試験では、脈拍は心臓の拍動に伴う動脈圧の変動を末梢動脈で触知したもの、と押さえておけば十分対応できます。
(5) 動脈硬化とは、コレステロールの蓄積などにより、動脈壁が肥厚・硬化して弾力性を失った状態であり、進行すると血管の狭窄(さく)や閉塞を招き、臓器への酸素や栄養分の供給が妨げられる。
適切です。動脈硬化は、動脈の内側にコレステロールなどが蓄積し、血管の壁が厚く硬くなって弾力性を失う状態です。血管の内腔が狭くなると血液が流れにくくなり、さらに進行すると血管が詰まることがあります。その結果、心臓や脳などの臓器に酸素や栄養分が十分に届かなくなります。動脈硬化は、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの原因になる重要な病態です。試験では、動脈壁の肥厚、硬化、弾力性低下、狭窄、閉塞という流れを押さえることが大切です。
この問題で覚えるポイント
心臓の拍動は、心臓内の洞房結節で発生した刺激が刺激伝導系を通って心筋に伝わることで起こります。自律神経は心拍数や収縮力を調節する働きであり、拍動の刺激そのものを発生させる主役ではありません。肺循環は右心室から肺動脈を通って肺へ行き、肺静脈を通って左心房へ戻る流れです。体循環は左心室から大動脈を通って全身へ行き、静脈を通って右心房へ戻る流れです。動脈血と静脈血は血管名ではなく、酸素を多く含むかどうかで判断します。大動脈には動脈血が流れ、肺動脈には静脈血が流れます。脈拍は心臓の拍動に伴う動脈圧の変動を末梢動脈で触知したもので、一般に橈骨動脈で測定します。動脈硬化は動脈壁が肥厚、硬化して弾力性を失う状態で、進行すると血管の狭窄や閉塞により臓器への酸素や栄養分の供給が妨げられます。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、心臓の拍動と自律神経の関係を混同させる点です。自律神経が心臓に関係することは正しいため、「自律神経」「刺激伝導系」「心筋」という言葉が並ぶと正しい文章に見えやすくなります。しかし、心臓の拍動を最初に生み出すのは自律神経の中枢ではなく、心臓自身の洞房結節です。自律神経はあくまで速くする、遅くする、強くするなどの調節役です。また、肺動脈には静脈血が流れるという点もよく出る混同ポイントです。「動脈だから動脈血」と考えると誤ります。血管名は心臓から出るか心臓へ戻るかで決まり、動脈血と静脈血は酸素を多く含むかどうかで決まります。この区別を意識すると、血液循環の問題で安定して正誤判断ができます。
