出典:第二種衛生管理者2023年(令和5年度)10月公表問題|労働生理第23問
問題
呼吸に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 呼吸運動は、横隔膜、肋(ろっ)間筋などの呼吸筋が収縮と弛(し)緩をすることにより行われる。
(2) 胸郭内容積が増し、その内圧が低くなるにつれ、鼻腔(くう)、気管などの気道を経て肺内へ流れ込む空気が吸気である。
(3) 肺胞内の空気と肺胞を取り巻く毛細血管中の血液との間で行われるガス交換は、外呼吸である。
(4) 血液中の二酸化炭素濃度が増加すると、呼吸中枢が刺激され、呼吸が速く深くなる。
(5) 呼吸のリズムをコントロールしているのは、間脳の視床下部である。
第二種衛生管理者|呼吸の仕組みと呼吸中枢の役割|外呼吸・吸気・二酸化炭素調節を解説
呼吸は、横隔膜や肋間筋の働きによる換気、肺胞と血液の間で行われる外呼吸、血液中の二酸化炭素濃度による呼吸調節を理解することが重要です。答えは(5)です。呼吸のリズムを主にコントロールしているのは間脳の視床下部ではなく、延髄にある呼吸中枢です。

(1) 呼吸運動は、横隔膜、肋(ろっ)間筋などの呼吸筋が収縮と弛(し)緩をすることにより行われる。
適切です。呼吸運動は、肺そのものが自力で大きく膨らんだり縮んだりするのではなく、横隔膜や肋間筋などの呼吸筋の動きによって胸郭の容積が変化することで行われます。横隔膜が収縮して下がり、肋間筋の働きで胸郭が広がると、胸郭内の圧力が下がり、空気が肺に入ります。反対に、これらの筋肉が弛緩すると胸郭内容積が小さくなり、肺内の空気が外へ出ます。
(2) 胸郭内容積が増し、その内圧が低くなるにつれ、鼻腔(くう)、気管などの気道を経て肺内へ流れ込む空気が吸気である。
適切です。吸気とは、空気を肺内に取り込むことです。胸郭内容積が増えると、胸郭内の圧力が外気圧より低くなります。その圧力差によって、空気は鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支などの気道を通って肺内へ流れ込みます。ここでは、胸郭内容積の増加、内圧の低下、肺内への空気の流入という流れを押さえることが大切です。
(3) 肺胞内の空気と肺胞を取り巻く毛細血管中の血液との間で行われるガス交換は、外呼吸である。
適切です。外呼吸とは、肺胞内の空気と肺胞を取り巻く毛細血管中の血液との間で行われる酸素と二酸化炭素の交換をいいます。肺胞内の酸素は血液中へ移動し、血液中の二酸化炭素は肺胞内へ移動して、呼気として体外へ排出されます。細胞と血液の間で行われるガス交換は内呼吸と呼ばれるため、外呼吸と内呼吸の違いを区別して覚える必要があります。
(4) 血液中の二酸化炭素濃度が増加すると、呼吸中枢が刺激され、呼吸が速く深くなる。
適切です。血液中の二酸化炭素濃度が増えると、体内では二酸化炭素を排出する必要が高まります。その変化を受けて呼吸中枢が刺激され、呼吸数が増えたり、1回の呼吸が深くなったりします。運動時に呼吸が速く深くなるのは、筋肉の活動によって二酸化炭素の産生が増えるためです。呼吸調節では、酸素不足だけでなく、二酸化炭素濃度の増加が重要な刺激になる点がよく問われます。
(5) 呼吸のリズムをコントロールしているのは、間脳の視床下部である。
不適切です。呼吸のリズムを主にコントロールしているのは、間脳の視床下部ではなく、延髄にある呼吸中枢です。延髄の呼吸中枢は、血液中の二酸化炭素濃度などの変化を受けながら、呼吸筋へ指令を送り、呼吸の速さや深さを調節しています。視床下部は体温調節、自律神経系、内分泌機能などに深く関わる部位であり、呼吸リズムの中枢として覚えるのは誤りです。
この問題で覚えるポイント
呼吸運動は、横隔膜と肋間筋などの呼吸筋によって胸郭内容積を変化させることで行われます。吸気では胸郭内容積が増加し、胸郭内圧が低下して、空気が肺内へ流れ込みます。呼気では胸郭内容積が減少し、肺内の空気が外へ出ます。肺胞内の空気と毛細血管中の血液とのガス交換は外呼吸であり、血液と組織細胞とのガス交換は内呼吸です。呼吸の調節では、血液中の二酸化炭素濃度の上昇が呼吸中枢を刺激し、呼吸を速く深くします。呼吸のリズムを主にコントロールする中枢は延髄にあります。視床下部は体温調節や自律神経、内分泌調節に関係する部位であり、呼吸リズムの主中枢ではありません。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、呼吸の説明の中に、脳の部位に関する誤りを混ぜている点です。横隔膜、胸郭内容積、外呼吸、二酸化炭素濃度による呼吸促進は、いずれも基本知識として正しい内容です。そのため、最後の選択肢も流れで正しいと判断してしまいやすくなっています。特に、視床下部は自律神経や体温調節に関係する重要な部位なので、生命維持に関係する呼吸も視床下部が担当しているように感じやすいところが罠です。呼吸中枢は延髄、体温調節は視床下部というように、中枢神経の働きは部位ごとに整理して覚えると、同じパターンの問題にも対応しやすくなります。
