出典:第二種衛生管理者2023年(令和5年度)10月公表問題|労働衛生第16問
問題
労働衛生管理に用いられる統計に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 生体から得られたある指標が正規分布である場合、そのばらつきの程度は、平均値や最頻値によって表される。
(2) 集団を比較する場合、調査の対象とした項目のデータの平均値が等しくても分散が異なっていれば、異なった特徴をもつ集団であると評価される。
(3) 健康管理統計において、ある時点での検査における有所見者の割合を有所見率といい、このようなデータを静態データという。
(4) 健康診断において、対象人数、受診者数などのデータを計数データといい、身長、体重などのデータを計量データという。
(5) ある事象と健康事象との間に、統計上、一方が多いと他方も多いというような相関関係が認められたとしても、それらの間に因果関係があるとは限らない。
第二種衛生管理者|労働衛生統計の基礎|正規分布・静態データ・相関関係を解説
労働衛生統計では、データの中心を表す指標、ばらつきを表す指標、データの種類、相関関係と因果関係の違いを正しく区別することが重要です。答えは(1)です。正規分布におけるばらつきの程度は、平均値や最頻値ではなく、分散や標準偏差によって表されます。平均値や最頻値はデータの中心的な位置を示す代表値であり、ばらつきそのものを表すものではありません。

(1) 生体から得られたある指標が正規分布である場合、そのばらつきの程度は、平均値や最頻値によって表される。
不適切です。その理由は、平均値や最頻値はデータの中心を示す値であり、ばらつきの程度を示す値ではないためです。正規分布では、平均値、中央値、最頻値が一致するという特徴がありますが、これは分布の中心を表しているにすぎません。データがどれくらい広がっているか、つまり個々の測定値が平均値からどの程度離れているかを表すには、分散や標準偏差を用います。たとえば、2つの集団で平均身長が同じでも、片方はほとんどの人が平均付近に集まり、もう片方は低い人と高い人に広く分かれている場合があります。この違いは平均値だけでは判断できず、標準偏差などのばらつきの指標を見る必要があります。
(2) 集団を比較する場合、調査の対象とした項目のデータの平均値が等しくても分散が異なっていれば、異なった特徴をもつ集団であると評価される。
適切です。その理由は、平均値が同じでも、分散が異なればデータの散らばり方が異なるためです。平均値は集団全体の代表的な値を示しますが、集団内の個人差やばらつきまでは示しません。分散が小さい集団はデータが平均値付近に集まりやすく、分散が大きい集団はデータが広い範囲に散らばっていると考えられます。労働衛生管理では、平均値だけを見て安全と判断するのではなく、ばらつきも確認することが大切です。平均値が基準内でも、一部の労働者に高い負荷や異常値が集中している可能性があるためです。
(3) 健康管理統計において、ある時点での検査における有所見者の割合を有所見率といい、このようなデータを静態データという。
適切です。その理由は、ある一時点で集団の状態を把握したデータは静態データに分類されるためです。有所見率とは、健康診断などで何らかの異常所見が認められた人の割合をいいます。たとえば、ある年度の定期健康診断で、受診者100人のうち20人に有所見があれば、有所見率は20%です。このように、一定時点における状態を示す統計は静態データです。これに対して、発生率や死亡率のように、一定期間内に新たに発生した事象を扱うものは動態データとして理解します。
(4) 健康診断において、対象人数、受診者数などのデータを計数データといい、身長、体重などのデータを計量データという。
適切です。その理由は、人数のように数えて得られるデータは計数データであり、身長や体重のように測定して得られる連続的な数値は計量データであるためです。対象人数、受診者数、有所見者数などは、何人いるかを数えるデータです。これに対して、身長、体重、血圧、血糖値などは測定値として得られるデータであり、計量データに分類されます。試験では、計数データと計量データの違いが基本知識として問われやすいため、数えるものか、測るものかで判断すると理解しやすいです。
(5) ある事象と健康事象との間に、統計上、一方が多いと他方も多いというような相関関係が認められたとしても、それらの間に因果関係があるとは限らない。
適切です。その理由は、相関関係は2つの事柄が一緒に変化する傾向を示すだけであり、一方が他方の原因であることまでは証明しないためです。たとえば、ある作業環境と体調不良の発生に関連が見られたとしても、年齢、生活習慣、既往歴、作業時間、他の有害要因などが影響している可能性があります。因果関係を判断するには、時間的な前後関係、他の要因の影響、再現性、医学的な妥当性などを総合的に検討する必要があります。労働衛生では、相関があるから直ちに原因と決めつけるのではなく、慎重に評価する姿勢が重要です。
この問題で覚えるポイント
労働衛生統計では、平均値、中央値、最頻値はデータの中心を表す代表値であり、ばらつきを表す指標ではありません。ばらつきは分散や標準偏差で判断します。正規分布では平均値、中央値、最頻値が一致するという特徴がありますが、分布の広がりは標準偏差で見る点が重要です。平均値が同じ集団でも、分散や標準偏差が異なれば、集団の特徴は異なります。静態データは、ある時点での状態を示すデータであり、有所見率などが該当します。動態データは、一定期間内の発生や変化を示すデータであり、発生率や死亡率などが該当します。計数データは人数や件数のように数えるデータであり、計量データは身長、体重、血圧などのように測定して得られるデータです。相関関係は2つの事象が関連して変動することを示しますが、因果関係を直接証明するものではありません。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、正規分布において平均値、中央値、最頻値が一致するという知識と、ばらつきの指標を混同させる点です。平均値や最頻値は重要な統計指標ですが、役割はあくまで中心の位置を示すことです。ばらつきは標準偏差や分散で判断します。また、平均値が同じなら同じ特徴の集団だと考えてしまうのも典型的な誤りです。統計では、中心とばらつきの両方を見る必要があります。さらに、有所見率のような一時点の割合は静態データ、一定期間の発生を追うものは動態データという区別もよく問われます。相関関係については、関連があるから原因であると決めつけないことが重要です。統計用語は日常感覚で読むと正しく見えてしまう文章が多いため、代表値、ばらつき、データの種類、相関と因果の違いをセットで押さえると安定して正誤判断できます。
