【第二種衛生管理者過去問】2022年10月公表問題|問30|脂肪の消化吸収と脂質代謝|胆汁・脂肪分解酵素の働き|労働生理を解説

出典:第二種衛生管理者2022年(令和4年度)10月公表問題|労働生理第30問

問題

脂肪の分解・吸収及び脂質の代謝に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 胆汁は、アルカリ性で、消化酵素は含まないが、食物中の脂肪を乳化させ、脂肪分解の働きを助ける。

(2) 脂肪は、膵(すい)臓から分泌される消化酵素である膵アミラーゼにより脂肪酸とグリセリンに分解され、小腸の絨(じゅう)毛から吸収される。

(3) 肝臓は、過剰な蛋白質及び糖質を中性脂肪に変換する。

(4) コレステロールやリン脂質は、神経組織の構成成分となる。

(5) 脂質は、糖質や蛋白質に比べて多くのATPを産生することができるので、エネルギー源として優れている。

 

 

 

第二種衛生管理者|脂肪の消化吸収と脂質代謝を解説

脂肪の消化吸収では、胆汁による乳化と、膵臓から分泌されるリパーゼによる分解を区別することが重要です。答えは(2)です。脂肪を分解する主な消化酵素は膵アミラーゼではなく膵リパーゼであり、膵アミラーゼは主にでんぷんなどの糖質を分解する酵素です。

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(1) 胆汁は、アルカリ性で、消化酵素は含まないが、食物中の脂肪を乳化させ、脂肪分解の働きを助ける。

適切です。胆汁は肝臓でつくられ、胆のうに一時的に蓄えられた後、十二指腸へ分泌されます。胆汁そのものには脂肪を化学的に分解する消化酵素は含まれていません。しかし、胆汁に含まれる胆汁酸などには、脂肪を細かい粒に分散させる乳化作用があります。脂肪は水に溶けにくいため、そのままでは消化酵素が作用しにくい性質があります。胆汁によって脂肪が細かく乳化されると、消化酵素が接触できる表面積が広がり、脂肪分解が進みやすくなります。

(2) 脂肪は、膵(すい)臓から分泌される消化酵素である膵アミラーゼにより脂肪酸とグリセリンに分解され、小腸の絨(じゅう)毛から吸収される。

不適切です。脂肪を脂肪酸とグリセリンなどに分解する主な消化酵素は、膵アミラーゼではなく膵リパーゼです。膵アミラーゼは、でんぷんなどの炭水化物を分解する酵素です。ここでは「膵臓から分泌される消化酵素」という部分は正しいのですが、酵素名が誤っています。脂肪は胆汁によって乳化された後、主に膵リパーゼの働きで分解され、小腸の絨毛から吸収されます。試験では、アミラーゼ、リパーゼ、ペプシン、トリプシンなどの酵素名と分解対象の組合せがよく問われます。

(3) 肝臓は、過剰な蛋白質及び糖質を中性脂肪に変換する。

適切です。肝臓は栄養素の代謝に深く関わる臓器です。体内で使い切れなかった糖質や、必要量を超えた蛋白質由来の成分は、代謝を受けて中性脂肪として蓄えられることがあります。糖質や蛋白質は、それぞれ本来の役割がありますが、過剰に摂取されるとエネルギー貯蔵の形である脂肪に変換される場合があります。肝臓はこのような栄養素の変換、貯蔵、調整を行う重要な器官です。

(4) コレステロールやリン脂質は、神経組織の構成成分となる。

適切です。コレステロールやリン脂質は、単に悪いものとして扱われるものではなく、細胞膜や神経組織を構成する重要な脂質です。特に神経細胞では、情報伝達を効率よく行うために脂質を含む構造が重要です。リン脂質は細胞膜の主要な構成成分であり、コレステロールも膜の安定性に関与します。脂質はエネルギー源としてだけでなく、体の構造をつくる材料としても重要です。

(5) 脂質は、糖質や蛋白質に比べて多くのATPを産生することができるので、エネルギー源として優れている。

適切です。脂質は、糖質や蛋白質に比べて単位量あたりのエネルギー量が大きい栄養素です。一般に、糖質と蛋白質は1gあたり約4kcal、脂質は1gあたり約9kcalのエネルギーを持ちます。そのため、脂質は体内で効率のよいエネルギー貯蔵物質として利用されます。ATPは細胞が活動するためのエネルギー通貨のようなものであり、脂質は分解されることで多くのATP産生につながります。

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この問題で覚えるポイント

脂肪の消化では、胆汁は消化酵素を含まず、脂肪を乳化して分解を助ける働きをします。実際に脂肪を分解する主な酵素は膵リパーゼです。膵アミラーゼは糖質を分解する酵素であり、脂肪分解酵素ではありません。消化酵素の基本対応として、アミラーゼはでんぷんなどの糖質、リパーゼは脂肪、ペプシンやトリプシンは蛋白質に関係します。脂質は1gあたり約9kcalで、糖質や蛋白質の約4kcalよりもエネルギー量が大きい栄養素です。また、脂質はエネルギー源になるだけでなく、コレステロールやリン脂質として細胞膜や神経組織の構成成分にもなります。肝臓は脂質代謝にも関与し、過剰な糖質や蛋白質を中性脂肪に変換する働きがあります。

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ひっかけポイント

この問題の最大のひっかけは、「膵臓から分泌される消化酵素」という正しい表現に続けて、「膵アミラーゼ」という誤った酵素名を入れている点です。膵アミラーゼも実在する消化酵素なので、見慣れた言葉に安心してしまうと誤答しやすくなります。正誤判断では、酵素が存在するかどうかではなく、何を分解する酵素なのかまで確認する必要があります。また、胆汁は脂肪の消化に関係しますが、消化酵素ではありません。胆汁は脂肪を直接分解するのではなく、乳化によってリパーゼが働きやすい状態をつくります。「脂肪に関係するものはすべて脂肪を分解する」と考えると引っかかります。脂肪の消化では、胆汁は乳化、リパーゼは分解、と役割を分けて覚えることが重要です。

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