出典:第二種衛生管理者2022年(令和4年度)10月公表問題|労働衛生第19問
問題
労働衛生管理に用いられる統計に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) ある事象と健康事象との間に、統計上、一方が多いと他方も多いというような相関関係が認められたとしても、それらの間に因果関係があるとは限らない。
(2) 集団を比較する場合、調査の対象とした項目のデータの平均値が等しくても分散が異なっていれば、異なった特徴をもつ集団であると評価される。
(3) 健康管理統計において、ある時点での検査における有所見者の割合を有所見率といい、一定期間において有所見とされた人の割合を発生率という。
(4) 生体から得られたある指標が正規分布である場合、そのばらつきの程度は、平均値や最頻値によって表される。
(5) 静態データとは、ある時点の集団に関するデータであり、動態データとは、ある期間の集団に関するデータである。
第二種衛生管理者|労働衛生管理統計の基礎知識を解説
労働衛生管理統計では、有所見率、発生率、静態データ、動態データ、平均値、分散、標準偏差、相関関係と因果関係の違いが問われます。答えは(4)です。正規分布におけるばらつきの程度は、平均値や最頻値ではなく、分散や標準偏差によって表されます。平均値や最頻値はデータの中心的な位置を示す代表値であり、データがどのくらい散らばっているかを示す指標ではありません。

(1) ある事象と健康事象との間に、統計上、一方が多いと他方も多いというような相関関係が認められたとしても、それらの間に因果関係があるとは限らない。
適切です。相関関係とは、二つの事柄が一緒に増えたり減ったりするような関係をいいます。ただし、相関があるからといって、一方がもう一方の原因であるとは限りません。たとえば、ある作業環境で体調不良者が多いという統計が出た場合でも、その原因が作業環境そのものなのか、年齢構成、生活習慣、勤務時間、既往歴など別の要因なのかは、さらに詳しく調べる必要があります。労働衛生では、統計結果をそのまま原因と決めつけず、作業条件や個人要因なども含めて慎重に判断することが大切です。
(2) 集団を比較する場合、調査の対象とした項目のデータの平均値が等しくても分散が異なっていれば、異なった特徴をもつ集団であると評価される。
適切です。平均値はデータ全体の中心を示しますが、集団の特徴を完全に表すものではありません。平均値が同じでも、全員が平均値に近い集団と、極端に高い人や低い人が多い集団では、健康管理上の意味が異なります。この違いを表すのが分散や標準偏差です。分散が大きいほどデータのばらつきが大きく、個人差が大きい集団といえます。健康診断結果などを評価するときは、平均値だけでなく、ばらつきも見る必要があります。
(3) 健康管理統計において、ある時点での検査における有所見者の割合を有所見率といい、一定期間において有所見とされた人の割合を発生率という。
適切です。有所見率は、健康診断などのある時点において、検査結果に異常所見が認められた人の割合を示します。これは、その時点でどれくらいの人に所見があるかを見る指標です。発生率は、一定期間中に新たに所見や疾病が発生した人の割合を示します。つまり、有所見率はある時点の状態を表し、発生率は一定期間における新たな発生の状況を表します。この違いは、静態データと動態データの理解にもつながります。
(4) 生体から得られたある指標が正規分布である場合、そのばらつきの程度は、平均値や最頻値によって表される。
不適切です。正規分布において、ばらつきの程度を表す代表的な指標は分散や標準偏差です。平均値はデータの中心を示す値であり、最頻値は最も多く出現する値を示します。どちらもデータの中心や代表的な位置を示すもので、ばらつきの大きさを示すものではありません。たとえば、二つの集団の平均血圧が同じでも、一方はほとんどの人が平均付近に集まり、もう一方は高い人と低い人に大きく分かれている場合があります。この違いは平均値だけでは分からず、分散や標準偏差を見ることで判断できます。
(5) 静態データとは、ある時点の集団に関するデータであり、動態データとは、ある期間の集団に関するデータである。
適切です。静態データは、ある時点における集団の状態を示すデータです。健康診断時点での有所見率や、ある時点での労働者数などが該当します。動態データは、一定期間における変化や発生状況を示すデータです。一定期間中の疾病発生率、休業件数、労働災害発生件数などが該当します。試験では、ある時点を見るのか、一定期間の動きを見るのかを区別することが重要です。
この問題で覚えるポイント
労働衛生管理統計では、平均値はデータの中心を示す代表値であり、ばらつきは分散や標準偏差で表します。最頻値は最も多く出現する値であり、ばらつきの指標ではありません。有所見率は、ある時点で検査を受けた集団のうち、異常所見がある人の割合です。発生率は、一定期間中に新たに疾病や有所見が発生した人の割合です。静態データはある時点の状態を示し、動態データは一定期間の変化や発生を示します。相関関係は二つの事象が関連して動く関係ですが、因果関係とは限りません。統計問題では、中心を示す指標とばらつきを示す指標、ある時点のデータと一定期間のデータを区別することが正誤判断に直結します。
ひっかけポイント
この問題の大きなひっかけは、平均値や最頻値を「代表的な値」として知っているため、ばらつきも表せるように感じてしまう点です。平均値は集団の中心を示すだけで、データがどの程度散らばっているかは分かりません。ばらつきは分散や標準偏差で判断します。また、有所見率と発生率、静態データと動態データも混同しやすい用語です。ある時点の割合なのか、一定期間に新たに起きた割合なのかを読み分けることが重要です。さらに、相関関係があると原因と結果の関係まであるように思いやすいですが、統計上の関連と因果関係は別物です。この分野では、似た言葉を雰囲気で判断せず、何を測っている指標なのかを丁寧に確認する姿勢が得点につながります。
