出典:第二種衛生管理者2021年(令和3年度)10月公表問題|関係法令第3問
問題
産業医に関する次の記述のうち、法令上、誤っているものはどれか。
(1) 産業医を選任した事業者は、産業医に対し、労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるものを提供しなければならない。
(2) 産業医を選任した事業者は、その事業場における産業医の業務の具体的な内容、産業医に対する健康相談の申出の方法、産業医による労働者の心身の状態に関する情報の取扱いの方法を、常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付ける等の方法により、労働者に周知させなければならない。
(3) 産業医は、衛生委員会に対して労働者の健康を確保する観点から必要な調査審議を求めることができる。
(4) 産業医は、衛生委員会を開催した都度作成する議事概要を、毎月1回以上、事業者から提供されている場合には、作業場等の巡視の頻度を、毎月1回以上から2か月に1回以上にすることができる。
(5) 事業者は、産業医から労働者の健康管理等について勧告を受けたときは、当該勧告の内容及び当該勧告を踏まえて講じた措置の内容(措置を講じない場合にあっては、その旨及びその理由)を記録し、これを3年間保存しなければならない。
第二種衛生管理者|産業医の職務と事業者の義務を解説
産業医は、労働者の健康管理について医学的立場から助言、指導、勧告を行う専門職です。答えは(4)です。産業医の職場巡視は原則として毎月1回以上ですが、一定の情報が毎月提供され、事業者の同意がある場合には、2か月に1回以上にすることができます。ただし、提供されるべき情報は衛生委員会の議事概要だけでは足りません。長時間労働者に関する情報など、産業医が健康管理を行うために必要な情報が含まれる必要があるため、(4)は不適切です。

(1) 産業医を選任した事業者は、産業医に対し、労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるものを提供しなければならない。
適切です。産業医が労働者の健康管理を適切に行うためには、単に健康診断結果を見るだけでは不十分です。労働時間、作業内容、作業環境、業務上の負荷、長時間労働の状況など、健康に影響する業務情報を把握する必要があります。そのため、事業者には、産業医が必要と認める労働者の業務に関する情報を提供する義務があります。産業医は医学的な専門家ですが、職場の実態を知らなければ、実効性のある助言や勧告を行うことができません。
(2) 産業医を選任した事業者は、その事業場における産業医の業務の具体的な内容、産業医に対する健康相談の申出の方法、産業医による労働者の心身の状態に関する情報の取扱いの方法を、常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付ける等の方法により、労働者に周知させなければならない。
適切です。産業医を選任していても、労働者が産業医に相談できることを知らなければ、制度は十分に機能しません。そのため、事業者は、産業医がどのような業務を行うのか、健康相談をどのように申し出ればよいのか、相談内容や心身の状態に関する情報がどのように取り扱われるのかを、労働者に周知する必要があります。特に健康情報は個人情報として慎重に扱われるため、情報の取扱い方法を明らかにすることは、労働者が安心して相談するためにも重要です。
(3) 産業医は、衛生委員会に対して労働者の健康を確保する観点から必要な調査審議を求めることができる。
適切です。衛生委員会は、労働者の健康障害防止、健康の保持増進、衛生教育などについて調査審議する場です。産業医は、医学的な専門知識を持つ立場から、必要があると判断した場合に、衛生委員会に対して調査審議を求めることができます。これは、産業医が単に健康診断結果を確認するだけの存在ではなく、職場の衛生管理に積極的に関与する役割を持つことを示しています。
(4) 産業医は、衛生委員会を開催した都度作成する議事概要を、毎月1回以上、事業者から提供されている場合には、作業場等の巡視の頻度を、毎月1回以上から2か月に1回以上にすることができる。
不適切です。産業医の作業場等の巡視は、原則として毎月1回以上行う必要があります。ただし、事業者から産業医に対して所定の情報が毎月1回以上提供され、事業者の同意がある場合には、巡視の頻度を2か月に1回以上にすることができます。ここで重要なのは、提供される情報が衛生委員会の議事概要だけでは足りないという点です。産業医が健康管理を適切に行うために必要な情報、たとえば長時間労働者の状況や労働者の業務に関する情報なども含まれます。選択肢は、議事概要の提供だけで巡視頻度を減らせるように述べているため、法令上誤りです。
(5) 事業者は、産業医から労働者の健康管理等について勧告を受けたときは、当該勧告の内容及び当該勧告を踏まえて講じた措置の内容(措置を講じない場合にあっては、その旨及びその理由)を記録し、これを3年間保存しなければならない。
適切です。産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対して勧告することができます。事業者は勧告を受けた場合、その内容と、勧告を踏まえて実際に講じた措置を記録し、3年間保存しなければなりません。もし措置を講じない場合でも、その旨と理由を記録する必要があります。これは、産業医の勧告を形だけで終わらせず、事業者がどのように対応したかを明確にするためのルールです。
この問題で覚えるポイント
産業医を選任する事業場では、産業医が労働者の健康管理を適切に行えるよう、事業者は必要な情報を提供しなければなりません。産業医の作業場等の巡視は原則として毎月1回以上ですが、所定の情報が毎月1回以上提供され、事業者の同意がある場合には、2か月に1回以上にすることができます。ここでいう所定の情報は、衛生委員会の議事概要だけではなく、労働者の業務に関する情報や長時間労働者の状況など、健康管理に必要な情報を含む点が重要です。また、産業医は衛生委員会に必要な調査審議を求めることができ、事業者は産業医の業務内容、健康相談の申出方法、健康情報の取扱い方法を労働者に周知しなければなりません。産業医から勧告を受けた場合、事業者は勧告内容と対応内容を記録し、3年間保存する必要があります。
ひっかけポイント
この問題の大きなひっかけは、産業医の巡視頻度を2か月に1回以上にできる条件を、衛生委員会の議事概要の提供だけで満たせるように見せている点です。議事概要は産業医に提供される情報の一部として重要ですが、それだけで巡視頻度を減らせるわけではありません。試験では、「毎月1回以上」「2か月に1回以上」「3年間保存」などの数値だけを暗記している受験者が、条件部分の不足を見落としやすくなります。また、産業医に関する問題では、産業医の権限と事業者の義務が混在して出題されます。誰が行う義務なのか、どの情報が必要なのか、どの条件がそろうと例外が認められるのかを分けて判断することが正答につながります。
