出典:第二種衛生管理者2021年(令和3年度)10月公表問題|労働衛生第20問
問題
厚生労働省の「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) この指針は、労働安全衛生法の規定に基づき機械、設備、化学物質等による危険又は健康障害を防止するため事業者が講ずべき具体的な措置を定めるものではない。
(2) このシステムは、生産管理等事業実施に係る管理と一体となって運用されるものである。
(3) このシステムでは、事業者は、事業場における安全衛生水準の向上を図るための安全衛生に関する基本的考え方を示すものとして、安全衛生方針を表明し、労働者及び関係請負人その他の関係者に周知させる。
(4) このシステムでは、事業者は、安全衛生方針に基づき設定した安全衛生目標を達成するため、事業場における危険性又は有害性等の調査の結果等に基づき、一定の期間を限り、安全衛生計画を作成する。
(5) 事業者は、このシステムに従って行う措置が適切に実施されているかどうかについて調査及び評価を行うため、外部の機関による監査を受けなければならない。
第二種衛生管理者|労働安全衛生マネジメントシステム指針を解説
労働安全衛生マネジメントシステムは、事業場の安全衛生水準を継続的に向上させるために、安全衛生方針、安全衛生目標、安全衛生計画、実施、評価、改善を一連の仕組みとして運用するものです。答えは(5)です。OSHMSでは、実施状況について監査を行うことは重要ですが、必ず外部機関による監査を受けなければならないとはされていません。内部監査などを含め、システムが適切に機能しているかを確認し、改善につなげることが求められます。

(1) この指針は、労働安全衛生法の規定に基づき機械、設備、化学物質等による危険又は健康障害を防止するため事業者が講ずべき具体的な措置を定めるものではない。
適切です。この指針は、個別の機械設備や化学物質について、具体的にどのような防止措置を講じるかを定めたものではありません。OSHMSは、安全衛生活動を計画的、継続的に進めるための管理の仕組みを示すものです。つまり、個別の危険防止基準そのものではなく、方針を立て、目標を設定し、計画を作り、実施し、評価し、改善するという管理方法を定めた指針です。
(2) このシステムは、生産管理等事業実施に係る管理と一体となって運用されるものである。
適切です。労働安全衛生マネジメントシステムは、安全衛生だけを独立した活動として扱うのではなく、生産管理、品質管理、人員配置、作業手順など、事業運営に関する管理と一体的に運用することが重要です。安全衛生は現場の作業方法や設備管理と深く関係するため、通常の業務管理から切り離して考えると実効性が弱くなります。事業活動の中に安全衛生を組み込むことが、OSHMSの基本的な考え方です。
(3) このシステムでは、事業者は、事業場における安全衛生水準の向上を図るための安全衛生に関する基本的考え方を示すものとして、安全衛生方針を表明し、労働者及び関係請負人その他の関係者に周知させる。
適切です。安全衛生方針は、事業者が安全衛生についてどのような姿勢で取り組むのかを明らかにする基本方針です。方針を表明するだけでなく、労働者や関係請負人など、事業場の安全衛生に関係する人に周知する必要があります。特に請負人が関係する現場では、自社の労働者だけでなく、関係者全体で安全衛生の考え方を共有することが重要です。
(4) このシステムでは、事業者は、安全衛生方針に基づき設定した安全衛生目標を達成するため、事業場における危険性又は有害性等の調査の結果等に基づき、一定の期間を限り、安全衛生計画を作成する。
適切です。安全衛生計画は、安全衛生方針と安全衛生目標を具体的な行動に落とし込むための計画です。作成に当たっては、危険性又は有害性等の調査、つまりリスクアセスメントの結果などを踏まえることが重要です。また、計画は無期限に作るものではなく、一定期間を定めて作成し、実施状況を確認しながら改善していきます。これは、計画、実施、評価、改善という継続的改善の考え方に沿っています。
(5) 事業者は、このシステムに従って行う措置が適切に実施されているかどうかについて調査及び評価を行うため、外部の機関による監査を受けなければならない。
不適切です。OSHMSでは、システムに従って行う措置が適切に実施されているかを調査し、評価することは必要です。しかし、必ず外部の機関による監査を受けなければならないわけではありません。監査は、システムの運用状況を確認し、問題点を見つけ、改善につなげるために行われますが、外部機関による監査が法的に義務づけられているという内容ではありません。「監査が必要」という点は正しいものの、「外部の機関による監査を受けなければならない」と限定している点が誤りです。
この問題で覚えるポイント
労働安全衛生マネジメントシステム、つまりOSHMSは、事業場の安全衛生水準を継続的に向上させるための管理の仕組みです。個別の機械、設備、化学物質についての具体的な防止措置を定めるものではなく、安全衛生方針の表明、安全衛生目標の設定、安全衛生計画の作成、計画の実施、実施状況の評価、改善という流れで運用されます。安全衛生方針は、事業者の基本的考え方を示すものであり、労働者だけでなく関係請負人その他の関係者にも周知する必要があります。安全衛生計画は、危険性又は有害性等の調査結果などに基づいて、一定期間を定めて作成します。OSHMSは安全衛生活動だけを独立させるのではなく、生産管理など事業実施に係る管理と一体となって運用される点も重要です。監査や評価は改善のために行いますが、必ず外部機関による監査を受ける義務があるわけではありません。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「監査」という正しい言葉に「外部の機関による」「受けなければならない」という強い条件を付けている点です。安全衛生マネジメントシステムでは、実施状況を確認し評価することは大切ですが、それが直ちに外部監査の義務を意味するわけではありません。試験では、一部だけ正しい文章に義務や限定の表現を加えて誤りにするパターンがよく出ます。「必要である」「重要である」と「法令上必ずしなければならない」は意味が異なります。OSHMSは個別の安全対策そのものではなく、安全衛生活動を継続的に改善するための仕組みであることを押さえると、似た問題でも判断しやすくなります。
