出典:第一種衛生管理者2025年(令和7年度)4月公表問題|労働生理第43問
問題
ストレスに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 個人にとって適度なストレッサーは、身体的には活動の亢(こう)進を、心理的には意欲の向上、満足感、充実感などを生じさせる。
(2) 個人の能力や感性に適合しないストレッサーは、心理的には不安、焦燥感、抑うつ感などを、身体的には疲労を生じることがある。
(3) 典型的なストレス反応として、副腎皮質ホルモンの分泌の著しい減少がある。
(4) ストレスにより、高血圧症、狭心症、十二指腸潰瘍などの疾患が生じることがある。
(5) 昇進、転勤、配置替えなどがストレスの原因となることがある。
第1種衛生管理者|ストレス反応と健康への影響を解説
ストレスは、必ずしも悪いものだけではなく、適度であれば意欲や活動性を高めることがあります。ただし、本人の能力や感性に合わない強すぎるストレッサーは、心理面や身体面に悪影響を及ぼします。答えは(3)です。典型的なストレス反応では、副腎皮質ホルモンの分泌は著しく減少するのではなく、一般に増加します。

(1) 個人にとって適度なストレッサーは、身体的には活動の亢(こう)進を、心理的には意欲の向上、満足感、充実感などを生じさせる。
適切です。その理由は、ストレッサーが適度な範囲であれば、心身を活性化させる刺激として働くためです。たとえば、試験前の適度な緊張や仕事上の適度な責任感は、集中力や意欲を高めることがあります。ストレスという言葉は悪い意味で使われがちですが、労働生理では、適度なストレスは活動性や充実感につながる場合があると理解することが大切です。
(2) 個人の能力や感性に適合しないストレッサーは、心理的には不安、焦燥感、抑うつ感などを、身体的には疲労を生じることがある。
適切です。その理由は、ストレッサーが本人の処理能力や価値観、性格、経験などに合わない場合、心身に過度の負担がかかるためです。心理的には、不安、焦り、気分の落ち込みなどが現れやすくなります。身体的には、疲労感、睡眠障害、頭痛、胃腸症状などにつながることがあります。同じ出来事でも、人によってストレスの感じ方が異なる点も重要です。
(3) 典型的なストレス反応として、副腎皮質ホルモンの分泌の著しい減少がある。
不適切です。その理由は、典型的なストレス反応では、副腎皮質ホルモンの分泌は減少ではなく増加するためです。ストレスを受けると、視床下部、下垂体、副腎皮質の系が働き、副腎皮質からコルチゾールなどのホルモンが分泌されます。これにより、身体はストレスに対応しようとします。試験では、「副腎皮質ホルモンが減少する」と書かれていたら誤りと判断するのが基本です。
(4) ストレスにより、高血圧症、狭心症、十二指腸潰瘍などの疾患が生じることがある。
適切です。その理由は、強いストレスや長期間続くストレスは、自律神経系や内分泌系に影響し、循環器系や消化器系の疾患に関与することがあるためです。ストレスにより交感神経の働きが高まると、血圧上昇や心臓への負担が起こりやすくなります。また、胃や十二指腸の粘膜防御機能に影響し、潰瘍の発症や悪化に関係することもあります。
(5) 昇進、転勤、配置替えなどがストレスの原因となることがある。
適切です。その理由は、職場環境や役割の変化は、たとえ一般的に良い出来事とされる場合でも、本人にとって負担となることがあるためです。昇進は責任の増加、転勤は生活環境や人間関係の変化、配置替えは業務内容の変化を伴います。ストレスの原因は、嫌な出来事だけでなく、環境変化そのものでもある点を押さえておきましょう。
この問題で覚えるポイント
ストレスとは、外部からの刺激であるストレッサーに対して心身に生じる反応です。適度なストレスは、意欲、集中力、満足感、充実感を高めることがありますが、過度なストレスや本人に適合しないストレッサーは、不安、焦燥感、抑うつ感、疲労などを生じさせます。典型的なストレス反応では、交感神経系や内分泌系が働き、副腎皮質ホルモンの分泌が増加します。ストレスは、高血圧症、狭心症、十二指腸潰瘍などの心身症や身体疾患に関係することがあります。また、昇進、転勤、配置替えのような職場上の変化もストレスの原因になります。試験では、「ストレスは悪いものだけではない」「副腎皮質ホルモンは減少ではなく増加」「良い出来事でもストレス原因になり得る」という3点を押さえると正誤判断しやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、ストレスという言葉のイメージだけで判断させようとしている点です。日常的にはストレスを悪いものと考えがちですが、労働生理では、適度なストレスは活動性や意欲を高めるものとして扱われます。また、副腎皮質ホルモンについては、「ストレスで身体が弱るならホルモンも減る」と考えると誤答しやすくなります。実際には、ストレスに対応するために副腎皮質ホルモンの分泌は増加します。さらに、昇進のように一見よい出来事でも、責任や環境変化が伴えばストレスの原因になります。ストレス問題では、良い悪いの印象ではなく、心身の反応とホルモン分泌の方向を正確に押さえることが大切です。
