出典:第一種衛生管理者2024年(令和6年度)10月公表問題|関係法令(有害業務に係るもの)第5問
問題
有機溶剤中毒予防規則に定める有機溶剤業務に該当しないものは次のうちどれか。
(1) 接着のためにする有機溶剤等の塗布の業務
(2) 有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務
(3) 有機溶剤含有物を用いて行う印刷の業務
(4) 有機溶剤含有物を用いて行う文字の書込み又は描画の業務
(5) 有機溶剤含有物で塗装した建築物又は工作物の解体若しくは破砕の業務
第1種衛生管理者|有機溶剤中毒予防規則の有機溶剤業務の範囲を解説
有機溶剤中毒予防規則では、有機溶剤等を使用して塗布、乾燥、印刷、文字の書込み、描画などを行う業務が、有機溶剤業務として規制の対象になります。答えは(5)です。有機溶剤含有物で塗装した建築物又は工作物を解体、破砕する業務は、有機溶剤等を用いて行う塗布や印刷などの業務ではなく、有機溶剤業務には該当しません。ここでは「有機溶剤を使って作業しているのか」と「過去に有機溶剤含有物で塗装されたものを壊しているのか」を区別することが重要です。
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(1) 接着のためにする有機溶剤等の塗布の業務
不適切です。接着のために有機溶剤等を塗布する業務は、有機溶剤中毒予防規則に定める有機溶剤業務に該当します。接着剤には有機溶剤を含むものがあり、塗布作業中に有機溶剤蒸気が発散することがあります。これを吸入すると、中枢神経への影響、頭痛、めまい、吐き気などの急性症状や、長期ばく露による健康障害につながるおそれがあります。そのため、接着のための塗布作業は、有機溶剤ばく露の可能性がある代表的な業務として規制対象になります。
(2) 有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務
不適切です。有機溶剤等が付着している物を乾燥させる業務も、有機溶剤業務に該当します。乾燥中には、付着している有機溶剤が蒸発し、作業場の空気中に有機溶剤蒸気が発散するおそれがあります。作業者が直接塗っていなくても、乾燥工程で蒸気を吸入する危険があるため、規則の対象となります。有機溶剤業務は、実際に塗る作業だけでなく、蒸発や発散が起こる工程も含むと理解しておくとよいです。
(3) 有機溶剤含有物を用いて行う印刷の業務
不適切です。有機溶剤含有物を用いて行う印刷の業務は、有機溶剤業務に該当します。印刷インキや洗浄剤などには有機溶剤を含むものがあり、印刷作業中や乾燥過程で有機溶剤蒸気が発散することがあります。印刷作業では、作業者が継続的に有機溶剤蒸気にばく露する可能性があるため、換気、局所排気装置、保護具、作業環境管理などが重要になります。印刷は、有機溶剤業務としてよく出題される典型例です。
(4) 有機溶剤含有物を用いて行う文字の書込み又は描画の業務
不適切です。有機溶剤含有物を用いて文字を書いたり、描画したりする業務も、有機溶剤業務に該当します。塗料、インキ、マーカー、描画材料などに有機溶剤が含まれる場合、作業中に有機溶剤蒸気が発散することがあります。作業規模が小さく見えても、継続して行われる業務であればばく露の可能性があるため、規制対象となります。試験では、塗装や印刷だけでなく、文字の書込みや描画も有機溶剤業務に含まれる点を押さえることが大切です。
(5) 有機溶剤含有物で塗装した建築物又は工作物の解体若しくは破砕の業務
適切です。有機溶剤含有物で塗装された建築物や工作物を解体、破砕する業務は、有機溶剤中毒予防規則に定める有機溶剤業務には該当しません。有機溶剤業務は、有機溶剤等または有機溶剤含有物を用いて、塗布、印刷、書込み、描画、洗浄、乾燥などを行い、有機溶剤蒸気へのばく露が問題となる業務を対象とします。過去に有機溶剤含有物で塗装されたものを解体、破砕する作業は、粉じんや塗膜中の有害物質など別のリスクが問題になる場合はありますが、有機溶剤業務そのものではありません。
この問題で覚えるポイント
有機溶剤業務に該当するかどうかは、有機溶剤等または有機溶剤含有物を用いて作業を行い、有機溶剤蒸気が発散するおそれがあるかで考えると整理しやすいです。接着のための塗布、塗装、印刷、文字の書込み、描画、洗浄、払拭、乾燥などは、有機溶剤業務として出題されやすい代表例です。直接塗る作業だけでなく、有機溶剤等が付着している物を乾燥する業務も、蒸発によって有機溶剤蒸気が発生するため対象になります。有機溶剤含有物を用いて行う印刷や描画も対象です。これに対して、有機溶剤含有物で過去に塗装された建築物や工作物を解体、破砕する業務は、有機溶剤等を用いる作業ではないため、有機溶剤業務には該当しません。試験では「使用している作業」と「使用済み・塗装済みのものを壊す作業」の違いを押さえることが正答につながります。
ひっかけポイント
この問題では、「有機溶剤含有物で塗装した」という言葉に引っ張られて、解体や破砕の業務まで有機溶剤業務だと判断させる狙いがあります。有機溶剤という語が入っていると、すべて規則の対象に見えますが、有機溶剤業務は主に有機溶剤等を使用し、その蒸気にばく露する作業を対象にしています。塗装されたものを壊す作業では、粉じんや塗膜成分の問題はあり得ますが、有機溶剤等を塗布したり、乾燥させたり、印刷したりする業務とは性質が異なります。また、乾燥作業は一見すると有機溶剤を直接扱っていないように見えますが、蒸気が発散するため対象になります。法令問題では、用語に有機溶剤が含まれるかだけでなく、作業の中で有機溶剤等を用いているのか、有機溶剤蒸気が発散する工程なのかを確認することが大切です。
