出典:第一種衛生管理者2023年(令和5年度)10月公表問題|労働衛生(有害業務に係るもの)第20問
問題
有害化学物質とその生物学的モニタリング指標として用いられる尿中の代謝物との組合せとして、正しいものは次のうちどれか。
(1) トルエン ========== トリクロロ酢酸
(2) キシレン==========メチル馬尿酸
(3) スチレン===========馬尿酸
(4) N,N−ジメチルホルムアミド ===デルタ−アミノレブリン酸
(5) 鉛==============マンデル酸
第1種衛生管理者|生物学的モニタリングと有害化学物質の尿中代謝物を解説
有害化学物質にばく露された場合、体内で代謝されて尿中に排出される物質を測定することで、体内への取り込み量を評価できます。答えは(2)です。キシレンは体内で主にメチル馬尿酸に代謝され、尿中メチル馬尿酸が生物学的モニタリング指標として用いられます。トルエン、スチレン、N,N−ジメチルホルムアミド、鉛にもそれぞれ代表的な指標がありますが、組合せを入れ替えて出題されやすいので、物質名と代謝物名をセットで覚えることが大切です。
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(1) トルエン ========== トリクロロ酢酸
不適切です。トルエンの代表的な尿中代謝物は馬尿酸です。トリクロロ酢酸は、トリクロロエチレンなどの塩素系有機溶剤の代謝物として出題されることが多い物質です。トルエンは芳香族炭化水素であり、体内で酸化されて安息香酸となり、さらにグリシンと抱合して馬尿酸として尿中に排出されます。名称が似ている代謝物を入れ替える問題が多いため、トルエンは馬尿酸と覚えると判断しやすくなります。
(2) キシレン==========メチル馬尿酸
適切です。キシレンは体内で酸化され、主にメチル馬尿酸として尿中に排出されます。そのため、尿中メチル馬尿酸はキシレンばく露の生物学的モニタリング指標として用いられます。トルエンの馬尿酸に「メチル」が付いたものがキシレンの指標と整理すると覚えやすいです。キシレンにはメチル基があるため、代謝物もメチル馬尿酸になると関連づけると、単なる丸暗記より記憶に残りやすくなります。
(3) スチレン===========馬尿酸
不適切です。スチレンの代表的な尿中代謝物は、マンデル酸やフェニルグリオキシル酸です。馬尿酸はトルエンの代謝物として覚えるべき指標です。スチレンは体内で代謝されると、マンデル酸などとして尿中に排出されます。芳香族系の有機溶剤は名前も代謝物も似ているため混同しやすいですが、スチレンはマンデル酸、トルエンは馬尿酸と区別して覚えることが重要です。
(4) N,N−ジメチルホルムアミド ===デルタ−アミノレブリン酸
不適切です。N,N−ジメチルホルムアミドの生物学的モニタリング指標として用いられる尿中代謝物は、N−メチルホルムアミドです。デルタ−アミノレブリン酸は、鉛ばく露に関連して出題される指標です。N,N−ジメチルホルムアミドは肝障害を起こしやすい有機溶剤としても重要で、代謝物名にもホルムアミドが残る点を意識すると覚えやすくなります。
(5) 鉛==============マンデル酸
不適切です。鉛のばく露に関連する指標として重要なのは、尿中デルタ−アミノレブリン酸などです。マンデル酸はスチレンの代謝物として用いられます。鉛はヘム合成を阻害するため、デルタ−アミノレブリン酸が増加するという仕組みと結びつけて覚えると理解しやすいです。金属である鉛と、有機溶剤であるスチレンの指標を入れ替えた選択肢なので注意が必要です。
この問題で覚えるポイント
生物学的モニタリングでは、作業環境中の濃度ではなく、作業者の体内に取り込まれた有害物質やその代謝物を測定します。トルエンは尿中馬尿酸、キシレンは尿中メチル馬尿酸、スチレンは尿中マンデル酸やフェニルグリオキシル酸、N,N−ジメチルホルムアミドは尿中N−メチルホルムアミド、鉛は尿中デルタ−アミノレブリン酸が重要です。特に、馬尿酸とメチル馬尿酸、マンデル酸、デルタ−アミノレブリン酸は入れ替え問題として狙われやすいです。芳香族有機溶剤では、トルエン、キシレン、スチレンの違いをセットで整理すると正誤判断がしやすくなります。
ひっかけポイント
このテーマでは、有害物質名と尿中代謝物名を別々に覚えている受験者を狙って、組合せを入れ替える出題がされます。トルエンとキシレンはどちらも芳香族有機溶剤で、馬尿酸とメチル馬尿酸という名前も似ているため混同しやすいです。また、スチレンのマンデル酸、鉛のデルタ−アミノレブリン酸、N,N−ジメチルホルムアミドのN−メチルホルムアミドは、物質の種類が違っても同じ一覧の中で並べられるため、記憶が曖昧だと誤答しやすくなります。単語だけで覚えるのではなく、トルエンは馬尿酸、キシレンはメチル馬尿酸、スチレンはマンデル酸、鉛はデルタ−アミノレブリン酸というように、必ずペアで反射的に判断できる状態にしておくことが大切です。
