出典:第一種衛生管理者2023年(令和5年度)4月公表問題|労働生理第36問
問題
心臓及び血液循環に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 心臓は、自律神経の中枢で発生した刺激が刺激伝導系を介して心筋に伝わることにより、規則正しく収縮と拡張を繰り返す。
(2) 肺循環により左心房に戻ってきた血液は、左心室を経て大動脈に入る。
(3) 大動脈を流れる血液は動脈血であるが、肺動脈を流れる血液は静脈血である。
(4) 心臓の拍動による動脈圧の変動を末梢の動脈で触知したものを脈拍といい、一般に、手首の橈(とう)骨動脈で触知する。
(5) 心臓自体は、大動脈の起始部から出る冠動脈によって酸素や栄養分の供給を受けている。
衛生管理者過去問|心臓の構造と血液循環・冠動脈・刺激伝導系を解説
心臓と血液循環では、血液の流れる順序、動脈血と静脈血の区別、心臓を動かす刺激伝導系、冠動脈の役割がよく問われます。答えは(1)です。心臓の規則的な拍動は、自律神経の中枢から直接刺激が発生するのではなく、右心房にある洞房結節から始まる刺激が刺激伝導系を通って心筋に伝わることで起こります。自律神経は心拍数や収縮力を調節しますが、拍動そのものの出発点ではありません。

(1) 心臓は、自律神経の中枢で発生した刺激が刺激伝導系を介して心筋に伝わることにより、規則正しく収縮と拡張を繰り返す。
不適切です。心臓の拍動を始める電気的刺激は、自律神経の中枢で発生するのではなく、右心房にある洞房結節で発生します。この洞房結節は心臓のペースメーカーとも呼ばれ、ここで生じた刺激が房室結節、ヒス束、脚、プルキンエ線維へと伝わり、心房から心室へ順序よく収縮が起こります。自律神経は心臓に働きかけて心拍数を速くしたり遅くしたりしますが、心臓を規則的に拍動させる刺激そのものを作る中心ではありません。ここでは「自律神経の中枢で発生した刺激」という部分が誤りです。
(2) 肺循環により左心房に戻ってきた血液は、左心室を経て大動脈に入る。
適切です。肺循環では、右心室から肺動脈を通って肺へ送られた血液が、肺で酸素を受け取り二酸化炭素を放出します。酸素を多く含んだ血液は肺静脈を通って左心房に戻り、左心室へ送られます。その後、左心室の強い収縮によって大動脈へ送り出され、全身へ循環します。左心房、左心室、大動脈という流れは、体循環へつながる基本的な順序です。
(3) 大動脈を流れる血液は動脈血であるが、肺動脈を流れる血液は静脈血である。
適切です。動脈血とは酸素を多く含む血液で、静脈血とは二酸化炭素を多く含む血液です。大動脈には、肺で酸素を受け取った血液が左心室から送り出されるため、動脈血が流れています。一方、肺動脈には、全身を巡って酸素が少なくなった血液が右心室から肺へ送られるため、静脈血が流れています。名前に「動脈」と付いていても、必ず動脈血が流れるとは限らない点が重要です。
(4) 心臓の拍動による動脈圧の変動を末梢の動脈で触知したものを脈拍といい、一般に、手首の橈(とう)骨動脈で触知する。
適切です。脈拍は、心臓が血液を送り出すたびに動脈内の圧力が変化し、その波が末梢の動脈に伝わったものを触れて確認するものです。一般には手首の親指側を走る橈骨動脈で測定します。脈拍は心拍の状態を外から確認する手がかりになり、回数、リズム、強さなどから循環の状態を把握できます。
(5) 心臓自体は、大動脈の起始部から出る冠動脈によって酸素や栄養分の供給を受けている。
適切です。心臓は全身に血液を送り出す臓器ですが、心筋そのものも酸素や栄養分を必要とします。その供給を担うのが冠動脈です。冠動脈は大動脈の起始部から分かれて心臓の表面を走り、心筋へ血液を送ります。冠動脈が狭くなったり詰まったりすると、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患につながります。
この問題で覚えるポイント
心臓の拍動は、右心房にある洞房結節で発生した刺激が刺激伝導系を通って心筋に伝わることで起こります。自律神経は心拍数や収縮力を調節しますが、拍動の刺激を最初に作る中心ではありません。血液循環は、右心房、右心室、肺動脈、肺、肺静脈、左心房、左心室、大動脈、全身という流れで整理すると理解しやすくなります。動脈血は酸素を多く含む血液、静脈血は二酸化炭素を多く含む血液です。大動脈には動脈血、肺動脈には静脈血が流れます。脈拍は心臓の拍動による動脈圧の変動を末梢動脈で触知したもので、一般に橈骨動脈で確認します。心臓自体は大動脈の起始部から出る冠動脈によって酸素や栄養分を受けています。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「心臓は自律神経で動く」という日常的な理解を、そのまま刺激伝導系の説明に当てはめてしまう点です。自律神経が心臓の働きに関係すること自体は正しいため、文章の前半だけを見ると正しく感じやすくなります。しかし、拍動の刺激を最初に発生させるのは自律神経の中枢ではなく洞房結節です。また、肺動脈は名称に「動脈」と付いているため動脈血が流れると誤解しやすいですが、実際には静脈血が流れます。血管名ではなく、酸素を多く含むかどうかで動脈血と静脈血を判断することが大切です。
