出典:第一種衛生管理者2022年(令和4年度)4月公表問題|労働衛生(有害業務に係るもの以外のもの)第30問
問題
厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」に基づく腰痛予防対策に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1) 作業動作、作業姿勢についての作業標準の策定は、その作業に従事する全ての労働者に一律な作業をさせることになり、個々の労働者の腰痛の発生要因の排除又は低減ができないため、腰痛の予防対策としては適切ではない。
(2) 重量物取扱い作業の場合、満18歳以上の男性労働者が人力のみにより取り扱う物の重量は、体重のおおむね50%以下となるようにする。
(3) 重量物取扱い作業の場合、満18歳以上の女性労働者が人力のみにより取り扱う物の重量は、男性が取り扱うことのできる重量の60%位までとする。
(4) 重量物取扱い作業に常時従事する労働者に対しては、当該作業に配置する際及びその後1年以内ごとに1回、定期に、医師による腰痛の健康診断を行う。
(5) 腰部保護ベルトは、重量物取扱い作業に従事する労働者全員に使用させるようにする。
第1種衛生管理者|職場における腰痛予防対策指針・重量物取扱い基準を解説
腰痛予防対策では、作業姿勢、作業動作、重量物の取扱い、健康診断、補助具の使用などを総合的に理解することが大切です。答えは(3)です。重量物取扱い作業では、満18歳以上の女性労働者が人力のみで取り扱う重量は、男性が取り扱うことのできる重量の60%位までとすることが示されています。重量物の基準は数値が問われやすく、男性は体重のおおむね40%以下、女性は男性の60%位までという組合せで覚えると判断しやすくなります。
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(1) 作業動作、作業姿勢についての作業標準の策定は、その作業に従事する全ての労働者に一律な作業をさせることになり、個々の労働者の腰痛の発生要因の排除又は低減ができないため、腰痛の予防対策としては適切ではない。
不適切です。作業動作や作業姿勢について作業標準を策定することは、腰痛予防対策として適切です。作業標準とは、腰に負担の少ない作業方法や姿勢、動作の手順などを明確にするものです。たとえば、重量物を持ち上げるときに腰だけを曲げず、膝を使って身体に近づけて持つこと、無理なひねり動作を避けること、作業台の高さを調整することなどが含まれます。作業標準は労働者を機械的に同じ動きに縛るものではなく、腰痛の発生要因を減らすための基本ルールです。個々の労働者の体格や作業内容に応じて見直すことも重要です。
(2) 重量物取扱い作業の場合、満18歳以上の男性労働者が人力のみにより取り扱う物の重量は、体重のおおむね50%以下となるようにする。
不適切です。満18歳以上の男性労働者が人力のみで取り扱う物の重量は、体重のおおむね40%以下となるようにすることが示されています。50%では重すぎます。たとえば体重60kgの男性であれば、目安は約24kg以下です。重量物取扱いでは、単に持てるかどうかではなく、繰り返し作業、持ち上げる高さ、運搬距離、姿勢の悪さなども腰への負担に影響します。試験では、男性は40%という数値を正確に覚えておくことが大切です。
(3) 重量物取扱い作業の場合、満18歳以上の女性労働者が人力のみにより取り扱う物の重量は、男性が取り扱うことのできる重量の60%位までとする。
適切です。満18歳以上の女性労働者が人力のみで取り扱う重量は、男性が取り扱うことのできる重量の60%位までとすることが示されています。男性の基準は体重のおおむね40%以下ですので、女性の場合はその60%程度が目安になります。これは、筋力や体格差などを考慮して、腰部への過度な負担を避けるための基準です。重量物取扱い作業では、できるだけ機械や補助具を使い、人力による負担を減らすことも重要です。
(4) 重量物取扱い作業に常時従事する労働者に対しては、当該作業に配置する際及びその後1年以内ごとに1回、定期に、医師による腰痛の健康診断を行う。
不適切です。重量物取扱い作業など腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者に対しては、配置の際及びその後6か月以内ごとに1回、定期に腰痛の健康診断を行うことが示されています。1年以内ごとでは間隔が長すぎます。腰痛は作業姿勢や反復動作によって徐々に悪化することがあるため、早期に異常を把握し、作業方法の改善や配置転換などにつなげることが重要です。
(5) 腰部保護ベルトは、重量物取扱い作業に従事する労働者全員に使用させるようにする。
不適切です。腰部保護ベルトは、重量物取扱い作業に従事する労働者全員に一律に使用させるものではありません。腰部保護ベルトは補助的な対策であり、作業内容や労働者の状態に応じて適切に使用する必要があります。腰痛予防の基本は、重量物を軽くすること、機械化や補助具の使用、作業姿勢の改善、作業標準の整備、休憩や作業ローテーションなどです。ベルトを着ければ腰痛を確実に防げるわけではないため、過信しないことが大切です。
この問題で覚えるポイント
職場における腰痛予防対策では、作業管理、作業環境管理、健康管理、労働衛生教育を組み合わせて行うことが重要です。重量物取扱い作業では、人力のみによる取扱い重量について、満18歳以上の男性は体重のおおむね40%以下、満18歳以上の女性は男性が取り扱うことのできる重量の60%位までとする基準を覚えておきます。腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者には、配置の際及びその後6か月以内ごとに1回、腰痛の健康診断を行います。作業標準の策定は腰痛予防に有効であり、腰に負担の少ない姿勢や動作を明確にするために行います。腰部保護ベルトは補助的手段であり、全員に一律使用させるものではありません。腰痛予防では、ベルトなどの個人対策だけでなく、重量物の軽量化、機械化、補助具の使用、作業姿勢の改善を優先して考えることが大切です。
ひっかけポイント
このテーマでは、数値の微妙な違いで誤答を誘う問題がよく出ます。男性の基準を体重の50%とする選択肢は、日常感覚では「半分くらいなら妥当」と思いやすいですが、正しくは40%です。健康診断の頻度も、一般的な定期健康診断の年1回という知識に引っ張られると間違えやすく、腰痛の健康診断は6か月以内ごとに1回と押さえる必要があります。また、作業標準は一律作業を強制するものではなく、腰痛を防ぐための安全な作業方法を示すものです。腰部保護ベルトについても、便利な保護具だから全員に使わせればよいと考えると誤りです。試験では、保護具に頼る前に作業方法や作業環境を改善するという労働衛生の基本的な考え方を意識すると、正誤判断が安定します。
