出典:第一種衛生管理者2021年(令和3年度)10月公表問題|関係法令(有害業務に係るもの)第6問
問題
事業者が、法令に基づく次の措置を行ったとき、その結果について所轄労働基準監督署長に報告することが義務付けられているものはどれか。
(1) 雇入時の有機溶剤等健康診断
(2) 定期に行う特定化学物質健康診断
(3) 特定化学設備についての定期自主検査
(4) 高圧室内作業主任者の選任
(5) 鉛業務を行う屋内作業場についての作業環境測定
第1種衛生管理者|労働基準監督署への報告義務がある健康診断と法定措置を解説
この問題では、有害業務に関する健康診断や検査、測定、作業主任者の選任について、結果を所轄労働基準監督署長へ報告する義務があるものを判別します。答えは(2)です。定期に行う特定化学物質健康診断については、特定化学物質健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署長に提出する必要があります。すべての健康診断や測定結果が報告対象になるわけではなく、「定期健康診断の結果報告が必要なもの」と「記録保存は必要だが報告までは求められないもの」を区別することが重要です。
(1) 雇入時の有機溶剤等健康診断
不適切です。有機溶剤業務に常時従事する労働者に対しては、有機溶剤等健康診断を実施する必要があります。ただし、所轄労働基準監督署長への報告が義務付けられているのは、主に定期に行う有機溶剤等健康診断の結果です。雇入時に行う健康診断は、労働者を有機溶剤業務に就かせる前の健康状態を確認するためのものであり、その結果について報告義務があるものではありません。健康診断には「実施義務」「記録保存義務」「報告義務」がありますが、これらは同じではないため注意が必要です。
(2) 定期に行う特定化学物質健康診断
適切です。特定化学物質を取り扱う業務などに常時従事する労働者に対しては、特定化学物質健康診断を実施しなければなりません。定期に行う特定化学物質健康診断については、その結果を特定化学物質健康診断結果報告書により、所轄労働基準監督署長へ報告することが義務付けられています。特定化学物質は、がん、慢性中毒、臓器障害など重大な健康障害を生じるおそれがあるため、行政が健康診断結果を把握できる仕組みになっています。試験では、「特定化学物質」「有機溶剤」「鉛」「電離放射線」などの特殊健康診断について、定期健康診断結果報告の有無が問われやすいです。
(3) 特定化学設備についての定期自主検査
不適切です。特定化学設備については、法令に基づき定期自主検査を行い、その結果を記録して保存する必要があります。これは設備の腐食、漏えい、破損などによる化学物質の漏出事故を防ぐための措置です。ただし、この定期自主検査の結果を所轄労働基準監督署長に報告することまでは、通常義務付けられていません。ここでは「検査を実施する義務がある」ことと「結果を報告する義務がある」ことを混同しないことが大切です。
(4) 高圧室内作業主任者の選任
不適切です。高圧室内作業を行う場合には、作業の安全を確保するため、高圧室内作業主任者を選任する必要があります。作業主任者は、作業方法の決定、労働者の指揮、設備や器具の点検などを行う役割を担います。ただし、作業主任者を選任したことについて、その結果を所轄労働基準監督署長に報告する義務があるものではありません。作業主任者の選任は重要な法定措置ですが、すべての選任が監督署への報告対象になるわけではありません。
(5) 鉛業務を行う屋内作業場についての作業環境測定
不適切です。鉛業務を行う屋内作業場では、作業環境測定を行い、鉛の濃度などを把握する必要があります。作業環境測定の結果は、作業場の管理状態を確認し、必要に応じて設備改善や作業方法の見直しにつなげるために重要です。ただし、鉛業務を行う屋内作業場についての作業環境測定結果については、所轄労働基準監督署長への報告が義務付けられているものではありません。作業環境測定では、測定の実施と記録保存が基本であり、健康診断結果報告とは扱いが異なります。
この問題で覚えるポイント
有害業務に関する法定措置では、実施義務、記録保存義務、報告義務を分けて覚えることが正誤判断に直結します。特殊健康診断のうち、定期に行う特定化学物質健康診断のように、結果を所轄労働基準監督署長へ報告するものがあります。雇入時の健康診断は、業務に就く前の健康状態を確認する目的が中心であり、定期健康診断結果報告とは区別します。設備の定期自主検査や作業環境測定は、実施と記録保存が重要ですが、結果報告まで求められるとは限りません。作業主任者の選任も安全管理上は重要ですが、選任した事実をすべて監督署へ報告する制度ではありません。試験では、「健康診断だから報告する」「測定だから報告する」と考えるのではなく、法令上、結果報告書の提出が求められている措置かどうかを確認する意識が大切です。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「法令に基づく措置」という言葉に引きずられて、実施義務があるものをそのまま報告義務ありと判断してしまう点です。有機溶剤等健康診断、特定化学設備の定期自主検査、高圧室内作業主任者の選任、鉛業務の作業環境測定はいずれも安全衛生上重要な措置ですが、重要であることと監督署へ結果を報告することは別です。特に、健康診断は報告義務があるものとないものがあり、雇入時と定期の違いも狙われます。また、作業環境測定は行政に報告しそうに見えますが、基本は測定結果を記録し、作業環境管理に活用する制度です。「実施する」「保存する」「報告する」の3段階を切り分けて読むと、同じテーマの問題でも安定して正答しやすくなります。
