問題
炭化水素の燃焼に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1) 酸素の供給量が不足すると完全燃焼しやすくなり、二酸化炭素と水だけが生成する。
(2) 完全燃焼では、炭素は主に一酸化炭素となり、水素は水となる。
(3) 不完全燃焼では、一酸化炭素やすすが生じることがあり、完全燃焼より発生する熱量が小さくなる。
(4) すすは、酸素が十分に供給された場合に炭素が完全に酸化されて生じる。
(5) 一酸化炭素は二酸化炭素より酸化が進んだ物質であるため、それ以上燃焼しない。
危険物取扱者乙種4類|完全燃焼と不完全燃焼 酸素供給量と二酸化炭素、一酸化炭素、すすの発生を解説
炭化水素の燃焼では、供給される酸素の量によって、生成する物質や発生する熱量が変化します。酸素が十分に供給されると完全燃焼が起こり、炭素は二酸化炭素に、水素は水になります。酸素が不足すると不完全燃焼となり、一酸化炭素やすすが発生することがあります。不完全燃焼では燃料が十分に酸化されていないため、完全燃焼と比べて発生する熱量も小さくなります。このため、正しい答えは(3)です。

(1) 酸素の供給量が不足すると完全燃焼しやすくなり、二酸化炭素と水だけが生成する。
不適切です。完全燃焼が起こるためには、燃料を十分に酸化できる量の酸素が必要です。炭化水素に酸素が十分に供給されると、炭素は二酸化炭素まで酸化され、水素は水になります。酸素の供給量が不足すると、燃料に含まれる炭素を二酸化炭素まで完全に酸化できません。その結果、一酸化炭素や炭素の微粒子であるすすが生じやすくなります。このような燃焼を不完全燃焼といいます。酸素不足によって完全燃焼しやすくなるのではなく、酸素不足によって不完全燃焼が起こりやすくなるため、この記述は誤りです。
(2) 完全燃焼では、炭素は主に一酸化炭素となり、水素は水となる。
不適切です。炭化水素が完全燃焼すると、炭素は十分に酸化されて二酸化炭素になります。水素は酸素と結びついて水になります。一酸化炭素は、炭素が二酸化炭素まで十分に酸化されなかった場合に生じる物質です。主に酸素が不足している状態で発生するため、一酸化炭素の生成は不完全燃焼の代表的な特徴です。水素が水になるという部分は正しいものの、炭素が主に一酸化炭素になるという部分が誤っています。文章の一部が正しくても、記述全体としては不適切と判断します。
(3) 不完全燃焼では、一酸化炭素やすすが生じることがあり、完全燃焼より発生する熱量が小さくなる。
適切です。不完全燃焼は、酸素の供給が不足するなどの理由により、燃料が十分に酸化されない燃焼です。炭化水素が不完全燃焼すると、炭素が二酸化炭素まで酸化されず、一酸化炭素やすすが生じることがあります。一酸化炭素は、さらに酸化されると二酸化炭素になります。つまり、一酸化炭素には、まだ燃焼によって放出できる化学エネルギーが残っています。すすも主成分が炭素であり、酸素が十分にあれば燃焼できます。不完全燃焼では、燃料が持つエネルギーを十分に熱として取り出せていません。そのため、同じ量の燃料を燃やした場合、完全燃焼よりも発生する熱量が小さくなります。また、一酸化炭素は無色、無臭の有毒な気体です。酸素を運ぶ血液中のヘモグロビンと強く結びつき、人体を酸素不足の状態にする危険があります。不完全燃焼は熱効率が低いだけでなく、中毒事故につながる点にも注意が必要です。
(4) すすは、酸素が十分に供給された場合に炭素が完全に酸化されて生じる。
不適切です。すすは、炭化水素などに含まれる炭素が十分に酸化されず、細かな炭素の粒子として残ったものです。主に酸素不足による不完全燃焼で発生します。酸素が十分に供給され、炭素が完全に酸化された場合は、炭素は二酸化炭素になります。二酸化炭素は気体であり、黒い粒子であるすすとは異なります。ろうそくの炎や燃焼器具で黄色く明るい炎が見える場合、加熱されたすすの粒子が光を放っていることがあります。空気の取り入れが不十分な場合には、すすを含む煙が発生しやすくなります。酸素が十分な燃焼とすすの発生を結びつけている点が誤りです。
(5) 一酸化炭素は二酸化炭素より酸化が進んだ物質であるため、それ以上燃焼しない。
不適切です。一酸化炭素は、二酸化炭素よりも酸化の程度が低い物質です。一酸化炭素に酸素を加えて燃焼させると、さらに酸化されて二酸化炭素になります。一酸化炭素の燃焼は、化学反応式では「2CO+O₂→2CO₂」と表すことができます。この反応では熱が発生するため、一酸化炭素は可燃性の気体に分類されます。二酸化炭素は、炭素が十分に酸化された状態の物質です。通常の燃焼条件では、それ以上酸化されにくく、燃焼を支える性質もありません。この選択肢は、一酸化炭素と二酸化炭素の酸化の程度を逆に説明しています。
この問題で覚えるポイント
炭化水素は炭素と水素からできているため、酸素が十分にある状態で完全燃焼すると、炭素は二酸化炭素に、水素は水になります。一般的な炭化水素をCₓHᵧと表すと、完全燃焼では主な生成物がCO₂とH₂Oになります。酸素が不足すると不完全燃焼となり、一酸化炭素やすすが発生しやすくなります。一酸化炭素は炭素が途中まで酸化された物質であり、さらに燃焼して二酸化炭素になることができます。すすは十分に酸化されなかった炭素の微粒子です。完全燃焼は燃料を十分に酸化するため、不完全燃焼より発生する熱量が大きくなります。不完全燃焼では燃料の化学エネルギーが一酸化炭素やすすの中に残るため、熱効率が低下します。燃焼状態を判断する際は、酸素が十分なら二酸化炭素と水、酸素が不足すれば一酸化炭素やすす、という関係を基本として覚えることが重要です。また、一酸化炭素は無色、無臭で強い毒性を持つ可燃性気体であり、二酸化炭素は炭素が十分に酸化された不燃性の気体であるという違いも正誤判断に直結します。
ひっかけポイント
このテーマでは、完全燃焼と不完全燃焼の生成物を逆にした記述が頻繁に出題されます。「酸素が多いほど燃焼が激しくなる」という日常的な感覚から、すすや一酸化炭素も多く発生すると考えないように注意が必要です。酸素が十分な場合は炭素が二酸化炭素まで酸化されるため、すすや一酸化炭素は発生しにくくなります。また、「炭素は一酸化炭素になる、水素は水になる」のように、一部だけ正しい文章も典型的なひっかけです。選択肢は文章全体が正しいかを確認し、一部分の正しさだけで判断してはいけません。一酸化炭素と二酸化炭素については、名称に含まれる酸素の数を意識すると整理しやすくなります。一酸化炭素は酸素原子が一つで酸化が途中の状態、二酸化炭素は酸素原子が二つで、より酸化が進んだ状態です。「一酸化炭素は燃えない」「二酸化炭素より酸化されている」という表現が出た場合は、両者の関係を逆にしていないかを確認してください。さらに、燃焼が不完全であるほど燃料が長く燃えるため熱量が大きいと考えるのも誤りです。不完全燃焼では燃料のエネルギーを十分に取り出せないため、完全燃焼より発生する熱量は小さくなります。
