問題
次のジエチルエーテルの性質に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1) 水によく溶け、消火には大量の棒状の水が最も適している。
(2) 引火点が高く、常温では可燃性蒸気をほとんど発生しない。
(3) 空気中で長期間保存すると過酸化物を生成することがあり、取り扱いに注意が必要である。
(4) 蒸気は空気より軽いため、高所に滞留しやすい。
(5) 水より重いため、水面下に沈んで燃焼する。
危険物取扱者乙種4類|ジエチルエーテルの性質を解説
ジエチルエーテルは、第4類危険物の特殊引火物に分類される、非常に引火しやすい液体です。引火点と沸点が低いため、常温でも多量の可燃性蒸気を発生します。さらに、空気に触れた状態で長期間保存すると、衝撃や摩擦によって爆発するおそれのある過酸化物を生成することがあります。正しい答えは(3)です。ジエチルエーテルを安全に取り扱うためには、火気を避けるだけでなく、蒸気の滞留や古い容器に生成した過酸化物にも注意する必要があります。

(1) 水によく溶け、消火には大量の棒状の水が最も適している。
不適切です。ジエチルエーテルは水にわずかに溶けますが、水によく溶ける物質ではありません。また、水より軽いため、水と混ざらずに水面へ浮く性質があります。燃焼中のジエチルエーテルに棒状の水を勢いよく放射すると、燃えている液体を周囲へ飛散させ、火災の範囲を広げるおそれがあります。 消火には、液面を覆って空気との接触を遮断できる泡消火剤や、二酸化炭素消火剤、粉末消火剤などが適しています。水を使用する場合は、直接火元へ棒状に放射するのではなく、霧状の水によって周囲の設備や容器を冷却する方法が基本です。第4類危険物の液体火災では、水に溶けるかどうかだけでなく、水より軽いか、放水によって燃焼液が広がらないかを判断することが重要です。
(2) 引火点が高く、常温では可燃性蒸気をほとんど発生しない。
不適切です。ジエチルエーテルの引火点は約マイナス45℃と非常に低く、常温よりはるかに低い温度でも引火する可能性があります。引火点とは、液体から発生した蒸気が空気と混ざり、火源を近づけたときに瞬間的に燃え始める最低温度です。引火点が低い物質ほど、低温でも可燃性蒸気を発生しやすく、火災の危険性が高くなります。 ジエチルエーテルは沸点も約35℃と低いため、常温でも非常に蒸発しやすい物質です。室温が沸点に達していなくても液体は蒸発するため、容器を開けたままにすると周囲に可燃性蒸気が広がります。わずかな火花、静電気、電気設備の火花などでも引火するおそれがあるため、換気を十分に行い、火気や着火源を厳重に管理する必要があります。
(3) 空気中で長期間保存すると過酸化物を生成することがあり、取り扱いに注意が必要である。
適切です。ジエチルエーテルは、空気中の酸素と徐々に反応し、保存中に有機過酸化物を生成することがあります。この過酸化物は非常に不安定であり、衝撃、摩擦、加熱などによって爆発するおそれがあります。特に、長期間保存されたものや、開封後に空気と繰り返し接触したものは注意が必要です。 ジエチルエーテルが蒸発すると、生成した過酸化物は蒸発せず、容器内に濃縮されることがあります。そのため、古いジエチルエーテルを蒸留したり、容器の中身を完全に蒸発させたりすると、残留した過酸化物の濃度が高くなり、爆発の危険性が増します。容器のふたや口の周辺に結晶状の物質が見られる場合も、安易に開封したり動かしたりしてはいけません。 実際の保管では、密栓し、直射日光や高温を避け、必要に応じて酸化防止剤が添加された製品を使用します。保存期間を管理し、長期間保存されたものは適切な方法で過酸化物の有無を確認することも大切です。ジエチルエーテルは、引火しやすいだけでなく、保存中に爆発性物質を生成する可能性がある点が、試験でも重要な特徴として問われます。
(4) 蒸気は空気より軽いため、高所に滞留しやすい。
不適切です。ジエチルエーテルの蒸気は空気より重く、床面、溝、くぼみ、地下室などの低い場所に流れて滞留しやすい性質があります。空気の平均分子量は約29ですが、ジエチルエーテルの分子量は約74であるため、蒸気の比重は空気より大きくなります。 蒸気は目に見えませんが、発生場所から床面に沿って離れた場所まで移動することがあります。その先に炎、火花、高温部分などがあると引火し、炎が蒸気を伝って容器や漏えい場所まで戻ってくることがあります。この現象は引火性液体を取り扱う際の大きな危険です。 換気を行う場合も、天井付近だけを換気すればよいわけではありません。低所にたまった蒸気を排出できるようにする必要があります。危険物の蒸気について問われたときは、蒸気比重が空気より大きい物質は低所に滞留しやすく、空気より小さい気体は高所にたまりやすいという基本を押さえておきましょう。
(5) 水より重いため、水面下に沈んで燃焼する。
不適切です。ジエチルエーテルの比重は約0.71であり、水の比重である1より小さいため、水より軽い液体です。また、水にほとんど溶けないため、水と接触すると水面に浮きます。ジエチルエーテルが燃焼しているところへ大量の水を加えると、燃焼液が水面に浮いたまま周囲へ広がり、火災を拡大させるおそれがあります。 液体そのものが水面下で燃えているのではなく、水面に浮いたジエチルエーテルから発生した蒸気が空気中で燃焼します。第4類危険物の多くは、液体そのものではなく、液面から発生した可燃性蒸気が燃焼する蒸発燃焼を行います。 水より軽い非水溶性液体の火災では、単純に水をかければ消火できるとは限りません。水面上に燃焼液が広がる危険があるため、泡によって液面を覆う消火方法や、粉末、二酸化炭素などによる消火が適しています。
この問題で覚えるポイント
ジエチルエーテルは、第4類危険物の特殊引火物に分類されます。特殊引火物は、発火点が100℃以下のもの、または引火点がマイナス20℃以下で沸点が40℃以下のものです。ジエチルエーテルは引火点が約マイナス45℃、沸点が約35℃であり、低温でも引火しやすく、常温で急速に蒸発します。 液体の比重は約0.71で、水より軽く、水にはわずかしか溶けません。水面に浮いて広がるため、燃焼中に棒状の水を直接放射すると、燃焼液を飛散させたり、火災範囲を拡大させたりするおそれがあります。消火には、泡消火剤、粉末消火剤、二酸化炭素消火剤などが適しています。霧状の水は、周囲の容器や設備を冷却する目的で使用されることがあります。 蒸気の比重は空気より大きいため、床面や低所に滞留しやすい性質があります。蒸気は発生場所から離れた場所まで流れ、離れた火源で引火して炎が戻ることがあります。換気は低所に蒸気が残らないように行う必要があります。 ジエチルエーテルは、空気中の酸素と反応して爆発性の過酸化物を生成することがあります。長期保存、開封回数の多い容器、蒸留や濃縮を行う場合は、特に危険性が高まります。引火性だけでなく、保存中の過酸化物生成まで含めて覚えることが重要です。
ひっかけポイント
ジエチルエーテルは名称に「エーテル」と付くため、水に溶けやすい物質のように感じることがありますが、実際には水にわずかしか溶けません。化学物質の名称から水溶性を推測すると誤りやすいため、ジエチルエーテルは水より軽く、水に溶けにくいとセットで覚える必要があります。 沸点が約35℃であることから、35℃未満では蒸気が発生しないと考えるのも典型的な誤りです。液体は沸点に達していなくても蒸発します。沸点は液体全体が沸騰する温度であり、蒸発が始まる温度ではありません。常温でも多量の可燃性蒸気が発生する点に注意が必要です。 蒸気の重さと液体の重さを混同する問題もよく出題されます。ジエチルエーテルの液体は水より軽いですが、蒸気は空気より重い性質があります。「液体が水より軽いなら蒸気も空気より軽い」と考えることはできません。液体比重と蒸気比重は、それぞれ別に判断します。 また、引火しやすい物質であることだけに意識が向き、過酸化物の生成を見落としやすい点も重要です。ジエチルエーテルは火気を遠ざければ安全というわけではなく、長期保存によって爆発性の過酸化物が生成する可能性があります。問題文に「長期間保存」「空気中」「過酸化物」「衝撃や摩擦」といった表現があれば、ジエチルエーテルの保存上の危険性を問う記述であると判断しましょう。
