【ビル管過去問】令和3年度 問題96|建築物の耐震構造|免震・制振・耐震補強・構造計算法を解説

出典:建築物衛生管理技術者試験令和3年度(2021年)|建築物の構造概論第96問

問題

建築物とその構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

(1) 免震構造では、アイソレータを用いて振動エネルギーを吸収し、振動を小さくする。

(2) 耐震補強には、強度や変形能力を高める方法がある。

(3) 制振構造において、建物の揺れを制御·低減するためのダンパに座屈拘束ブレースなどが用いられる。

(4) コンクリートの打設時間の間隔が長くなると、コールドジョイントが生じやすくなる。

(5) 構造設計に用いる計算法には、保有水平耐力計算、限界耐力計算、許容応力度等計算がある。

 

 

 

ビル管過去問|建築物の耐震構造|免震・制振・耐震補強・構造計算法を解説

この問題は、建築物の耐震に関する基本事項として、免震構造、制振構造、耐震補強、コンクリート施工、構造設計の計算法について問うものです。最も不適当なのは(1)です。免震構造と制振構造は似た言葉ですが、地震時の揺れを小さくする仕組みが異なるため、その違いを正確に理解しておくことが重要です。また、コールドジョイントや構造計算の種類は、構造分野の基礎知識として定番ですので、用語の意味と役割を整理して覚えておくことが得点につながります。

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(1) 免震構造では、アイソレータを用いて振動エネルギーを吸収し、振動を小さくする。

不適切です。免震構造の中心的な役割を果たすアイソレータは、建物と地盤の間に設けられ、地震動を建物に直接伝えにくくすることで揺れを低減します。つまり、建物の固有周期を長くし、地震エネルギーの伝達を抑えることが主な役割です。一方で、振動エネルギーを吸収して揺れを減らす働きは、主としてダンパなどの制振部材が担います。そのため、アイソレータを用いて振動エネルギーを吸収するという説明は、制振構造の特徴と混同しており不正確です。免震では「地震を伝えにくくする」、制振では「揺れのエネルギーを吸収する」と整理すると理解しやすいです。

(2) 耐震補強には、強度や変形能力を高める方法がある。

適切です。耐震補強とは、既存建築物の地震に対する安全性を高めるために行う補強のことです。方法としては、壁やブレースを追加して強度を高めるものや、柱や梁の補強により変形能力、すなわち粘り強さを高めるものがあります。建物は単に強ければよいわけではなく、大きな地震力を受けたときに急激に壊れないよう、変形しながら耐える能力も大切です。そのため、耐震補強には強度の向上と靱性、変形能力の向上の両面があると理解しておくことが重要です。

(3) 制振構造において、建物の揺れを制御·低減するためのダンパに座屈拘束ブレースなどが用いられる。

適切です。制振構造は、建物に生じる揺れのエネルギーを吸収する部材を設けて、応答を抑える構造です。代表的な制振部材として、オイルダンパ、鋼材ダンパ、粘弾性ダンパなどがあり、座屈拘束ブレースもその一つとして用いられます。座屈拘束ブレースは、圧縮時にも座屈しにくいよう工夫された部材で、引張時と圧縮時の両方で安定してエネルギーを吸収できます。そのため、繰り返し揺れを受ける地震時にも効果を発揮しやすく、制振構造で広く活用されています。

(4) コンクリートの打設時間の間隔が長くなると、コールドジョイントが生じやすくなる。

適切です。コンクリート打設時間の間隔が長くなると、先に打ち込んだコンクリート表面が硬化し始め、後から打ち込むコンクリートと十分に一体化しにくくなります。その結果、打継ぎ部に不連続な境目ができ、これをコールドジョイントといいます。コールドジョイントが生じると、強度低下、水密性低下、ひび割れ発生などの原因になることがあります。品質確保のためには、連続して打設すること、やむを得ず中断する場合は適切な打継ぎ処理を行うことが重要です。

(5) 構造設計に用いる計算法には、保有水平耐力計算、限界耐力計算、許容応力度等計算がある。

適切です。建築物の構造設計では、安全性を確認するために複数の計算法が用いられます。許容応力度等計算は、部材に生じる応力が許容値以内かを確認する基本的な方法です。保有水平耐力計算は、大地震時に建物が必要な水平耐力を持っているかを確認する計算です。限界耐力計算は、建物の変形や応答を踏まえて、損傷限界や安全限界に対する性能を評価する考え方を含む計算です。いずれも構造設計で重要な方法であり、選択肢の記述は正しいです。

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この問題で覚えるポイント

耐震構造は、大きく耐震、制振、免震に整理して覚えることが重要です。耐震構造は柱や梁、耐力壁などで建物自体を強くして地震に耐える考え方です。制振構造はダンパなどで揺れのエネルギーを吸収し、応答を小さくする考え方です。免震構造は建物と地盤の間にアイソレータなどを設け、地震動を建物に伝わりにくくする考え方です。特に、免震は「絶縁」、制振は「吸収」という違いが頻出です。

耐震補強では、単に強度を高めるだけでなく、粘り強く変形できる能力を高めることも重要です。地震では一瞬の大きな力に耐えるだけでなく、繰り返しの揺れに対して急激に破壊しない性能が求められます。そのため、強度と靱性の両方を意識して覚えると応用が利きます。

コンクリート施工では、コールドジョイントの意味を理解しておくことが大切です。打設間隔が長いほど生じやすく、打継ぎ部の一体性や耐久性を損なうおそれがあります。構造問題であっても、施工上の基本知識として問われることがあります。

構造計算では、許容応力度等計算、保有水平耐力計算、限界耐力計算が代表的です。細かな計算内容まで深く覚える前に、それぞれが何を確認する計算法なのかを区別できるようにしておくと、正誤判断がしやすくなります。

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ひっかけポイント

この問題の最大のひっかけは、免震構造と制振構造の役割の混同です。どちらも建物の揺れを小さくするため、言葉だけで何となく覚えていると、アイソレータがエネルギーを吸収すると誤って判断しやすくなります。試験では、免震は地震動を伝えにくくする仕組み、制振はエネルギーを吸収する仕組みと、役割の中心を分けて考えることが大切です。

また、全体として正しい内容が多い中に、一部だけ誤っている文章を紛れ込ませるのも典型的な出題パターンです。今回も「振動を小さくする」という結論部分だけを見るともっともらしく見えますが、その手段としてアイソレータにエネルギー吸収の役割を持たせている点が誤りです。試験では、文章全体の雰囲気ではなく、用語と役割の対応関係まで丁寧に確認する姿勢が重要です。

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