出典:第二種衛生管理者2023年(令和5年度)10月公表問題|労働生理第27問
問題
筋肉に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1) 横紋筋は、骨に付着して身体の運動の原動力となる筋肉で意志によって動かすことができるが、平滑筋は、心筋などの内臓に存在する筋肉で意志によって動かすことができない。
(2) 筋肉は神経からの刺激によって収縮するが、神経より疲労しにくい。
(3) 荷物を持ち上げたり、屈伸運動を行うときは、筋肉が長さを変えずに外力に抵抗して筋力を発生させる等尺性収縮が生じている。
(4) 強い力を必要とする運動を続けていると、筋肉を構成する個々の筋線維の太さは変わらないが、その数が増えることによって筋肉が太くなり筋力が増強する。
(5) 刺激に対して意識とは無関係に起こる定型的な反応を反射といい、四肢の皮膚に熱いものが触れたときなどに、その肢を体幹に近づけるような反射は屈曲反射と呼ばれる。
第二種衛生管理者|筋肉の種類と収縮の仕組み|反射・等尺性収縮・筋肥大を解説
筋肉の種類、収縮の仕組み、筋肥大、反射の基本を整理する問題です。正しい記述は(5)です。熱いものに触れたときに、意識する前に手や足を引っ込める反応は反射であり、特に肢を曲げて体幹に近づける反射は屈曲反射と呼ばれます。筋肉の問題では、横紋筋、平滑筋、心筋の分類、等尺性収縮と等張性収縮の違い、筋肥大は筋線維の数ではなく太さの増大によるという点がよく問われます。

(1) 横紋筋は、骨に付着して身体の運動の原動力となる筋肉で意志によって動かすことができるが、平滑筋は、心筋などの内臓に存在する筋肉で意志によって動かすことができない。
不適切です。骨に付着して身体を動かす筋肉は骨格筋であり、横紋筋に分類されます。骨格筋は、自分の意志で動かすことができる随意筋です。ここまでは正しい内容です。しかし、平滑筋は胃、腸、血管、子宮などの内臓や血管壁に存在する筋肉であり、心筋とは区別されます。心筋は心臓を構成する筋肉で、横紋があるため横紋筋に分類されますが、自分の意志では動かせない不随意筋です。つまり、心筋を平滑筋に含めている点が誤りです。試験では、骨格筋は横紋筋かつ随意筋、心筋は横紋筋かつ不随意筋、平滑筋は不随意筋という整理が重要です。
(2) 筋肉は神経からの刺激によって収縮するが、神経より疲労しにくい。
不適切です。筋肉は、運動神経からの刺激を受けて収縮します。しかし、疲労のしやすさについては、一般に筋肉は神経より疲労しやすいとされています。神経は興奮を伝える働きが中心ですが、筋肉は収縮によってエネルギーを消費し、乳酸などの代謝産物の蓄積やエネルギー不足などによって疲労が生じます。そのため、長時間の作業や強い力を出し続ける作業では、神経よりも筋肉の疲労が問題になりやすいです。「神経からの刺激で収縮する」という前半は正しいため、そのまま正解に見えやすいですが、後半の「神経より疲労しにくい」が誤りです。
(3) 荷物を持ち上げたり、屈伸運動を行うときは、筋肉が長さを変えずに外力に抵抗して筋力を発生させる等尺性収縮が生じている。
不適切です。等尺性収縮とは、筋肉の長さをほとんど変えずに力を発生させる収縮です。たとえば、重い荷物を同じ姿勢で持ち続ける、壁を押す、姿勢を固定するような場合が該当します。一方、荷物を持ち上げたり、屈伸運動を行ったりする場合は、筋肉の長さが変化しながら力を発生します。このような収縮は等張性収縮に近いものとして理解します。持ち上げる動作では筋肉が短くなる求心性収縮、ゆっくり下ろす動作では筋肉が伸びながら力を出す遠心性収縮が関係します。設問では「持ち上げる」「屈伸運動」という動きがあるにもかかわらず、「筋肉が長さを変えずに」としている点が誤りです。
(4) 強い力を必要とする運動を続けていると、筋肉を構成する個々の筋線維の太さは変わらないが、その数が増えることによって筋肉が太くなり筋力が増強する。
不適切です。筋力トレーニングなどで筋肉が太くなる主な理由は、筋線維の数が増えることではなく、個々の筋線維が太くなることです。これを筋肥大といいます。筋線維の中では、収縮に関わるたんぱく質などが増え、一本一本の筋線維が太くなることで、筋肉全体が大きくなり、発揮できる筋力も増します。設問のように「筋線維の太さは変わらないが、その数が増える」とする説明は誤りです。筋肥大は「数が増える」ではなく「太さが増す」と覚えると、同じテーマの問題に対応しやすくなります。
(5) 刺激に対して意識とは無関係に起こる定型的な反応を反射といい、四肢の皮膚に熱いものが触れたときなどに、その肢を体幹に近づけるような反射は屈曲反射と呼ばれる。
適切です。反射とは、刺激に対して意識とは無関係に起こる一定の反応です。熱いものに触れたときに、考える前に手や足を引っ込める反応は、身体を危険から守るための重要な仕組みです。このように、痛みや熱などの刺激を受けた肢を曲げて体幹に近づける反射を屈曲反射といいます。反射は、脳で判断してから動く通常の随意運動とは異なり、脊髄などを介してすばやく起こります。そのため、やけどやけがを避ける防御反応として働きます。労働生理では、反射は「意識とは無関係」「定型的」「刺激に対するすばやい反応」という点を押さえることが大切です。
この問題で覚えるポイント
筋肉は、骨格筋、心筋、平滑筋に分類して整理します。骨格筋は横紋筋であり、骨に付着して身体を動かす随意筋です。心筋は横紋筋ですが、自分の意志では動かせない不随意筋です。平滑筋は胃腸や血管などの内臓に存在し、不随意筋です。筋肉は神経からの刺激によって収縮しますが、疲労は神経より筋肉に起こりやすいと覚えます。等尺性収縮は、筋肉の長さを変えずに力を出す収縮で、荷物を同じ姿勢で持ち続けるような場面が代表例です。荷物を持ち上げる、屈伸するなど、筋肉の長さが変わる運動は等尺性収縮ではありません。筋肥大は、筋線維の数が増えることではなく、個々の筋線維が太くなることで起こります。反射は、意識とは無関係に起こる定型的な反応で、熱いものに触れた肢を引っ込める反応は屈曲反射です。
ひっかけポイント
このテーマでは、筋肉の分類をあいまいに覚えていると誤答しやすくなります。特に、心筋は自分の意志で動かせないため平滑筋の仲間のように見えますが、構造上は横紋筋です。ここが典型的なひっかけです。また、等尺性収縮は「力を出す」という点だけを見ると、荷物を持ち上げる動作にも当てはまりそうに感じます。しかし、判断の基準は筋肉の長さが変わるかどうかです。動作を伴う場合は、等尺性収縮とは限りません。筋肥大についても、日常感覚では「筋肉が増える」と表現しがちですが、試験では筋線維の数ではなく太さが増すと判断します。前半だけ正しく、後半で分類や仕組みをすり替える選択肢が多いため、用語の定義を最後まで確認することが大切です。
