出典:第二種衛生管理者2024年(令和6年度)10月公表問題|労働衛生第12問
問題
温熱条件に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 温度感覚を左右する環境要素は、気温、湿度及び気流であり、この三要素によって温熱環境が定まる。
(2) 実効温度は、人の温熱感に基礎を置いた指標で、気温、湿度及び気流の総合効果を温度目盛りで表したものである。
(3) 相対湿度は、空気中の水蒸気量と、その温度における飽和水蒸気量との比を百分率で示したものである。
(4) WBGTは、暑熱環境による熱ストレスの評価に用いられる指標で、日射がない場合は、自然湿球温度と黒球温度の測定値から算出される。
(5) WBGT基準値は、暑熱順化者に用いる値の方が、暑熱非順化者に用いる値より大きな値となる。
第二種衛生管理者|温熱環境の評価指標とWBGT・実効温度の基礎知識を解説
温熱環境では、気温、湿度、気流だけでなく、放射熱も重要な環境要素になります。答えは(1)です。温熱条件の基本要素を三要素だけと判断すると誤りで、人体が感じる暑さや寒さには、周囲の壁、床、機械、日射などから受ける放射熱も影響します。実効温度は気温、湿度、気流を総合した温熱感の指標であり、WBGTは暑熱環境による熱ストレスを評価する指標です。

(1) 温度感覚を左右する環境要素は、気温、湿度及び気流であり、この三要素によって温熱環境が定まる。
不適切です。その理由は、温熱環境を左右する要素には、気温、湿度、気流に加えて、放射熱が含まれるためです。放射熱とは、太陽光、熱い壁面、炉、機械、床面などから人体に伝わる熱のことです。たとえば同じ気温でも、直射日光を浴びている場所や熱をもった壁の近くでは、体感温度は高くなります。温熱環境は三要素だけで決まるのではなく、放射熱も含めて判断する必要があります。
(2) 実効温度は、人の温熱感に基礎を置いた指標で、気温、湿度及び気流の総合効果を温度目盛りで表したものである。
適切です。実効温度は、人が暑い、寒い、快適であると感じる温熱感をもとに、気温、湿度、気流の影響をまとめて温度として表した指標です。気温が同じでも、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり暑く感じますし、気流があると汗の蒸発や熱の放散が進み涼しく感じます。このような複数の要素を総合して評価するのが実効温度です。
(3) 相対湿度は、空気中の水蒸気量と、その温度における飽和水蒸気量との比を百分率で示したものである。
適切です。相対湿度は、その温度の空気が最大限含むことのできる水蒸気量に対して、実際にどれくらい水蒸気を含んでいるかを百分率で示したものです。たとえば相対湿度が高いと、汗が蒸発しにくくなり、体から熱を逃がしにくくなります。そのため、湿度は暑さの感じ方や熱中症リスクに大きく関係します。
(4) WBGTは、暑熱環境による熱ストレスの評価に用いられる指標で、日射がない場合は、自然湿球温度と黒球温度の測定値から算出される。
適切です。WBGTは、暑熱環境で人体が受ける熱ストレスを評価するための指標です。日射がない屋内や屋外の日陰では、自然湿球温度と黒球温度を用いて算出します。自然湿球温度は湿度や汗の蒸発しやすさを反映し、黒球温度は放射熱の影響を反映します。単なる気温だけでは熱中症リスクを正確に判断できないため、WBGTが用いられます。
(5) WBGT基準値は、暑熱順化者に用いる値の方が、暑熱非順化者に用いる値より大きな値となる。
適切です。暑熱順化者とは、暑い環境に体がある程度慣れている人のことです。暑熱順化が進むと、発汗や体温調節が比較的うまく働くようになるため、暑熱非順化者よりも高いWBGT基準値が用いられます。ただし、暑熱順化している人でも熱中症の危険がなくなるわけではありません。作業強度、水分補給、休憩、体調管理をあわせて考えることが重要です。
この問題で覚えるポイント
温熱環境を判断するときは、気温、湿度、気流、放射熱の4つを押さえることが重要です。気温は空気の温度、湿度は汗の蒸発しやすさ、気流は体表からの熱放散、放射熱は日射や熱い物体から人体へ伝わる熱に関係します。実効温度は、気温、湿度、気流を総合して人の温熱感を温度目盛りで表した指標です。WBGTは、暑熱環境による熱ストレスを評価する指標で、熱中症予防の判断に用いられます。日射がない場合のWBGTは、自然湿球温度と黒球温度を用いて算出します。暑熱順化者は暑さに慣れているため、暑熱非順化者よりも高いWBGT基準値が用いられます。相対湿度は、現在の水蒸気量を、その温度での飽和水蒸気量に対する割合で示したものです。
ひっかけポイント
この問題の大きなひっかけは、温熱環境を気温、湿度、気流の三要素だけで判断してしまう点です。実効温度の説明では気温、湿度、気流の三要素が出てくるため、その印象に引っ張られて、温熱環境そのものも三要素だけで決まると考えやすくなります。しかし、作業環境の暑さ寒さには放射熱も関係します。特に日射、熱い壁面、機械、炉などがある場所では、気温が同じでも体への熱負荷は大きくなります。実効温度と温熱環境の構成要素を混同しないことが、正誤判断のポイントです。
