出典:第一種衛生管理者2022年(令和4年度)4月公表問題|労働生理第40問
問題
蛋白質(たんぱくしつ)並びにその分解、吸収及び代謝に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 蛋白質は、約20種類のアミノ酸が結合してできており、内臓、筋肉、皮膚など人体の臓器等を構成する主成分である。
(2) 蛋白質は、膵臓(すいぞう)から分泌される消化酵素である膵リパーゼなどによりアミノ酸に分解され、小腸から吸収される。
(3) 血液循環に入ったアミノ酸は、体内の各組織において蛋白質に再合成される。
(4) 肝臓では、アミノ酸から血漿蛋白質が合成される。
(5) 飢餓時には、肝臓などでアミノ酸などからブドウ糖を生成する糖新生が行われる。
衛生管理者過去問|蛋白質の消化吸収・アミノ酸代謝・糖新生の仕組みを解説
蛋白質は、消化によってアミノ酸に分解され、小腸から吸収された後、体内で再び蛋白質の材料として利用されます。答えは(2)です。膵リパーゼは脂肪を分解する酵素であり、蛋白質を分解する主な酵素ではありません。蛋白質の消化には、胃のペプシンや膵液中のトリプシンなどの蛋白質分解酵素が関与します。
(1) 蛋白質は、約20種類のアミノ酸が結合してできており、内臓、筋肉、皮膚など人体の臓器等を構成する主成分である。
適切です。蛋白質は、多数のアミノ酸がペプチド結合によってつながった高分子化合物です。人体では、筋肉、皮膚、臓器、血液、酵素、ホルモン、抗体など、さまざまな組織や機能性物質の材料になります。単にエネルギー源になるだけでなく、体そのものを作る重要な栄養素である点を押さえると理解しやすいです。
(2) 蛋白質は、膵臓(すいぞう)から分泌される消化酵素である膵リパーゼなどによりアミノ酸に分解され、小腸から吸収される。
不適切です。膵リパーゼは、脂肪を脂肪酸やモノグリセリドなどに分解する消化酵素です。蛋白質を分解する酵素ではありません。蛋白質は、胃液中のペプシンや、膵液中のトリプシン、キモトリプシン、ペプチダーゼなどの働きにより、ペプチドやアミノ酸に分解されます。その後、小腸から吸収され、血液によって体内へ運ばれます。この選択肢は「小腸から吸収される」という部分は正しいため、酵素名の誤りに気づけるかが重要です。
(3) 血液循環に入ったアミノ酸は、体内の各組織において蛋白質に再合成される。
適切です。小腸で吸収されたアミノ酸は、血液によって肝臓や全身の組織へ運ばれます。各組織では、必要に応じてアミノ酸を材料にして、筋肉、酵素、ホルモン、細胞成分などの蛋白質が合成されます。食べた蛋白質がそのまま筋肉や臓器になるのではなく、いったんアミノ酸まで分解され、体内で必要な蛋白質に作り直されるという流れが大切です。
(4) 肝臓では、アミノ酸から血漿蛋白質が合成される。
適切です。肝臓は、体内の代謝の中心となる臓器であり、アミノ酸を材料にしてアルブミンなどの血漿蛋白質を合成します。血漿蛋白質は、血液中で物質を運搬したり、血液の浸透圧を保ったりする重要な働きを持っています。肝臓は、糖質や脂質の代謝だけでなく、蛋白質代謝にも深く関わる臓器として整理しておくとよいです。
(5) 飢餓時には、肝臓などでアミノ酸などからブドウ糖を生成する糖新生が行われる。
適切です。飢餓時や長時間食事を取らない状態では、血糖を維持するために、肝臓などで糖新生が行われます。糖新生とは、アミノ酸、乳酸、グリセロールなど、糖質以外の物質からブドウ糖を作る仕組みです。脳や赤血球など、ブドウ糖を重要なエネルギー源とする組織を守るために必要な働きです。アミノ酸は蛋白質合成の材料である一方、必要に応じてエネルギー代謝にも利用される点を押さえておきましょう。
この問題で覚えるポイント
蛋白質は約20種類のアミノ酸から構成され、人体の筋肉、皮膚、臓器、酵素、ホルモン、抗体などの材料になります。蛋白質の消化では、胃のペプシンや膵液中のトリプシンなどの蛋白質分解酵素が重要であり、膵リパーゼは脂肪を分解する酵素です。小腸で吸収されたアミノ酸は血液に入り、各組織で必要な蛋白質に再合成されます。肝臓ではアミノ酸からアルブミンなどの血漿蛋白質が合成され、飢餓時にはアミノ酸などを材料としてブドウ糖を作る糖新生も行われます。正誤判断では、蛋白質、脂肪、糖質の消化酵素を混同しないことが重要です。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、文章全体の流れがもっともらしく見える中に、酵素名だけがすり替えられている点です。蛋白質がアミノ酸に分解され、小腸から吸収されるという流れは正しいため、そこだけを見ると正しい文章に見えてしまいます。しかし、膵リパーゼは脂肪の消化酵素であり、蛋白質の消化酵素ではありません。衛生管理者試験では、このように「結論や流れは正しいが、途中の用語が違う」という形式がよく出ます。消化酵素では、リパーゼは脂肪、アミラーゼはでんぷん、ペプシンやトリプシンは蛋白質という対応関係を確実に覚えておくことが、同じパターンの問題への対策になります。
