出典:第一種衛生管理者2022年(令和4年度)4月公表問題|労働衛生(有害業務に係るもの)第12問
問題
厚生労働省の「作業環境測定基準」及び「作業環境評価基準」に基づく作業環境測定及びその結果の評価に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1) A測定における測定点の高さの範囲は、床上100cm以上150cm以下である。
(2) 許容濃度は、有害物質に関する作業環境の状態を単位作業場所の作業環境測定結果から評価するための指標として設定されたものである。
(3) A測定の第二評価値とは、単位作業場所における気中有害物質の算術平均濃度の推定値である。
(4) A測定の第二評価値及びB測定の測定値がいずれも管理濃度に満たない単位作業場所は、第一管理区分になる。
(5) A測定においては、得られた測定値の算術平均値及び算術標準偏差を、また、B測定においてはその測定値そのものを評価に用いる。
第1種衛生管理者|作業環境測定基準・A測定・B測定・管理区分を解説
作業環境測定では、作業場全体の有害物質の分布を把握するA測定と、労働者が高濃度ばく露を受けやすい場所を確認するB測定を区別して理解することが大切です。答えは(3)です。A測定の第二評価値は、単位作業場所における気中有害物質の算術平均濃度の推定値を意味するため、正しい記述です。第一評価値と第二評価値、管理濃度と許容濃度、第一管理区分の判定条件を混同しやすいので、用語の役割を整理して覚えることが得点につながります。
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(1) A測定における測定点の高さの範囲は、床上100cm以上150cm以下である。
不適切です。A測定における測定点の高さは、床上50cm以上150cm以下の範囲とされています。A測定は、単位作業場所内の有害物質の平均的な分布状態を把握するための測定です。人が呼吸する範囲を想定して測定点を設定しますが、下限は100cmではなく50cmです。数値が少しだけ変えられているため、覚え違いを狙った選択肢です。
(2) 許容濃度は、有害物質に関する作業環境の状態を単位作業場所の作業環境測定結果から評価するための指標として設定されたものである。
不適切です。作業環境測定結果を評価するための指標は、許容濃度ではなく管理濃度です。管理濃度は、単位作業場所の作業環境測定結果を評価し、第一管理区分、第二管理区分、第三管理区分に区分するために用いられます。許容濃度は、日本産業衛生学会などが示すばく露の目安であり、労働者が一定条件下で有害物質にばく露されても健康障害を起こしにくいと考えられる濃度の目安です。名称が似ていますが、試験では「作業環境評価に使うのは管理濃度」と押さえる必要があります。
(3) A測定の第二評価値とは、単位作業場所における気中有害物質の算術平均濃度の推定値である。
適切です。A測定の第二評価値は、単位作業場所における気中有害物質の算術平均濃度の推定値です。A測定では、複数の測定点で得られた測定値をもとに、作業場全体の有害物質の分布を統計的に評価します。第一評価値は高濃度側の状態を評価するための値であり、第二評価値は平均的な濃度を評価するための値です。この違いを押さえると、作業環境評価基準の問題で迷いにくくなります。
(4) A測定の第二評価値及びB測定の測定値がいずれも管理濃度に満たない単位作業場所は、第一管理区分になる。
不適切です。第一管理区分と判定されるためには、A測定の第一評価値及びB測定の測定値が管理濃度以下であることが必要です。この選択肢では、A測定について第二評価値だけを見ている点が誤りです。第二評価値が管理濃度未満であっても、第一評価値が管理濃度を超えていれば、高濃度部分が存在する可能性があります。作業環境管理では、平均だけでなく高濃度ばく露のおそれも重視するため、第一管理区分の判定では第一評価値が重要になります。
(5) A測定においては、得られた測定値の算術平均値及び算術標準偏差を、また、B測定においてはその測定値そのものを評価に用いる。
不適切です。A測定では、得られた測定値の幾何平均値及び幾何標準偏差を用いて評価します。算術平均値及び算術標準偏差ではありません。有害物質の気中濃度は、ばらつきが大きく、対数正規分布に近い分布を示すことが多いため、幾何平均値と幾何標準偏差を用いる考え方が採られています。B測定では、作業者が高濃度ばく露を受けやすい位置や時間を狙って測定し、その測定値そのものを評価に用いますが、A測定の統計処理に関する部分が誤りです。
この問題で覚えるポイント
作業環境測定では、A測定は単位作業場所の平均的な有害物質濃度の分布を把握する測定であり、B測定は発散源の近くや作業者の呼吸域など、高濃度ばく露のおそれがある場所を把握する測定です。A測定の測定点の高さは床上50cm以上150cm以下です。A測定では幾何平均値と幾何標準偏差を用いて第一評価値と第二評価値を求めます。第一評価値は高濃度側の状態を評価する値、第二評価値は算術平均濃度の推定値です。作業環境評価に用いる指標は管理濃度であり、許容濃度ではありません。管理区分は第一管理区分、第二管理区分、第三管理区分に分かれ、第一管理区分は作業環境管理が適切である状態、第三管理区分は改善が必要な状態です。第一管理区分の判定では、A測定の第一評価値とB測定の測定値が管理濃度以下であることが重要です。平均濃度だけが低くても、高濃度ばく露のおそれがあれば良好な作業環境とは判断できません。
ひっかけポイント
このテーマでは、管理濃度と許容濃度の混同がよく狙われます。作業環境測定結果の評価に使うのは管理濃度であり、許容濃度は労働者のばく露限界の目安として理解するものです。また、A測定の第一評価値と第二評価値の役割を入れ替える問題にも注意が必要です。第二評価値は平均的な濃度の推定値ですが、第一管理区分の判定では高濃度側を評価する第一評価値が関係します。さらに、A測定の測定点の高さは床上50cm以上150cm以下であり、100cm以上ではありません。数値の下限だけを変える選択肢は、記憶があいまいな受験者を狙った典型的なひっかけです。A測定で使う統計量も算術平均値ではなく幾何平均値である点が重要です。日常感覚では平均といえば算術平均を思い浮かべやすいですが、有害物質濃度の評価では分布の偏りを考慮して幾何平均値を用いるため、この違いを正誤判断の軸にしてください。
