問題
ベンゼンの有毒性に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1) ベンゼンは毒性が低く、長期間吸入しても健康への影響はほとんどない。
(2) ベンゼンは主に皮膚だけに刺激を与える物質であり、血液には影響を及ぼさない。
(3) ベンゼンは有毒であり、長期間または繰り返し吸入すると造血機能に障害を与えるおそれがある。
(4) ベンゼンは蒸気を吸入しても人体への影響はなく、危険なのは飲み込んだ場合だけである。
(5) ベンゼンは有毒性をもたないため、危険なのは引火性だけである。
危険物取扱者乙種4類|ベンゼンの有毒性を解説
ベンゼンは、第4類危険物の第1石油類に分類される非水溶性の液体です。引火性が高いだけでなく、蒸気を吸入した場合などに人体へ有害な影響を及ぼします。特に、長期間または繰り返しばく露されると、骨髄の造血機能が障害され、血液を正常につくれなくなるおそれがあります。このため、正しい答えは(3)です。試験では、ベンゼンを単なる引火性液体として覚えるのではなく、蒸気の吸入による中毒や造血機能への影響をもつ有毒な危険物として理解することが重要です。

(1) ベンゼンは毒性が低く、長期間吸入しても健康への影響はほとんどない。
不適切です。ベンゼンは毒性の低い物質ではありません。ベンゼンの蒸気を長期間または繰り返し吸入すると、骨髄の機能が低下し、血液をつくる働きに障害が生じるおそれがあります。血液中の赤血球、白血球、血小板などが減少すると、貧血、感染症への抵抗力の低下、出血しやすくなるといった健康障害につながります。また、高濃度の蒸気を短時間に吸入した場合には、頭痛、めまい、吐き気、意識障害などが生じる可能性もあります。長期間吸入しても影響がほとんどないという説明は、ベンゼンの代表的な有害性と反対です。
(2) ベンゼンは主に皮膚だけに刺激を与える物質であり、血液には影響を及ぼさない。
不適切です。ベンゼンは皮膚に接触すると、皮膚の脂分を奪って炎症や刺激を起こすことがありますが、有害性は皮膚への影響だけではありません。特に重要なのは、蒸気を吸入することなどによって体内に取り込まれたベンゼンが、骨髄の造血機能に悪影響を及ぼす点です。造血機能とは、赤血球、白血球、血小板などの血液細胞をつくる働きです。この機能が障害されると、貧血や免疫機能の低下などにつながります。ベンゼンの有毒性に関する問題では、皮膚刺激よりも造血機能障害が代表的な知識として問われます。
(3) ベンゼンは有毒であり、長期間または繰り返し吸入すると造血機能に障害を与えるおそれがある。
適切です。ベンゼンには有毒性があり、特に蒸気を長期間または繰り返し吸入すると、骨髄の造血機能に障害を与えるおそれがあります。骨髄は、赤血球、白血球、血小板などをつくる重要な組織です。造血機能が低下すると、酸素を運ぶ赤血球の減少による貧血、感染症から体を守る白血球の減少、出血を止める血小板の減少などが起こる可能性があります。ベンゼンは揮発しやすいため、液体に直接触れていなくても、発生した蒸気を吸い込むことで体内に取り込まれます。取り扱う際には、蒸気を滞留させない換気、密閉設備の使用、適切な保護具の着用などが必要です。
(4) ベンゼンは蒸気を吸入しても人体への影響はなく、危険なのは飲み込んだ場合だけである。
不適切です。ベンゼンは揮発性が高く、常温でも蒸気を発生させます。そのため、実際の取り扱いでは、飲み込みだけでなく蒸気の吸入が重要なばく露経路になります。高濃度の蒸気を吸入すると、中枢神経に影響し、頭痛、めまい、眠気、吐き気、意識の低下などを起こすおそれがあります。長期間または繰り返し吸入した場合には、造血機能の障害が問題となります。また、皮膚から体内へ取り込まれる可能性や、皮膚の炎症を起こす可能性もあります。危険なのは飲み込んだ場合だけであるという限定的な説明は誤りです。
(5) ベンゼンは有毒性をもたないため、危険なのは引火性だけである。
不適切です。ベンゼンは引火性と有毒性の両方に注意が必要な危険物です。第4類危険物としては、引火点が低く、蒸気に火源が近づくと引火する危険があります。しかし、危険性は火災だけではありません。蒸気の吸入による急性中毒や、長期間または繰り返しばく露されることによる造血機能障害など、人体への有害性もあります。危険物取扱者試験では、物質の火災危険性だけでなく、毒性、蒸気の性質、適切な取り扱い方法を組み合わせて判断する必要があります。
この問題で覚えるポイント
ベンゼンは、第4類危険物の第1石油類に属する非水溶性液体で、引火点が低く、揮発しやすい性質があります。蒸気は空気より重いため、床面や低い場所に滞留しやすく、離れた場所の火源によって引火する危険があります。有毒性については、短時間に高濃度の蒸気を吸入すると、頭痛、めまい、吐き気、眠気、意識障害などを起こすおそれがあります。長期間または繰り返しばく露されると、骨髄の造血機能が障害され、赤血球、白血球、血小板などが減少する可能性があります。試験では、ベンゼンの代表的な有害性として、造血機能障害を確実に覚えておくことが重要です。取り扱い時には、十分な換気を行い、蒸気を吸入しないようにするとともに、皮膚への接触を防ぐために適切な保護具を使用します。火災危険性と健康有害性は別の性質であり、引火性がある物質でも有毒性がないとは限りません。
ひっかけポイント
ベンゼンの問題では、第4類危険物であることから、引火性だけに注目させて有毒性を見落とさせる表現がよく使われます。また、皮膚刺激があるという一部の正しい情報を示したうえで、血液には影響しないと断定する文章にも注意が必要です。一部が正しくても、後半に誤った限定や否定が含まれていれば、文章全体としては誤りです。「飲み込んだ場合だけ危険」「吸入しても影響しない」「長期間吸入しても問題ない」など、ばく露経路や影響を一つに限定する表現も典型的な誤答のパターンです。ベンゼンについては、揮発した蒸気の吸入が重要な危険経路であり、長期的には造血機能を障害するという組み合わせを覚えておけば、表現を変えた問題にも対応できます。
