出典:第二種衛生管理者2024年(令和6年度)4月公表問題|労働生理第21問
問題
呼吸に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1) 呼吸は、胸膜が運動することで胸腔(くう)内の圧力を変化させ、肺を受動的に伸縮させることにより行われる。
(2) 肺胞内の空気と肺胞を取り巻く毛細血管中の血液との間で行われるガス交換は、内呼吸である。
(3) 通常の呼吸の場合の呼気には、酸素が約16%、二酸化炭素が約4%含まれる。
(4) チェーンストークス呼吸とは、肺機能の低下により呼吸数が増加した状態をいい、喫煙が原因となることが多い。
(5) 身体活動時には、血液中の窒素分圧の上昇により呼吸中枢が刺激され、1回換気量及び呼吸数が増加する。
第二種衛生管理者|呼吸の仕組みと呼気成分|外呼吸・換気量・呼吸中枢の基礎知識を解説
呼吸では、肺そのものが自力で動くのではなく、横隔膜や肋間筋の働きによって胸腔内圧が変化し、肺が受動的に膨らんだり縮んだりします。正しい記述は、通常の呼気には酸素が約16%、二酸化炭素が約4%含まれるとする(3)です。吸気中の酸素は約21%、二酸化炭素は約0.03〜0.04%ですが、体内で酸素が消費され二酸化炭素が産生されるため、呼気では酸素が減り、二酸化炭素が増えます。

(1) 呼吸は、胸膜が運動することで胸腔(くう)内の圧力を変化させ、肺を受動的に伸縮させることにより行われる。
不適切です。その理由は、胸腔内の圧力を変化させる主な働きは胸膜ではなく、横隔膜や肋間筋などの呼吸筋によるものだからです。吸息時には横隔膜が収縮して下がり、外肋間筋の働きで胸郭が広がることで胸腔内圧が低下し、肺に空気が入ります。肺は自ら能動的に広がるのではなく、胸郭の動きに伴って受動的に膨らみます。胸膜は肺と胸壁の間にある膜で、肺が胸郭の動きに追従しやすくする役割を持ちますが、胸膜そのものが運動して呼吸を起こすわけではありません。
(2) 肺胞内の空気と肺胞を取り巻く毛細血管中の血液との間で行われるガス交換は、内呼吸である。
不適切です。その理由は、肺胞と毛細血管の間で行われるガス交換は外呼吸だからです。外呼吸とは、肺で行われる空気と血液との間の酸素・二酸化炭素の交換をいいます。これに対して内呼吸とは、血液と全身の組織細胞との間で行われるガス交換です。試験では、外呼吸は肺、内呼吸は組織と整理しておくと判断しやすくなります。
(3) 通常の呼吸の場合の呼気には、酸素が約16%、二酸化炭素が約4%含まれる。
適切です。その理由は、吸い込んだ空気中の酸素の一部が体内で消費され、代謝によって生じた二酸化炭素が呼気中に排出されるためです。吸気中の酸素は約21%ですが、呼気では約16%に減少します。また、吸気中の二酸化炭素はごくわずかですが、呼気では約4%に増加します。酸素は全部使い切られるわけではなく、呼気にもかなり残っている点が重要です。人工呼吸で呼気を利用できるのも、呼気中に酸素が残っているためです。
(4) チェーンストークス呼吸とは、肺機能の低下により呼吸数が増加した状態をいい、喫煙が原因となることが多い。
不適切です。その理由は、チェーンストークス呼吸は、呼吸が徐々に深くなった後に浅くなり、無呼吸の時間を挟んで再び呼吸が始まる周期的な異常呼吸をいうからです。単に呼吸数が増加した状態ではありません。脳血管障害、心不全、脳の呼吸中枢の障害などでみられることがあります。喫煙による肺機能低下と結びつけて考えると誤りやすいですが、チェーンストークス呼吸は呼吸数増加そのものではなく、呼吸の深さと停止が周期的に変化する異常呼吸です。
(5) 身体活動時には、血液中の窒素分圧の上昇により呼吸中枢が刺激され、1回換気量及び呼吸数が増加する。
不適切です。その理由は、身体活動時に呼吸中枢を刺激する主な要因は、血液中の二酸化炭素分圧の上昇や水素イオン濃度の変化などであり、窒素分圧の上昇ではないからです。運動をすると筋肉で酸素が多く消費され、二酸化炭素が多く産生されます。その結果、呼吸中枢が刺激され、1回換気量と呼吸数が増加します。窒素は通常の呼吸では体内でほとんど利用されず、呼吸調節の主役ではありません。
この問題で覚えるポイント
呼吸運動は、横隔膜や肋間筋などの呼吸筋によって胸腔内圧が変化し、肺が受動的に伸縮することで行われます。胸膜は肺の表面と胸壁側にある膜で、肺の動きを助ける構造ですが、呼吸運動の主役ではありません。肺胞と毛細血管の間のガス交換は外呼吸、血液と組織細胞の間のガス交換は内呼吸です。吸気中の酸素は約21%、二酸化炭素は約0.03〜0.04%であり、通常の呼気中の酸素は約16%、二酸化炭素は約4%です。呼気にも酸素が残っている点は頻出です。運動時には二酸化炭素分圧の上昇などにより呼吸中枢が刺激され、1回換気量と呼吸数が増加します。チェーンストークス呼吸は、呼吸の深さが周期的に変化し、無呼吸を伴う異常呼吸であり、単なる呼吸数増加ではありません。
ひっかけポイント
この問題では、呼吸に関する用語を日常的なイメージで判断すると誤りやすくなります。胸膜は肺の近くにあるため、呼吸運動そのものを起こすように見えますが、実際に胸腔内圧を変えるのは横隔膜や肋間筋です。また、肺で行うガス交換を体内で行うから内呼吸と考えてしまうと誤答になります。肺でのガス交換は外呼吸、組織でのガス交換は内呼吸と対応させることが大切です。呼気成分では、酸素がすべて使われるわけではない点が狙われます。呼気中にも酸素が約16%残り、二酸化炭素は約4%まで増えます。さらに、運動時の呼吸調節では窒素ではなく二酸化炭素が重要です。窒素は空気中に多く含まれるため選びたくなりますが、呼吸中枢を刺激する主役ではありません。
