出典:第一種衛生管理者2023年(令和5年度)4月公表問題|関係法令(有害業務に係るもの)第3問
問題
次の業務に労働者を就かせるとき、法令に基づく安全又は衛生のための特別の教育を行わなければならないものに該当しないものはどれか。
(1) 石綿等が使用されている建築物の解体等の作業に係る業務
(2) 高圧室内作業に係る業務
(3) 有機溶剤等を用いて行う接着の業務
(4) 廃棄物の焼却施設において焼却灰を取り扱う業務
(5) エックス線装置を用いて行う透過写真の撮影の業務
第1種衛生管理者|特別教育が必要な業務一覧と労働安全衛生法を解説
安全衛生のための特別教育は、危険性又は有害性が高い一定の業務に労働者を就かせる前に、事業者が実施しなければならない教育です。石綿作業、高圧室内作業、焼却灰の取扱い、エックス線装置による透過写真撮影は特別教育の対象です。答えは、有機溶剤等を用いて行う接着の業務です。有機溶剤業務には中毒予防のための作業環境管理や保護具の使用などが求められますが、この選択肢の業務そのものは、特別教育を行わなければならない業務としては定められていません。
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(1) 石綿等が使用されている建築物の解体等の作業に係る業務
適切です。石綿等が使用されている建築物、工作物又は船舶の解体等の作業に係る業務は、特別教育の対象です。石綿は吸い込むと肺がん、中皮腫、石綿肺などの重い健康障害を起こすおそれがあります。特に解体作業では、石綿を含む建材を破砕したり取り外したりする過程で、目に見えない細かい繊維が空気中に飛散する危険があります。そのため、作業方法、発じん防止、呼吸用保護具の使用、隔離や湿潤化などについて、作業前に教育を行う必要があります。
(2) 高圧室内作業に係る業務
適切です。高圧室内作業に係る業務は、特別教育の対象です。高圧室内作業とは、通常より高い気圧の環境で行う作業で、潜函工事や圧気工法などで問題になります。高圧環境では、体内に溶け込む気体の量が変化し、減圧の方法を誤ると減圧症などの健康障害を起こすおそれがあります。また、作業環境そのものが特殊であり、入退室の管理、圧力の変化への対応、異常時の措置を理解していないと重大な災害につながります。そのため、特別教育が必要です。
(3) 有機溶剤等を用いて行う接着の業務
不適切です。有機溶剤等を用いて行う接着の業務は、有機溶剤中毒の危険がある業務ではありますが、法令上の特別教育を行わなければならない業務には該当しません。有機溶剤は蒸気を吸入すると、頭痛、めまい、吐き気、意識障害、肝機能障害、神経障害などを起こすことがあります。そのため、有機溶剤中毒予防規則に基づき、換気、作業環境測定、特殊健康診断、有機溶剤作業主任者の選任などが問題になります。ただし、「有害だから必ず特別教育」というわけではありません。この選択肢は、有機溶剤業務に関する規制と、特別教育の対象業務を混同させるためのものです。
(4) 廃棄物の焼却施設において焼却灰を取り扱う業務
適切です。廃棄物の焼却施設において焼却灰を取り扱う業務は、特別教育の対象です。廃棄物焼却施設では、焼却灰やばいじんにダイオキシン類などの有害物質が含まれるおそれがあります。焼却灰を取り扱う作業では、粉じんとして吸入したり、皮膚や作業衣を通じてばく露したりする危険があります。そのため、作業の方法、保護具の使用、汚染防止、作業後の洗身や作業衣の取扱いなどについて、事前に教育を行う必要があります。
(5) エックス線装置を用いて行う透過写真の撮影の業務
適切です。エックス線装置を用いて行う透過写真の撮影の業務は、特別教育の対象です。透過写真撮影は、金属材料や溶接部などの内部欠陥を調べるためにエックス線を使用する作業です。エックス線は電離放射線であり、適切に管理しないと被ばくによる健康障害を生じるおそれがあります。作業者は、管理区域、遮へい、距離、照射時間、線量管理、立入禁止措置などを理解して作業する必要があります。そのため、特別教育が必要です。
この問題で覚えるポイント
特別教育は、労働安全衛生法に基づき、危険又は有害な一定の業務に労働者を就かせるときに事業者が行う教育です。試験では、「有害業務であること」と「特別教育の対象であること」を区別して判断することが重要です。石綿等が使用されている建築物等の解体等の作業、高圧室内作業、廃棄物焼却施設での焼却灰等の取扱い、エックス線装置による透過写真撮影は、特別教育の対象として押さえておきます。有機溶剤業務は健康障害のリスクが高く、換気、作業環境測定、特殊健康診断、有機溶剤作業主任者の選任などが重要ですが、選択肢の「有機溶剤等を用いて行う接着の業務」は特別教育の対象業務としては扱いません。特別教育の問題では、作業主任者の選任義務、特殊健康診断、作業環境測定、保護具の使用義務などの制度と混同しないことが正誤判断に直結します。
ひっかけポイント
この問題の最大のひっかけは、「危険又は有害な作業なら、すべて特別教育が必要」と考えてしまう点です。有機溶剤を用いる接着作業は、日常感覚でも健康に悪そうであり、実際に中毒予防のための規制もあります。そのため、特別教育の対象だと判断しやすい選択肢です。しかし、衛生管理者試験では、危険性の有無ではなく、法令上その業務が特別教育の対象として定められているかを問われます。また、石綿、高圧室内作業、ダイオキシン類のおそれがある焼却灰、エックス線のように、重大な健康障害につながる業務が並んでいるため、有機溶剤も同じグループに見えてしまいます。このような問題では、「有害業務」「作業主任者」「特殊健康診断」「特別教育」のどの制度を問われているのかを最初に確認すると、同じようなひっかけに対応しやすくなります。
